土地家屋調査士へ出す委任状を始めとする登記の必要書類とは

「分筆登記を行う際に土地家屋調査士への委任状は必要?」
「分筆登記に必要な書類は?」
「分筆登記はどのような場合に行う?」
土地家屋調査士に分筆登記を依頼する際、このような疑問をお持ちではないでしょうか。
分筆登記を行う際にはさまざまな事情がありますが、分筆登記を進めるためには土地家屋調査士への依頼や必要書類の準備が必要です。
分筆登記に必要な書類や分筆登記によるメリット・デメリットについて正しく理解したうえで、スムーズに手続きを進められるようにしましょう。
本記事では、分筆登記の概要や分筆登記に必要な書類、分筆登記がどのようなケースにおいて必要なのかについて紹介します。

分筆登記とは

分筆登記とは、1つの区画を2つもしくは複数個の土地として分けて登記しなおす手続きのことを指します。
具体的には不動産相続を行う場合、新築の建物を建設する場合などに分筆登記が必要です。
分筆登記には現場での測量業務や専門知識が必要な法的手続きが必要であるため、一般的には土地家屋調査士に依頼するかたちで手続きを進めます。
分筆登記を行うメリットとして、不動産相続を行う場面で複数人に分けて同じ土地を相続する際に相続手続きがスムーズになったり、土地の情報を更新することで土地の所有者に課せられる税金が安くなったりする点が挙げられます。

こちらの記事では、不動産の相続に際して、土地家屋調査士が必要になるケースを紹介しています。土地家屋調査士の業務についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

分筆登記に必要な書類

分筆登記には、以下のような書類を用意する必要があります。

  • 登記申請書
  • 地形図
  • 地積測量図
  • 境界確定資料
  • 委任状

登記申請書には登記の目的や申請年月日、申請人の住所・氏名など、登記に関する詳細を記入します。
また、地形図は必ず添付が必要であると法的に定められている書類ではありませんが、土地家屋調査士に登記を依頼する場合には添付が必要です。
地積測量図は土地家屋調査士によって専門のソフトを用いて精密な図面を掲載します。
さらに境界画定資料は分筆登記を行ううえで必ず必要になるため、境界が確定していない場合には早急に土地家屋調査士に作成を依頼しましょう。
また、土地家屋調査士に分筆登記を依頼する場合には、必ず土地家屋調査士への委任状が必要です。
これらの必要書類を十分に把握したうえで、スムーズに手続きを進められるように準備を進めましょう。
くわえて、土地の相続を行う場合には次のような資料が必要です。

  • 遺産分割協議書
  • 戸籍謄本(相続人、被相続人)
  • 住民票
  • 印鑑証明書

このとき、所有権保存登記や土地合筆登記には実印が必要である一方、分筆登記に実印の用意は必要ではない点をおさえておきましょう。

土地家屋調査士に出す委任状とは

土地家屋調査士に登記を依頼する場合には、土地家屋調査士に代理人として各種手続きを行ってもらうため、委任状の提出が必要です。
委任状には委任者と受任者を明記したうえで、土地の所在地や地目など、土地に関する情報を詳細に記入します。
委任状は通常土地家屋調査士自身が作成する書類であるため、依頼人が自ら書類を入手する必要はありません。

分筆を行うシーン

ここまで、分筆登記の概要や分筆登記に必要な書類について紹介しました。
それでは、実際に分筆登記が行われるのはどのような場面においてなのでしょうか。
ここからは、分筆登記が必要になる具体的なケースについて紹介します。

シーン①土地の一部を売却したい

土地の所有者が亡くなり継続して土地を所有することが難しい場合や手元に資金が必要になった場合などに、土地の一部を売却するケースがあります。
その場合、通常1つの土地として登記されている土地を分割して登記しなおす必要があります。

シーン②複数の相続人が土地を取得したい

遺産として相続した土地を家族内で別々に所有したい場合には分筆登記を行い、土地を分割する手続きが必要です。
複数の相続人がいる場合にはどの土地を誰が所有するのか、詳細な情報を法務局など公的機関に申請する必要があるのです。

シーン③相続税の支払いのために土地の一部のみを物納したい

「物納」とは金銭ではなく土地や不動産などのモノを用いて税金を収める方法を指します。
莫大な相続税を支払う余裕がない場合や、土地を所有する金銭的余裕はないが遺産を有効活用して経済的安定を得たいといった場合には有効な手段といえます。
土地をすべて物納する場合には分筆登記は不要ですが、土地の一部のみを物納する場合には土地の分筆登記が必要です。

シーン④土地を宅地部分と農地部分に分割したい

土地を宅地部分と農地部分に分割する場合には、土地の地目を別々に登記しなければならないため、分筆登記が必要です。
宅地より農地のほうが、固定資産税が安くなるため、分筆登記によって地目を分けて登記しておくことでトータルの税支出が抑えられるメリットがあります。

シーン⑤将来の相続に備えて土地を分けておきたい

所有者が亡くなったり土地を手放したりしたタイミングでスムーズに登記手続きを終えるのは難しいことです。
土地の所有者が高齢であったり近々土地を相続したりする予定が立っているのであれば、早いうちに分筆登記しておくことで遺産相続をめぐる複雑な手続きを将来省ける可能性が高まります。
相続人が複数人考えられる場合には所有者が1つの「終活」として分筆登記を終えておくことで、将来の法的手続きが順調に進むようになるでしょう。

シーン⑥土地の一部を市町村などへ寄付したい

土地の一部を市町村などへ寄付し建物を接する道路から後退させることを「セットバック」と呼びます。
セットバックを行うことで、周辺住民が安全で生活しやすい環境が整えられたり、緊急時の避難経路が広がることで地域の安全性が高まったりするメリットがあります。
土地の所有者に直接メリットが返ってくるわけではありませんが、普段の生活で防犯性や安全性の高い住みやすい環境を手に入れられます。

シーン⑦共有不動産を分割してそれぞれの単独名義にしたい

共有不動産を分割し別々の名義で登記しておくことで、将来不動産の相続が必要になった場合でもスムーズに相続手続きを行えるようになります。
このとき不動産を単独名義にすることで、共有名義であれば名義人それぞれが控除対象となる3,000万円の特別控除が受けられなくなる点に注意が必要です。

分筆の手続きの流れ

土地の分筆登記の手続きは、以下のような流れで行われます。

  • 土地家屋調査士に分筆登記を依頼する
  • 法務局・区役所などで登記情報を調査する
  • 現地調査を行う
  • 境界立会いを行う
  • 境界確定を測量する
  • 分筆案を作成する
  • 境界標を設置する
  • 分筆登記書類を作成・申請する

はじめに土地家屋調査士に依頼する場合には複数社に対し料金の見積もりを依頼し、適正な事務所を選ぶように気をつけましょう。
また、境界の確定には必ず土地の所有者の立会いが必要なため、土地家屋調査士とスケジュール調整を行ったうえで必ず現場に立ち会わなければならない点にも注意が必要です。
さらに分筆登記にかかる期間は境界確定の状況によって大きく前後し、すでに隣地との境界が明確である場合には10日前後で作業が完了しますが、境界を確定する作業から行う必要がある場合には長いケースで2,3カ月を要する場合もあります。
また、分筆登記には分筆の数によって費用が加算される「登録免許税」と土地家屋調査士に対して支払う依頼料が必要です。

土地家屋調査士に分筆登記を依頼する場合には委任状を忘れずに

土地家屋調査士に分筆登記を依頼する場合には、各種書類を準備したり土地家屋調査士に対して依頼したりする必要があるため、手続きをすぐに始められるようにしっかりと準備しましょう。
また、分筆登記を行うメリット・デメリットについて正しく把握し、分筆登記を行うことで多くのメリットを得られるように工夫することも大切です。
土地家屋調査士に分筆登記を依頼する際には委任状を必ず準備し、分筆登記について正しい知識を身につけたうえで手続きに臨みましょう。

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