土地家屋調査士は、不動産に関連する法的手続きや測量業務を担う国家資格者で、不動産業界において重要な役割を果たしています。しかし、近年では「需要が減少している」「将来性が不透明」といった不安を抱く方も少なくありません。
そこで今回は土地家屋調査士は将来性が高いといわれるわけや、土地家屋調査士の具体的な仕事内容を詳しくご紹介します。
また、土地家屋調査士として働くメリットや適性、キャリアパス、年収の目安についても解説します。将来のキャリアを考える上で土地家屋調査士を視野に入れている方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
土 地家屋調査士について
土地家屋調査士は、国土の公共性を維持するために必要な高度な専門知識を要する資格であり、国家資格として定められています。
土地家屋調査士の業務は、おもに土地の所有者や不動産会社から依頼を受けて行う建物の調査や測量、申請手続きの代理です。具体的には、土地や建物の詳細な調査をおこない、その結果に基づいて情報を提供します。
たとえば、土地の境界線の正確な測定や建物の広さや構造の測量だけでなく、時には土地利用に関する相談やアドバイスをすることもあります。
相続や不動産購入時の法的トラブルにも関わることもあり、不動産取引や建物の建設において重要な役割を果たしているため、将来性の高い職業といえるでしょう。
土 地家屋調査士は将来性があるといわれるわけ
土地家屋調査士の将来性があるといわれるのには、以下の点が主な理由として挙げられます。
- 独占業務であるため
- AIに代替されにくいため
- ますますのニーズ増加が見込まれるため
- 多くの人材が必要とされるため
- 狭き門であるため
ひとつずつ詳しく解説していきます。
独占業務があるため
建物を建てたり、土地の形が変わったりするたびに、その新しい状態を正確に国に届け出る「不動産の表題登記」という手続きが必要になります。
この手続きの中でも「表示に関する登記」と呼ばれる不動産の大きさや形を記録する部分については、法律で土地家屋調査士しか取り扱うことができません。
また、不動産の売買や相続など不動産取引をおこなう際には、法律により登記手続きが必須となっているため、その手続きを求められるケースが多くなります。そのため、土地家屋調査士の業務は常に必要とされており、将来的にも一定の仕事が保障されると考えられます。
AIに代替されにくいため
AIの急速な発展により、土地家屋調査士の業務にも大きな変化が生じています。測量データの処理や書類作成といったルーティンワークはすでにAIによって効率化され、調査士はより高度で専門的な業務に集中できるようになっています。しかし、AIがすべての人間の役割を代替できるわけではありません。
例えば、土地の所有者との境界線トラブルや複雑な法的問題が発生した際には、調査士の専門知識や交渉力が必要です。また、土地調査には現場での実測や過去資料との照合など、臨機応変な対応も求められます。これらはAIだけでは対処できないため、調査士の知識や経験が不可欠です。
ますますのニーズ増加が見込まれるため
土地家屋調査士の需要は、不動産市場の活性化や都市開発の進展、高齢化社会の進行などに伴い、近年増加傾向にあります。とくに、不動産取引や相続、都市計画といった土地関連の様々な場面で、土地家屋調査士の専門知識と技術が重宝されており、今後もニーズの増加が見込まれます。
さらに、AI技術が進化しても、土地に関する専門的な知識や経験は人間にしかできないため、土地家屋調査士の仕事は将来的にも安定し続けるといえるでしょう。
多くの人材が必要とされるため
土地家屋調査士は、社会の基盤となる土地に関する専門家として、その重要性は揺るぎません。しかし、高齢化が進み、ベテランの調査士が引退する一方で、後継者不足が深刻な問題となっています。
土地家屋調査士の仕事は屋外での作業が多く、体力的な負担が大きいことが、若年層にとってはハードルとなっている可能性があります。その要因として、調査業務は屋外での作業も多く、体力的な負担が大きい点が、早期退職につながる一因と考えられるでしょう。
このような状況下で、多くのベテラン調査士が引退を迎える中、後継者不足が深刻な問題として浮上しています。これは、裏を返せば、これから土地家屋調査士を目指す人にとっては、大きなチャンスであることを意味します。
狭き門であるため
土地家屋調査士の試験は非常に難易度が高く狭き門として知られています。
最近では、受験者数が4,000人程度に達しても、合格者は約400人と少数で、合格率は例年10%以下です。
そのため、資格を取得するのが難しく、専門家としての資格を持つ人材は限られており、その結果として地家屋調査士は市場での価値が高く、将来性がある職業といえるでしょう。
とくに、不動産業界や建築業界において、土地や建物の登記に関するニーズが増加しており、土地家屋調査士の需要もますます高まっています。
また、高齢化社会に伴い、相続や不動産の権利に関する問題が増える中、土地家屋調査士の役割は今後ますます重要になると予測されています。
土 地家屋調査士として働くことの利点
土地家屋調査士として働くメリットは、将来的に高収入を目指せる点にあります。さらに、この資格は独立開業が可能で、独立後は自分のペースで働くことができるのも魅力です。
雇われる道だけでなく、独立して働く選択肢があるため、キャリアの幅が広がります。勤務を続けるか独立するかに関わらず、長期的に働ける職業でもあります。
また、定年がないため、長く働き続けることも、目標収入に早く達してリタイアすることも可能です。
自分に合った働き方を選べる点は大きな強みです。土地家屋調査士は表示に関する登記という法律で定められた独占業務を行うため、不動産関連の法制度が大きく変わらない限り、仕事がなくなる心配はありません。法律に基づく専門職であるため、安定性と将来性が高い職業といえます。
こちらの記事では、、土地家屋調査士として独立開業する際のメリットを紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
土地家屋調査士開業して独立をするのに必要なものとは?
土 地家屋調査士が向いている方の特徴
土地家屋調査士に向いている方の特徴は、次のとおりです。
- コミュニケーション能力が高い人
- 体力がある人
- 基本的なパソコン操作が出来る人
土地家屋調査士に向いているのは、まず高いコミュニケーション能力を持つ方です。
測量業務では、依頼者や関係者と現地確認をおこなう際、スムーズなやりとりが求められます。また、土地家屋調査士の仕事は1日に複数の依頼をこなし、杭を打ち込む作業を含むため体力が必要となる場面があります。
さらに、ミリ単位の精度が求められる場合が多く、細かいデータを正確に扱うスキルが必要です。 図面の作成にはパソコンの操作も必要なため、パソコン操作に強い人も土地家屋調査士に向いています。
土 地家屋調査士の進路とキャリア展望
土地家屋調査士としての進路には、試験に合格した後、登録をおこない、企業に就職するか、独立して開業するかの選択があります。
企業に就職する選択肢には、安定した収入や福利厚生のメリットがあります。
また、企業に所属することで、経験豊富な先輩からの指導を受ける機会が増え、スキルや知識を体系的に学ぶことができます。大手企業や専門性の高い企業で経験を積むことで、文に特化した専門知識を深めることができるでしょう。
さらに、企業のプロジェクトに参加することで、大規模な案件に関わる機会が得られる可能性があります。
独立して開業する場合には、自分のペースで仕事を進められる自由度があり、収入の上限が自分の能力次第である点が魅力です。独立開業によって、顧客とのダイレクトな関係を築くことができ、自分のブランドを構築するチャンスも得られます。
ただし、独立にはリスクも伴い、安定した収入や顧客の獲得には時間がかかることもあるため、経営や営業スキルの習得も必要不可欠です。
どちらのキャリアを目指すにしても、専門知識の深掘りとネットワーキング、スキルアップが成功の鍵となります。
土 地家屋調査士の年収の目安
2023年5月に求人ボックスが実施した「土地家屋調査士の仕事に関するデータ」によると、会社員として土地家屋調査士として働く場合、平均年収は約384万円です。
資格手当が支給される場合、正社員としての年収は約400万〜600万円とされています。
経験を積んだ40代〜50代の時期には、会社の経営状況や景気により変動しますが、年収が800万円以上になることも。さらに、土地家屋調査士の補助者として働く場合、東京エリアでは月給が約20万円から40万円程度で、年収に換算すると約240万円〜480万円が相場です。
土地家屋調査士の年収は務める企業や働き方、個人の能力によっても変わりますので、あくまで目安として覚えておきましょう。
廃 業しないために土地家屋調査士が気をつけておくべきこと
土地家屋調査士は、その専門性ゆえに安定した需要のある職業ですが、残念ながら廃業してしまう方も少なくありません。廃業せずに長く活躍していくためには、いくつかポイントがあります。
具体的には次のとおりです。
- 新技術の導入
- ダブルライセンスの導入
- 公嘱協会への加入
ドローンや3D測量など、新しい技術を取り入れることで、業務の効率化と高精度化を実現できます。
これにより、競合との差別化を図り、顧客からの信頼を得やすくなります。また、司法書士や行政書士、測量士などのダブルライセンスを取得すれば、登記手続きを一貫しておこなえるので差別化が図れるでしょう。
さらに、公共嘱託登記の案件を受託すれば、安定的な収入を得ることができますし、協会を通じて他の調査士との交流を深め、情報交換や協力体制を築くことができます。
土 地家屋調査士になるまでのステップ
土地家屋調査士になるまでのステップは次のとおりです。
- 土地家屋調査士の資格試験に合格する
- 土地家屋調査士として登録する
- 事務所や測量会社に就職する
- 現場での実務経験を積む
- 経験を積んだ後、独立して開業
地家屋調査士になるためには、まず国家試験に合格し、その後登録手続きをおこなう必要があります。キャリアの選択肢としては、事務所や測量会社に就職するか、独立して開業する方法があります。事務所には個人経営のものと法人が運営するものがあり、個人事務所では多岐にわたる業務に携われる反面、仕事量が増えがちです。
一方で、法人事務所ではチームで効率的に働くことができ、専門知識を深める機会が豊富にあります。
また、測量会社に併設された事務所では、大規模なプロジェクトに携わることができ、法人事務所同様に良い待遇を受けることが多いです。
一般的なキャリアの進め方としては、試験に合格後、まずは就職して実務経験を積み、その後、最終的に独立開業を目指すのが主流となっています。
土 地家屋調査士の資格取得に向けて一歩を踏み出そう
土地家屋調査士は、専門性の高い独占業務を持つため、安定した収入と社会貢献が期待できる魅力的な職業です。収入は働き方や経験によって変わりますが、独立して事務所を開業すれば、現在の収入以上を目指すことが可能です。
また、行政書士や司法書士などの資格を取得すれば業務の幅が広がり、さらなる収入アップも期待できます。
これから土地家屋調査士を目指す方は、自分がどのように働きたいか、そのビジョンを明確にすることが重要です。自分に合った働き方を考え、資格取得に向けて一歩を踏み出しましょう。
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