仕事がないはウソ?土地家屋調査士の仕事がなくならない4つの理由

土地家屋調査士を目指していると、「土地家屋調査士は仕事がない」と言われることがあるようです。「このまま勉強を続けて、この業界に飛び込んでもいいのだろうか」と不安になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、「土地家屋調査士は仕事がない」と言われているのは、世の中の変化による先入観です。

この記事では、土地家屋調査士のリアルな現状をもとに、なぜ仕事がないと言われるのか、そして土地家屋調査士の将来性について解説します。また、どんな人がこの業界で活躍しているのか、特徴もお伝えしています。

「土地家屋調査士は仕事がない」と言われているのはなぜ?リアルな現状

土地家屋調査士は、インターネット上では「仕事がない」と言われています。
しかし、実際には廃業率は3%とそれほど高い水準ではありません(参照:土地家屋調査士白書2022 第5章あなたの近くの土地家屋調査士)。

では、なぜ仕事がないといわれるのか、その原因を土地家屋調査士の置かれている現状から探っていきましょう。

不動産の需要は減少傾向

新築住宅の需要は年々減少しています。そして、それにともない新規の不動産登記件数も減少傾向にあります。主な原因は、少子化や住宅に対する価値観の変化によるものです。
法務省の統計(法務局及び地方法務局管内別 登記事件の件数及び個数)によると、土地および建物の不動産登記は平成23年~令和2年の10年間で18%も減っていることがわかります。

もちろん、消費税の増税や新型コロナウイルスの流行も要因の一つに挙げられるでしょう。
少子高齢化だけでなく、世の中の景気悪化による需要の落ち込みが土地家屋調査士の仕事にも影響を与え、仕事がないと言われる原因となっています。

デジタル化による作業の軽減

デジタル化によって、土地家屋調査士の作業効率は格段に良くなっています。
まず、オンライン申請が一般化し、法務局に出向くことなく不動産登記の申請ができるようになっています。また、ドローンなどによる測量技術の進歩も作業負担の軽減につながりました。
このような、申請業務のオンライン化や測量機器の技術が向上したことが、仕事がないと言われる原因になっています。

地域でおこる需要と収入の差

働く地域によって需要に差があり、地方では土地家屋調査士は仕事がないと言われる原因になっています。
たとえば、東京では土地の開発及び再開発が盛んです。その分土地家屋調査士の仕事も多く収入も高くなっています。その一方で、地方では地域経済が停滞していることもあり、不動産取引もあまり活発ではありません。
大都市と比較すると地方の需要が少なく、それにともない収入も低くなることから、土地家屋調査士は仕事がないと言われています。

将来性から見る土地家屋調査士の仕事がなくならない4つの理由

結論から言うと、土地家屋調査士の仕事がなくなることはありません。土地家屋調査士という職業には明確な強みがあるからです。また業界内の事情も関係しています。
ここからはその理由を解説していきますね。

理由①不動産に関する登記は独占業務

土地や建物を取得する際に義務付けられている不動産の表示に関する登記は土地家屋調査士の独占業務です。その土地や建物の面積や構造など専門知識を用いて調査して、登記を代理申請します。土地家屋調査士への依頼は個人からだけでなく、海を埋め立てるなど土地開発をおこなう官公庁からの依頼もあります。この業務は、ほかの士業に取って代わることができないため、この先仕事がなくなることはないでしょう。
しかし、土地や建物の登記数は年々減少してきているので、空き家の活用や相続に関する依頼など、新たな需要に目を向ける必要がありますよ。

理由②資格を持っている人が減少している

ここ10年間の土地家屋調査士の人口はゆるやかではあるものの、減少傾向にあります。加えて、土地家屋調査士の年代構成を見ると、約半数が60歳以上です(参照:土地家屋調査士白書2022 5 日本全国あなたの近くの土地家屋調査士  2全国の土地家屋調査士人口)。

土地家屋調査士の業務は体力も必要です。そのため、これからシニア層の引退・廃業が多くなることが予想されます。業界内では世代交代の波が確実に訪れるため、事業継承など若い世代に仕事が引き継がれることが多くなるでしょう。まさに今参入すべき、将来性のある業界と言えます。

理由③新たな需要が見込まれるから

不動産登記ではこれまでのように新しい建物や土地の登記だけでなく、相続登記の義務化による新たな需要が見込まれます。
また、震災の多い日本では、地震で分からなくなった隣の家との境界を特定するなど、ニーズの多様化も予測されます。
世の中に変化が起これば、これまでとは違った新たな需要が生じるため、土地家屋調査士の仕事がなくなるとは考えにくいでしょう。

理由④AIでは担えない部分がある

近年のAI技術の発達により、さまざまな職業で人の手を介さずとも業務を簡潔できるようになった職業も増えました。
土地家屋調査士の業務でも、AI化やデジタル化で以前より作業負担が軽くなっています。しかし、それは多岐にわたる土地家屋調査士のほんの一部分です。そもそも、相談や人の気持ちが関わる事案にAIには向きません。
基本的にはこれまでどおり人が介入してコミュニケーションを取りながら問題を解決しなくてはならないため、土地家屋調査士の仕事がなくなることはないでしょう。

土地家屋調査士業で活躍できる人の特徴

土地家屋調査士は、独占的に業務をおこなえるうえ、AI台頭の影響も受けにくく将来性のある職業です。では、どんな人がこの業界で長く活躍しているのか、その特徴も見ていきましょう。

特徴①コミュニケーション力が高い

土地家屋調査士は黙々と仕事をこなす職人といったイメージがあると思いますが、この業界で活躍している人はコミュニケーション力も高いです。
なぜなら、不動産会社や建設会社、役所などいろいろな職種の人と関わることが多いからです。
また、土地や建物に関する法律を分かりやすく依頼者に説明したり、依頼者の抱える問題や事情をうまく聞き出したりするのにも、コミュニケーションは重要な役割を担います。

土地家屋調査士のコミュニケーションでは、取引先や依頼者の意見を尊重しその上で伝えたいことをわかりやすく提示する力が必要です。

特徴②世の中の変化に柔軟に対応できる

土地家屋調査士に求められるものが世の中の変化によって変わってきています。
例えば令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、相続に関するニーズはこれから増えると予想されます。その中で土地や空き家をほかの士業や公的機関と協力し地域の活性化に役立てるなど新たなビジネスモデルが確立されることもあるでしょう。
このような、土地家屋調査士に対するニーズの変化にいち早く気づき、柔軟に対応できると活躍の幅が広がるでしょう。

特徴③フットワークが軽い

土地家屋調査士はさまざまな現場へ赴くため、フットワークの軽さも重要です。
土地家屋調査士は、事務所作業、役所回り、現場での調査と、働く場所が1か所ではありません。
現状を把握し、効率も重視しつつ臨機応変に行動するために行動力だけでなく決断力も必要です。

特徴④ダブルライセンスで専門性を高めている

ビジネスにおいて、専門性は業務の幅を広げてくれます。土地家屋調査士もほかの士業とのダブルライセンスなど専門性を高めておくと、自分の強みとして活躍の場が多くなるでしょう。
例えば、司法書士の資格を持っていれば不動産登記に関する申請を一貫しておこなえます。測量士は自分で測量から登記の申請までおこなえるため実務的です。
開業の際にほかの事務所との差別化もできるため、土地家屋調査士とほかの士業とのダブルライセンスで専門性を高めましょう。

未経験の土地家屋調査士のキャリアパス

土地家屋調査士のキャリアパスはまず、企業で経験を積むことから始まります。土地家屋調査士は、技術力と正確性が求められる職種なので資格を取るだけでなく実際に現場に出て経験を積むことが何より大切だからです。

資格取得後の就職先として、土地家屋調査士の事務所や測量会社不動産管理会社などが挙げられます。資格取得前に土地家屋調査士の事務所で補助者として経験を積むことも可能です。その経験を活かし資格を取得してすぐに独立開業している人も多くいます。

まずは、自分の理想とする働き方や携わりたい分野と近い法人で経験を積み、自分の思い描くキャリアを確立していきましょう。

土地家屋調査士の仕事はなくならないが、新たな需要にこたえる必要あり

土地家屋調査士は仕事がないと言われていますが、土地の表題登記は独占業務であるため、この先仕事がなくなる心配はありません。
しかし、土地家屋調査士の仕事は、世の中の変化や法改正よって需要が変化していくと予想されます。新たな需要にも柔軟に対応できるよう、資格取得後は土地家屋調査士法人などで働き、しっかりと経験を積んでおくとよいでしょう。

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