土地家屋調査士はやめとけと言われる本当の理由と向いている人の特徴

土地家屋調査士についてインターネット上で検索してみると、検索候補に「やめとけ」というワードがあります。土地家屋調査士を目指している方の中には、これを見て「このまま試験勉強を続けてもよいのだろうか?」と不安に思われる方もいるかもしれません。

この記事では「土地家屋調査士はやめとけ」と言われる具体的な理由と、やめずに資格取得を目指すべき根拠をお伝えしていきます。あわせて、土地家屋調査士に向いている人の特徴もご紹介します。

「土地家屋調査士はやめとけ」と言われる理由

まずは「土地家屋調査士はやめとけ」と言われる理由についてお伝えしていきます。

  • 基本的に土日は休めない
  • 繁忙期は忙しい
  • 屋外での作業が多い
  • 拘束時間が長い
  • 仕事がないと思われている
  • 試験の合格率が低い
  • 収入が低くなる可能性がある

主に、仕事に対する価値観や、個人の働き方や努力によるものが大きいでしょう。

理由①基本的に土日は休めない

土地家屋調査士は土日の稼働が多い職業です。
不動産取引は、一般的に土日などの休日に売買がおこなわれます。そのため、不動産に関する問い合わせや調査、登記の依頼などのニーズに対応できるように、土日も稼働しておく必要があるのです。
また、境界特定など個人の依頼でも依頼者の休日にあわせておこなうことが多いため、土日の出勤は多くなります。
大きな事務所では、ローテーションで土日に休みが取れる場合もあります。しかし、土地家屋調査士は基本的に平日、土日問わず忙しい職業だということを心に留めておきましょう。

理由②繁忙期は忙しい

土地家屋調査士にとっての繁忙期は、1月から3月の年度末です。
この時期は新年度に向けて完成した建物の登記が増えます。税務申告による建物の資産価値の見直しなども多くおこなわれることから、依頼が集中しがちです。
また、現場での作業のあと、作図や申請書類の作成、打ち合わせなどもこなす必要があるため、勤務時間も早朝から深夜まで長時間になることが多いようです。

理由③屋外での作業が多い

土地家屋調査士は屋外での作業が多い職業です。
土地家屋調査士は登記の申請や作図をするのが主な仕事ですが、その作業をおこなうためには建物に関する資料の確認や現地での測量、立ち合いが必要になります。
測量や立ち合いの多くは屋外での作業になるため、気候や天候にも左右されます。その上、調査の邪魔になる草木があれば伐採したり、そのために危険な場所に立ち入ることもあるでしょう。
屋外での作業は屋外と屋内の仕事の割合は半々くらいと言われていますが、いかなる環境にも耐えられるタフさが必要です。

理由④拘束時間が長い

土地家屋調査士は、基本的に車で依頼者のところに行って調査をおこないます。そして、調査が終わればまた事務所に戻り、書類を作成したり図面をひいたりしなければなりません。
朝の通勤ラッシュを避けるために、早朝に出発することもあります。移動にかける時間が長くなれば、その分早出や残業も増え、拘束時間が長くなります。
とくに個人事務所の場合、一人ですべての作業をこなす必要があるため、残業での対応が多くなります。このように移動時間が作業時間を圧迫し、拘束時間が長くなるケースもあるようです。

理由⑤仕事がないと思われている

景気悪化による不動産の買い控えで、そもそも不動産登記の仕事がないのではと思われている可能性があります。また、デジタル技術の発達でこの先、土地家屋調査士の仕事は簡略化され人の手が余るようになるのではという見方もあります。

土地家屋調査士の仕事は登記の申請がオンラインでできたり、ドローンやGIS(地理情報システム)技術の進歩があったり、作業が効率化してきているのは事実です。
しかし、どんなにデジタル技術が発達しても土地家屋調査士は独占的な業務のため、人手が不要になることはないと言われています。

理由⑥試験の合格率が低い

東京法経学院で実施したアンケートによると、土地家屋調査士の平均受験回数は3回という結果でした。2~3年間は働きながら受験勉強することになるため、スケジュール管理や体調管理などモチベーションを維持する努力も必要です。

令和5年度の土地家屋調査士の試験で午前の部、午後の部の双方を受験したのは4,429人です。そのうち、合格者数はわずか428人でした。合格率は約9.7%と低い水準であり、試験の難易度が高いことがうかがえます。

理由⑦収入が低くなる可能性がある

求人ボックスの年収にナビによると、土地家屋調査士の平均年収は414万円です。幅も301〜700万円と、働く環境によって年収に大きな隔たりがあるようです(参照:求人ボックス 給料ナビ 土地家屋調査士の仕事の年収・時給・給料)。
この数字だけで見ると、異業種からの転職の際に企業で働く場合、企業規模によっては今までより年収が下がることも考えられます。

独立開業する場合も、人脈を築きビジネスとして軌道に乗るまでに時間を要することもあり、一時的に収入が減ってしまう恐れがあるでしょう。
しかし、土地家屋調査士は実績を積み上げステップアップしたり、技術だけでなく営業や集客を工夫したり、努力次第では平均年収より高い報酬が期待できる職業です。

「土地家屋調査士はやめとけ」への反論:おすすめしたい5つの根拠

土地家屋調査士はやめとけと言われる理由についてお伝えしてきました。しかし、それでも土地家屋調査士はおすすめしたい職業です。ここからは、「やめとけ」という意見への反論として、その根拠を5つ見ていきましょう。

根拠①独占業務のため仕事がなくなることはない

日本では所有する土地や建物に対して、不動産登記事項証明書へ「表題」と「権利」についての登記が義務付けられています。このうち「表題」の登記は、土地家屋調査士にしかできない独占業務であることから、仕事がなくなることはないでしょう。
法律に則って書類を作成する司法書士であっても、扱えるのは「権利」の部分だけです。土地家屋調査士なしでは登記関係の書類を完成させることはできません。
このように、土地家屋調査士は土地や建物の登記において独占できる業務があるため、仕事がなくなることはまずないでしょう。

根拠②独立開業しやすい

土地家屋調査士が独立して事務所を構えるのに、実務経験は必要ありません。土地家屋調査士の試験に合格して日本土地家屋調査会士連合会への登録を済ませ、土地家屋調査士会に入会すればすぐにでも開業可能です。
独立開業のハードルは低いため、自分の裁量で働きたいと思っている人にはおすすめの職業です。
自分の受けたい仕事や得意分野が明確であれば差別化が図れるため、企業で会社員として働くよりも収入が増えることも期待できます。自分で営業をおこない受注、納品まで一貫してできるため、やりがいも感じられるでしょう。

根拠③土地家屋調査士の世代交代がはじまる

土地家屋調査士はこれから、世代交代がはじまると予想されています。
土地家屋調査士白書2022によると、令和3年4月時点の年齢構成は60代~70代が半数を占めています。一般的な企業では定年を迎える世代の土地家屋調査士が多く活躍していることがわかります。
(参照:土地家屋調査士白書20225章 全国の土地家屋調査士人口

しかし、土地家屋調査士はデスクワークだけでなく、屋外での仕事も多いハードな仕事です。体力的な問題から、この先引退や廃業する人が多くなると予想されます。
特に、土地家屋調査士は独占業務を擁するため、有資格者が少なくなっても需要は変わりません。業界内の世代交代が進めば、若い世代に大きな仕事のチャンスが訪れるでしょう。土地家屋調査士は将来性のある職業としておすすめです。

根拠④これまでとは異なる需要が見込まれる

これからは新しい建物や土地の登記だけでなく、少子高齢化ならではの需要が見込まれます。

  • 相続による登記
  • 土地地目変更登記
  • 高齢者向け住宅の建設
  • バリアフリー性の評価
  • 空き家のリノベーション

これらの需要はこれからますます増えていくと予想されます。例えば、地方で増える空き家をリノベーションして地域のコミュニティー拠点を構築するなど、土地家屋調査士は社会的な問題を解決する役割を担う職業としても需要が高まるでしょう。

根拠⑤多様な働き方ができる

土地家屋調査士としての働き方はさまざまです。
主な就業先は、以下の通りです。

  • 土地家屋調査士の法人事務所
  • 土地家屋調査士の個人事務所(開業含む)
  • 建設会社/建設コンサル会社
  • 測量会社
  • 不動産管理会社

企業に就職すれば、教育や研修制度が整っているため未経験からでもノウハウを十分に習得できます。福利厚生も充実していることが多く、フレックス制やリモートワークなど柔軟な働き方が可能です。
一方、個人事務所の場合、一人ですべての業務をこなす大変さはありますが、自分の裁量で仕事を進めなければならないので、総合的なスキルが身に付きます。

土地家屋調査士に向いている人の特徴

土地家屋調査士はどんな人が向いていて、どんな資質が求められるのでしょうか。ここからは、土地家屋調査士として活躍している人の特徴を見ていきましょう。

特徴①コミュニケーション能力が高い人

土地家屋調査士が業務を遂行するのに、依頼人をはじめ、司法書士や不動産鑑定士などさまざまな人と関わります。また、個人で開業する場合は、営業をおこない人脈を作るためにも、コミュニケーションは重要なスキルとなります。
とくに、境界特定では双方の折り合いをつけ合意が得られるよう、丁寧な説明が求められることが多いでしょう。そのため、積極的にコミュニケーションを取り、円滑に話を進めるスキルが必要です。

特徴②調べることが好きな人

土地家屋調査士はその名前の通り、土地や家屋を調査する仕事です。
そのため、知的欲求が高くどんなことにも好奇心を持って根気良く調べられる人は土地家屋調査士に向いていると言えるでしょう。

特徴③いずれは独立・開業したいと考えている人

土地家屋調査士は企業の枠にとらわれず働きたいと考えている人にとっては魅力的な職業です。まず、開業するのに実務経験は問われません。
そして、働く時間はクライアントにあわせる必要がありますが、頑張り次第では収入が増やせるうえ、自分のペースで仕事ができるからです。

しかし、経験や実勢がないのに独立開業するのは現実的な方法とは言えません。資格取得と同時に開業を目指すのであれば、資格取得の勉強をしながら法人事務所で補助者として働くなど、最低限の経験を積んでおくとよいでしょう。

特徴④職人気質な人

土地家屋調査士は高い専門性も求められることから、職人気質な人が向いていると言えるでしょう。
土地家屋調査士は、ミリ単位の正確さが求められる職業です。特に地価の高い地域ではほんの数ミリの誤差が、大きな損失を招いてしまうことがあります。そのため、事前の情報収集や作図など細部にまでこだわり、責任をもって依頼者のニーズに応えなければなりません。
また、現場の状況は依頼者によって異なるため、これまでの経験を活かした柔軟な対応が求められます。

特徴⑤屋外の仕事が苦にならない人

土地家屋調査士の仕事は、デスクワークだけでなく屋外での作業がともないます。そのため、屋外と室内どちらもバランスよく働きたい人にとってはピッタリの職業です。
しかし、一口に屋外での作業といっても、現場によって状況はさまざまです。暑さや寒さに耐えたり、足場の悪いところへ立ち入って泥だらけになったりすることもあります。
こういった現場仕事も苦にせず、仕事に真摯に向き合う姿勢が大切です。

【結論】土地家屋調査士はおすすめの国家資格

「土地家屋調査士はやめとけ」と言われる理由と、それでも土地家屋調査士という職業をおすすめする理由をお伝えしました。「やめとけ」と言われるのは、働く環境や労働時間に対する懸念が理由として多く挙げられます。

しかし、土地家屋調査士には不動産の表題登記を独占的におこなえるという大きな強みがあります。また、これから新たな需要が見込まれることや独立開業へのハードルの低さ、有資格者の世代交代など、これからを担う若い世代に人にこそおすすめできる国家資格です。
合格率は低く、試験の難易度は高いと言われています。過去の問題を活用するなどしっかり対策をして、土地家屋調査士の資格取得を目指しましょう。

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