土地家屋調査士の難易度が高い?試験に合格するためのポイントも紹介

土地家屋調査士試験は、法律知識と精密な作図能力が試される国家資格の中でもとくに高い難易度を誇る試験です。この試験がなぜ難しいのか、どうすれば合格できるのかを、具体的な戦略とともに解説します。専門性が高く、内容に適した勉強方法の準備が求められるため、合格の近道は計画的な勉強にあると言えるでしょう。難易度が高いと言われる土地家屋調査士試験の合格を、より確実なものに近づけていきましょう。

土地家屋調査士の試験の難易度は高い

土地家屋調査士試験は、国家資格試験の中でもとくに高い難易度で知られています。この試験は、不動産の登記を正確に行うための専門知識と技術が求められるため、詳細な法律の知識と精密な作図能力が不可欠です。多くの受験生が試験の内容の範囲の広さと深さに苦戦しており、合格率は一貫して10%未満となっています。

土地家屋調査士の難易度ランキング

土地家屋調査士の試験は、不動産業界内で高い評価を受けています。国家資格の中でも、とくに専門性が高く、その難易度は他の多くの資格と比較しても顕著です。この試験は不動産業界において必要とされる深い専門知識を有する専門家を育成することを目的としているため、試験内容は厳しいです。

不動産業界資格の難易度ランキング

不動産業界内での資格試験難易度を比較すると、土地家屋調査士は以下のような位置付けにあります。このランキングは、試験の合格率、試験内容の複雑さ、および必要な準備時間を基にしています。

  • 1位:不動産鑑定士
  • 2位:一級建築士
  • 3位:土地家屋調査士
  • 4位:マンション管理士
  • 5位:管理業務主任者

年度別の土地家屋調査士試験難易度ランキング

試験の難易度が年度によっても変わるのが土地家屋調査士試験の特徴です。最近10年間のデータを基に、以下のようなランキングが成立しています。

  • 1位:平成29年度(8.69%)
  • 2位:平成25年度(8.77%)
  • 3位:平成26年度(8.82%)
  • 3位:平成27年度(8.82%)
  • 5位:平成28年度(8.92%)
  • 6位:平成30年度(9.54%)
  • 7位:令和4年度(9.62%)
  • 8位:令和元年度(9.68%)
  • 9位:令和2年度(10.36%)
  • 10位:令和3年度(10.47%)

このデータからも、年度による変動はあれど、一貫して低い合格率が維持されており、その難易度の高さを示しています。新しい法改正があった年や、試験方法に変更があった場合には、合格率に顕著な影響が出るので受験する際は注意しましょう。

土地家屋調査士試験の難易度が高い3つの理由

土地家屋調査士試験が多くの人に難しいと言われているのには、明確な理由があります。ここでは、難易度を高めている3つの主な要因を詳しく解説します。

計算や作図のスキルが必要

合格には、単に法律知識を持つだけでは不十分で、計算と作図の技能も必須です。試験には、土地測量に関連する数多くの計算問題が含まれており、これらは三角関数や複素数のような数学的知識を要求します。多くの受験者は、これらの計算問題に対して苦手意識を持つことが多く、大きな不安を感じることが難易度が高い要因です。
さらに、試験では正確な作図能力も求められます。試験では、複数の図面を作成する必要があり、これには定規やコンパスなどの道具を使用して、迅速かつ正確に描く技術が必要となるでしょう。図面においては、小さなズレや記入漏れがあると減点の対象となるため、高い精度で作業を完成させる必要があります。

民法に苦手意識を持ってしまう

民法は多くの受験者が苦手とする科目です。とくに、法律の初学者にとっては「総則」「物権」「相続」という各分野から出題される問題が大きな壁となるでしょう。これらの分野は、日常生活で直接接する機会が少なく、専門的な用語や複雑な法理が理解しにくいため、学習に多くの時間を要します。民法の問題は、試験全体でわずか3問出題されるにも関わらず、その範囲が広いため、計画的な対策が求められます。
また、民法が土地家屋調査士試験の科目として加わったのは比較的最近のことであり、過去問の蓄積が少ないことも学習を困難にしている理由と言えるでしょう。

出題のボリュームに対して試験時間が短い

午後の部は、とくに出題のボリュームと試験時間の短さが著しく、受験者にとって大きな壁です。この試験では、2時間30分の間に、20問の択一問題に加えて、2問の作図が出題されます。これらの試験内容を最後まで完遂するには、高度な時間管理スキルと効率的な作業が必須です。実際、この試験内容で求められる作業量を考えると、与えられた時間内で全てを完了させることは非常に困難です。多くの受験生が図面を完全に仕上げることなく時間切れになってしまうケースも少なくありません。
このように、出題内容に対して割り当てられた時間が不足しているため、試験は時間配分と優先順位付けの能力も同時に試されます。

土地家屋調査士試験の試験科目

土地家屋調査士試験は、その難易度の高さからも注目される試験ですが、具体的にはどのような科目で構成されているのでしょうか。ここでは、試験の各部分について詳しく見ていきましょう。

午前の部は筆記試験(平面測量・作図)

午前の部の筆記試験では、土地及び家屋の調査及び測量に関する知識及び技能が問われます。具体的には、平面測量に関連する問題が10問、加えて作図問題1問が出題されます。問題は主に測量技術に関するもので、受験者はこれらの問題を通じて、実務で求められる正確な計測とデータ処理能力を示さなければなりません。
また、作図問題は、正確かつ迅速な図面作成能力を測るものであり、ここで高い作図技術を発揮することが求められます。

午後の部は筆記試験(択一・書式)

午後の部では、不動産登記法、民法、土地家屋調査士法に関連する20問の択一問題と、実際の不動産登記に関わる作図を含む問題が2問出題されます。択一問題では、法律の深い理解と応用が試されるため、法的知識だけでなく、その適用能力も同時に問われるでしょう。午後の部の試験問題では、実務に即した正確なスキルが求められ、これが多くの受験者にとっては大きな壁となっています。

筆記試験(択一・書式)の突破率はどれくらい?

近年の筆記試験では、基準点と合格点の設定があり、これを突破することが重要です。択一式と記述式の基準点をクリアした上で、さらに合計得点が合格点に達してはじめて、試験合格と認められます。突破率は非常に低く、これが土地家屋調査士試験の高い難易度を示しています。たとえば、令和5年の合格点は択一式が35.0点、記述式が29点で、合格点は72.0点となっており、多くの受験者がこのハードルを越えるためには厳しい努力をしているのが現状です。

筆記試験合格者は別日に口述試験がある

筆記試験を突破した受験者は、その後、口述試験に進みます。この試験では、法律の知識だけでなく、受験者の土地家屋調査士としての心構えや法律などの理解度がさらに深掘りされます。口述試験は筆記試験の知識をどのように実務に活かすかを見るためのものであり、ここでのパフォーマンスが最終的な合格に大きく影響することは間違いありません。

土地家屋調査士試験の基準点と合格点について

土地家屋調査士試験では、合格に必要な基準点と合格点の設定が、試験の難易度を一層際立たせています。ここでは、これらの点数がどのように決定されるのかを詳しく見ていきましょう。

基準点を決める方法

基準点の設定は、試験の公平性と実務能力を保証するために重要な役割を果たしています。基準点は、択一式と記述式の試験それぞれに設定され、これをクリアすることが、次の試験へ進むための必須条件です。

択一式基準点

択一式の基準点は、採点効率を考慮して設定される仕組みです。具体的には、2,000人の受験者が次の試験へ進めるように点数が設定されています。この数値は、試験の年度や難易度によって異なりますが、通常は全受験者の上位半数を占める点数で定められます。基準点を超えることができなければ、記述式の採点は行われず、試験の合格は不可能です。

記述式基準点

記述式の基準点は、その年の試験の難易度や全体の成績に基づいて調整されます。通常、この点数は平均点よりも高く設定され、受験者の中からさらに上位700人が選ばれるようにされます。この基準点をクリアすることで、合格まであと一歩という状態に辿り着くことが可能です。

合格点を決める方法

合格点の設定は、土地家屋調査士としての資格を維持するための厳格な基準に基づいています。合格点は相対評価で決定され、具体的には合格者数が事前に設定された枠内に収まるように調整されます。
たとえば、400人の合格枠が設定されている場合、試験の成績上位400人が合格です。この方法により、試験の年度ごとに異なる難易度や受験者のレベルに応じて、公平かつ適切な評価が可能です。また、合格者数を一定に保つことで、資格の価値を保ち、業界内での競争を健全に保つ効果もあります。

難易度の高い土地家屋調査士試験に合格する5つのポイント

土地家屋調査士試験の合格には綿密な準備が必要です。以下の5つのポイントは、試験の高い難易度を克服し、合格するための方法となるでしょう。

択一の民法から取り組む

この試験で民法は重要な科目です。試験の択一部分では、民法の理解が全体の成績に大きく影響します。このため、試験勉強を始める際には、まず民法から手をつけることをおすすめします。
なぜなら、民法は私人間の法的関係の基礎を形成し、不動産登記法を含む他の法律科目の理解を深めるための土台となるからです。民法は「総則」「物権」「相続」など、比較的広範な範囲をカバーしていますが、試験ではこれらの範囲から各1問ずつしか出題されません。
しかし、その学習量は多いため、試験準備の初期段階でしっかりと把握しておくことが肝心です。初期段階で民法の基本的な概念をマスターすることによって、後半の試験準備で時間を有効に使えます。
また、民法の学習を早めに終えることで、不動産登記法など他の科目に集中することが可能となり、全体的な理解を深められます。民法を学ぶ際には、ただ概念を覚えるだけでなく、具体的な事例にどのように適用されるかを理解しておきましょう。この取り組みにより、実際の試験での問題解決能力が向上し、試験の難易度を下げられます。

過去問を繰り返し解いていく

難易度の高さを克服するためには、過去問題を積極的に活用することが効果的です。過去問を解くことで、試験の形式や出題傾向を理解し、どのような知識が要求されるかを具体的に把握できます。この方法は、ただの暗記を超えて、実際の試験で求められる解答スキルを養うのに役立ちます。
具体的には、学習したばかりの論点に対して、すぐに関連する過去問を解くことで、知識をどのように活用するかを学ぶことが可能です。この勉強方法を繰り返すことで、知識が定着しやすくなり、また、試験時に迅速に答えを導き出す能力が向上します。重要なのは、正解を導くことだけでなく、なぜその選択肢が正解なのか、他の選択肢がなぜ不適切なのかを理解することです。過去問を解く際には、時間を測りながら行うことが望ましいです。これにより、実際の試験の時間制限の中で問題を解く練習ができ、時間管理のスキルも同時に鍛えることができます。
また、間違えた問題については、ただ正解を覚えるのではなく、なぜ間違えたのか、どの知識が不足していたのかを分析し、その部分を再度学習することが重要です。

電卓や定規などの道具の扱いに慣れておく

この試験において、電卓や定規といった道具の使用は避けて通れません。これらの道具を効果的に使いこなす能力は、試験の成績に直接的な影響を及ぼします。とくに、計算問題や作図問題では、これらのツールを使用して正確かつ迅速に作業を完成させる必要があります。
電卓に関しては、基本的な計算だけでなく、放射計算や点の移動計算など、試験特有の操作にも慣れておきたいところです。これらの計算は、試験の中でよく目にするため、日常的に練習することで、スムーズに処理できるようになっておくと良いでしょう。
定規を使用した作図では、正確な線を素早く引く技術が求められます。練習を通じて、道具の正しい持ち方や動かし方を体に覚えさせることが、試験時のパフォーマンス向上につながります。効果的な練習方法としては、実際の過去問題を使ったシミュレーションがおすすめです。実際の試験と同じ時間制限を設け、電卓や定規を使用して問題を解く練習を行うことで、試験本番での時間配分やストレス管理にも慣れることができます。
また、間違えた問題については、なぜミスをしたのかを分析し、同じ過ちを繰り返さないように注意を払うことが大切です。

午前の部の試験免除制度を活用する

試験に合格するための大きな戦略の1つは、難しいとされている午前の部の試験の免除制度を活用することです。この制度は、特定の資格を持っている場合に、午前の部を受験せずに済むというもので、有効な手段となるでしょう。具体的には、「測量士」「測量士補」「一級建築士」「二級建築士」のいずれかの資格を保有している場合、午前の部を免除できます。午前の部は試験内容が難しく、また適切な対策教材が少ないため、多くの受験者にとっては準備が困難です。この部分を免除することにより、受験者は時間と労力を午後の部の対策に集中させることができます。これは試験全体のストレスを軽減し、効率的な勉強計画を立てる上で効果的です。
とくに「測量士補」の資格は、合格率が約40%と比較的高く設定されており、この資格を取得すること自体が土地家屋調査士試験の勉強に直接役立ちます。測量士補の資格を取得することで、土地家屋調査士試験の午前の部が免除できるだけでなく、その学習内容が午後の部の対策にも活かされるため、二重のメリットがあります。この制度を利用することで、試験当日は午後の部だけに集中できるため、精神的なプレッシャーが大幅に軽減可能です。
また、免除を受けるための資格取得は、自身のキャリアにおいてもプラスとなるため、多方面での利益が見込める選択肢と言えるでしょう。

午後の部の勉強時間に1,000時間以上つかう

試験の合格を目指す上で、午後の部に1,000時間以上の勉強時間を割くことは、多くの受験者にとって必要不可欠です。この勉強時間は、ただ長時間勉強することを意味するのではなく、質の高い学習を行うための指標です。午後の部では、択一式問題と記述式問題が出題され、記述式では法律知識だけでなく、計算や作図といった技能が求められます。実際に1,000時間をどのような勉強に分配するかが重要です。効果的な学習計画では、まず基本的な法律知識の習得に時間を割き、その後、過去問題を解くことで知識の定着を図ります。
さらに、作図や計算練習にも多くの時間を割り当てることが、試験で高得点を獲得するためには重要です。このように段階的に学習を進めることで、全ての内容に対して網羅的かつ深い理解を得ることができるでしょう。
また、1,000時間の学習は単に知識を詰め込むだけでは不十分です。実際の試験に近い形での模擬試験を行い、時間管理と精神的なプレッシャーに慣れておきましょう。この方法を通じて、試験当日に冷静に問題に取り組むための心構えを養うことができます。

東京法経学院で高い難易度を乗り越えましょう

土地家屋調査士試験は、高い法律知識と精密な作図技能を要求する難易度の高い試験です。試験合格のカギは、民法から始めること、過去問を繰り返し解くこと、そして電卓などのツールの使用に慣れることです。また、午前の部の試験免除制度を活用し、1,000時間以上の質の高い学習を行うことも試験合格のための戦略と言えるでしょう。これらの取り組みにより、土地家屋調査士試験で求められる高いスキルレベルに応える準備が整います。

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