土地家屋調査士はオワコンって本当?将来性や年収も紹介

「土地家屋調査士はオワコン?」
「土地家屋調査士は将来性がある仕事?」
「土地家屋調査士の平均年収は?」
土地家屋調査士の資格・仕事について、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
近年では土地家屋調査士が「オワコン(終わりのコンテンツ)」化しているという見方が増えています。
しかし、独占業務を有する国家資格としての土地家屋調査士は、今後も不動産業界に不可欠な職業です。
とはいえ、土地家屋調査士が本当に将来性のある仕事なのか、不安に感じますよね。
本記事では、土地家屋調査士はオワコンなのか、土地家屋調査士の将来性について、そして、土地家屋調査士の平均年収などに関して解説します。

土地家屋調査士の仕事内容

土地家屋調査士は土地の所有者や不動産会社から依頼を受けた土地や不動産の現況に関して実際に調査・測量業務を行います。
また、測量で得られた情報を指定の登記簿に登録する「建物の表示に関する登記」業務も、土地家屋調査士の重要な業務の1つです。
調査・測量業務では、すでに登記所へ登録されている地図や測量図に記載されている情報が現況と合致しているかを確認します。
さらに登記業務では、土地家屋調査士の独占業務として依頼者から登記業務を請け負い、新築の不動産に関する情報や複数の建物にわたる土地の分筆登記に関する手続きを行います。
土地家屋調査士は国土の公共性を保つための高い専門性が伴う資格として、国家資格に定められています。

土地家屋調査士の将来性

前述したように土地家屋調査士の業務は国家資格が伴ううえに資格保有者の独占業務として定められているがゆえに、将来仕事がなくなる確率は非常に低いといえます。
さらに現代では土地の権利に対する人々の意識が高く、少子高齢化の影響で土地の放棄・相続が増加傾向にあるため、不動産の登記を取り扱う土地家屋調査士の仕事の必要性は高まり続けています。
また、現状として50代~60代の人が土地家屋調査士として働く人のほとんどを占めています。
このことから土地家屋調査士の業界は今後世代交代を迎えることが予想されるため、これから土地家屋調査士の資格を取得しようと考えている20代~30代の人にとっては、就職や将来の独立を見据え土地家屋調査士の資格取得に向けて動き出す時期としてちょうどいい時期が今といえます。

こちらの記事では、土地家屋調査士の将来性をより詳しくお伝えしています。知識やスキルを磨くことができれば、土地家屋調査士としての需要も高くなるはずです。ぜひあわせてご覧ください。

土地家屋調査士はオワコンと言われる理由

不動産業界において不可欠な土地家屋調査士ですが、近年土地家屋調査士の仕事は「オワコン」化の一途を辿るのではないかと懸念する声が挙がっています。
土地家屋調査士の仕事がオワコンではないかと心配される理由には、土地家屋調査士の仕事を取り巻く環境の変化や、近年労働市場を揺るがすような進化を遂げているAI導入の動きが影響していると考えられます。
ここからは、土地家屋調査士がオワコンと言われる3つの理由について紹介します。

理由①景気に左右されやすい

土地家屋調査士の仕事はクライアントからの依頼がなければ報酬を得られないため、不景気の煽りを受け依頼が減少すれば自ずと報酬も現象します。
このように、クライアントあっての仕事であるという土地家屋調査士の仕事の性質が、土地家屋調査士で食べていくのが難しいといわれてしまう事態に起因しています。
さらに、近年ではコロナウイルスの蔓延や日本経済の困窮化などの社会的要因によって、不動産業界自体が不景気の状況にあります。
経済的に良好でない社会状況では、新しく戸建てやマンションを建設しようとするクライアントの意識が低迷し、土地家屋調査士への仕事の依頼も減ってしまいます。

理由②デスクワークも肉体労働もこなす必要がある

土地家屋調査士の業務の主軸となるのが土地の調査・測量業務です。
実際にその場所におもむき大きな機材を運び込んで作業を行うため、肉体的な問題から土地家屋調査士の仕事を離れてしまう人も少なくありません。
このとき「土地家屋調査士の仕事には登記業務もあるのだから、デスクワークに限定して仕事を請け負えばよい」と考える人もいるでしょう。
しかし実際には登記のみの仕事を依頼するクライアントはほとんどおらず、土地家屋調査士として働くのであれば屋外での測量業務が仕事時間のほとんどを占めます。
また、実際の測量現場は草木が生い茂り歩いて進むことさえ難しいような起伏の激しい場所が多いため、土地家屋調査士は相応の体力がなければ続けるのが難しい仕事といえるでしょう。

理由③AIにより仕事を奪われると言われている

AIの技術進歩がめざましい現代では、土地家屋調査士の業務がAIに奪われるのではと懸念する声が多く挙がっています。
実際、ドローンを活用して土地の状況を3Dデータとして取り込んだり、土地の標高や外部環境をデータ上で解析することも可能になっています。
AIの活用により土地の測量が自動化されれば、土地家屋調査士は業務のほとんどをAIに奪われることになるでしょう。
また、登記業務に関する事務作業も会計ソフトを活用すれば、人員を割かずとも効率的に進めることが可能です。
このようにAI技術が当たり前に導入されるようになれば、人件費や依頼費用を削減でき、人間が行うよりも短い時間で仕事を行えるようになるため、土地家屋調査士の必要性がなくなってしまう可能性が懸念されているのです。

土地家屋調査士の平均年収

ここまで、土地家屋調査士がオワコンといわれる理由について紹介しました。
それでは、実際に土地家屋調査士の仕事で十分な報酬を得られるのでしょうか。
ここからは、土地家屋調査士の平均年収について、それぞれの働き方に分けて紹介します。

会社に勤務する場合

2023年5月に実施された求人ボックスによる「土地家屋調査士の仕事の年収・時給・給料」に関するデータによると、会社員として土地家屋調査士の仕事を行った場合の平均年収は約384万円です。
また、一般的に正社員雇用で働いた場合の年収は、資格手当が付与された場合には約400万~600万円だといわれています。
ただし、土地家屋調査士の収入は獲得した案件数によって変動するため、個人の営業努力次第で年収は大きく異なります。
正社員として働いた場合には多くの現場経験を積んだ40代~50代の時点で年収が最大額にのぼるとされ、会社の経営状況や景気の状況によっては年収800万円以上を得られるケースもあります。
このとき、勤める会社の立地によっても年収は変動し、不動産業務の動きが活発な都心部では高い年収を得られる傾向がみられます。

補助者として働く場合

土地家屋調査士として働く場合、資格保有者として業務に携わる補助者としての働き方も浸透しています。
補助者として働いた場合の平均年収は、東京エリアにおける求人情報では約20万円前後から、高い場合には約40万円以上で設定されており、年収に換算すると約240万円~480万円から相場といえます。

独立開業する場合

土地家屋調査士として高収入を目指すのであれば、独立開業する道が一般的です。
数年~10数年の現場経験があれば、土地家屋調査士として独立することは難しくありません。
土地家屋調査士として独立開業した場合の平均年収は、高い場合で年収1,000万円以上も可能といわれています。
ただし、独立開業する場合には自らの営業能力や人脈の多さによって報酬が変動するため、積極的な営業活動や日頃からの人脈づくりを怠ればそれに比例するかたちで報酬は減ります。
固定給として毎月決まった額が得られる会社員とは異なり、自らの努力次第で報酬が変動してしまう点において、個人によって報酬額が大きく前後する報酬体系に注意が必要です。

土地家屋調査士のキャリアアップ方法

土地家屋調査士としてキャリアアップするには、次のような手順を踏みます。

  1. 土地家屋調査士の資格試験合格
  2. 土地家屋調査士として登録
  3. 土地家屋調査士を求人している事務所または測量会社に所属
  4. 現場での実践経験を積む
  5. 十分な経験・知識を得られた時点で独立開業
  6. 高単価の仕事を多数受注する

このとき事務所に所属する場合には、個人事務所と法人事務所の2種類があります。
一般的に小規模で営業している個人事務所では、1つの事務所あたりに所属する土地家屋調査士は1人であることが多く、幅広い知識・経験を獲得しながら独立開業に向けたキャリア育成が可能です。
土地家屋調査士に関する業務をすべて1人で行う必要があるため、1人あたりの負担は大きくなりますが、その分総合的な知識や非常事態へのフレキシブルな対応方法が身につきます。
個人事務所の場合には事務所によって給与や待遇が異なるため、自分の状況にあわせて適切な事務所を選び就職する必要があります。
一方、法人事務所では複数人の土地家屋調査士が所属しているため、測量業務・登記業務など場面によって業務を分担しながら働くケースがほとんどです。
業務においてチームで協力しながら働く形態をとるため、効率重視で仕事に取り組みながら、自分の担当業務に関して専門的な知識・経験を得られます。
また、法人事務所は個人事務所と比較して給与面や待遇面が好条件であるケースが多いため、よりよい環境で働き続けたい場合には法人事務所に就職する道を検討しましょう。
さらに、法人事務所では複数人の土地家屋調査士が所属しているため、先輩や同僚から仕事に関するアドバイスを受けたり、新人として就職した場合には適切な研修を受けたりすることも可能です。
また、測量会社に併設された事務所に直接就職し、おもに登記業務に関する経験を積む道もあります。
測量会社は国や地方自治体から仕事を請け負うケースも多いため、より大規模な案件を経験できます。
さらに、測量会社も法人事務所と同じく、個人事務所と比較して好待遇で働ける傾向にあります。

土地家屋調査士と合わせて保有できる資格

ここまで、土地家屋調査士として働くときの平均年収や、所属先によって異なる働き方についてそれぞれ紹介しました。
土地家屋調査士として働くには、まず土地家屋調査士の資格を取得する必要があります。
そして土地家屋調査士の資格を取得する場合に、ダブルライセンスで取得しておくとメリットが得られる資格が存在します。
ここからは、土地家屋調査士とあわせて取得しておきたい4つの資格について紹介します。

行政書士

土地家屋調査士と行政書士の資格試験は「民法」分野において出題範囲が重なるため、同時に取得を目指すことで1度に2つの資格勉強を進められます。
また、土地家屋調査士に含まれる公的機関への申請業務では、公官庁に提出する書類作成を行政書士に依頼する必要があり、もし行政書士の資格も同時に保有していればワンストップですべての業務を取り扱えます。
さらに、将来独立開業した際にも2つの資格をもっていれば案件の幅が広がり、結果的に収入増大も期待できます。

司法書士

土地家屋調査士は不動産の「表記」に関する業務を取り扱う一方で、司法書士は不動産の「権利」に関する業務を行います。
司法書士と土地家屋調査士の資格では出題範囲が異なるため、資格取得にはそれぞれ相応の勉強量で資格に挑む必要がありますが、ダブルライセンスを取得できれば不動産のプロになれるでしょう。
土地家屋調査士の業務ではとくに登記に関する業務において法律に関する知識が必要な場面が多いため、その際司法書士として法的知識があればどのような場面においても柔軟に対応できるようになります。

測量士・測量士補

測量士の資格を保有している場合、土地家屋調査士の資格試験において午前の試験を免除されます。
試験の一部を免除されれば午後の試験の出題範囲に集中して試験勉強に取り組めるため、合格に有利なかたちで勉強に取り組めるでしょう。
この場合、測量士よりも難易度が低い測量士補の資格を取得することでも土地家屋調査士の午前試験が免除されるため、測量士補の資格に合格したあとに土地家屋調査士の資格取得を目指す方法がもっとも効率のいい手段といえます。
また、測量士としてある程度の現場経験を積んだうえで土地家屋調査士として就職すれば、補助者として地道に経験を積む時間・手間を省き、通常と比較して早い段階で独立に踏み切れます。

ADR認定土地家屋調査士

不動産をめぐる民間紛争が発生した場合、代理業務を請け負うのに必要なのがADR認定土地家屋調査士の資格です。
指定の研修を修了し試験に合格したあと法務大臣から認定を得ることで、おもに土地境界に関する民間紛争に関して代理人として問題に携われるようになります。

土地家屋調査士の専門性はオワコンじゃない

近年、土地家屋調査士の仕事がオワコンだとする世間の声がありますが、独占業務を有する土地家屋調査士の資格は他の資格で代替することが不可能な専門的知識を必要とする資格であるため、将来性が十分にある資格です。
また、土地家屋調査士の収入は働き方や経験・知識の度合いによって変動しますが、個人の努力や独立開業し個人事務所を開設する方法で、現状より高収入を目指せます。
さらに、行政書士や司法書士の資格をダブルライセンスとして取得しておくことで仕事の幅が広がったり、独立開業に挑戦できるタイミングを早めたりできます。
土地家屋調査士の仕事はそのときの社会状況や景気の状況に左右されやすいですが、一方で働き方や営業努力など、個人で行える工夫によって自らの給与や待遇を自分の力で改善できるのです。
これから土地家屋調査士として働きたい方は、実際に土地家屋調査士として働く場合のビジョンを明確にもつことを大切に、自分にあった働き方を目指しましょう。

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