不動産の相続で土地家屋調査士が必要になる4つのケースと業務内容

土地や建物といった不動産の相続には、しかるべき手続きが必要です。

手続きには、司法書士や弁護士、税理士も携わりますが、土地家屋調査士にしか対処できないケースがあります。

そこで今回は、不動産の相続に際して、土地家屋調査士が必要になるケースを紹介します。

土地家屋調査士の業務も紹介するので、ご興味がある方はぜひ参考にしてみてください。

不動産の相続における土地家屋調査士の業務

不動産の相続で、土地家屋調査士はどのような業務を行うのでしょうか。

法務省が明示している主な業務は以下のとおりです。

(1)不動産の表示に関する登記につき必要な土地又は家屋に関する調査及び測量をすること。

(土地又は家屋に関する調査及び測量とは,不動産(土地又は建物)の物理的な状況を正確に把握するためにする調査,測量を指し,例えば,土地の分筆登記であれば,登記所に備え付けられた地図や地積測量図等の資料,現地の状況や隣接所有者の立会い等を得て公法上の筆界を確認し,その成果に基づき測量をすることが挙げられる。)

(2)不動産の表示に関する登記の申請手続について代理すること。

(不動産の表示に関する登記の申請手続とは,不動産の物理的な状況を登記簿に反映するために,調査・測量の結果を踏まえ,建物を新築した場合における建物の表示の登記,土地の分筆の登記等の登記申請手続をすることをいう。)

(3)不動産の表示に関する登記に関する審査請求の手続について代理すること。

(審査請求とは,不動産の表示に関する登記についての登記官の処分が不当であるとする者が(地方)法務局長に対して行う不服申立てをいう。)

(4)筆界特定の手続について代理すること。

(筆界特定の手続とは,土地の所有者の申請により,登記官が,外部の専門家の意見を踏まえて筆界を特定する制度における手続をいう。)

(5)土地の筆界が明らかでないことを原因とする民事に関する紛争に係る民間紛争解決手続について代理すること。

引用元:法務省「土地家屋調査士の業務

つまり、土地家屋調査士は不動産登記の専門家で、不動産がどのような大きさや構造をしているのかという物理的な状況を表す登記を行います。

これに対し、不動産の所有者などの権利関係を表す登記は、司法書士の業務です。

ここからは、土地家屋調査士の業務のなかでも、不動産の相続に関する業務を紹介します。

業務①境界確定測量

「境界確定測量」は、隣地所有者に立ち会ってもらったうえで、土地の正確な面積を測り、隣との境界を確定させる作業です。

土地の境界を確定させることで、土地のどの範囲を相続するのかを明確にできます。

境界確定測量には、早くても2~3か月程度、近隣や道路の状況によっては6か月以上を要する場合もあります。

境界確定測量にかかる費用は、35万~80万円程度で、相続後に境界確定測量を行う場合、相続人が費用を負担しなければなりません。

業務②土地現況測量

「土地現況測量」では、土地の状況を見た目の位置や広さで測量し、大まかな面積を求めます。

相続税の試算を税理士に相談する場合や、土地の相続に際して、遺言書の作成を弁護士に相談する場合などに行います。

土地現況測量は、境界確定測量と比べると短期間で完了し、費用も抑えられますが、境界を確定させるわけではありません。

土地の相続には利用できないので注意しましょう。

業務③土地に関する登記

「土地に関する登記」は、法務局に国の認定を受けた土地の図面を提出し、登記する手続きです。

土地の所有者は、登記の申請を行う義務がありますが、これには専門的な知識が求められます。

そのため、専門家である土地家屋調査士が、土地に関する登記の申請を代理で行います。

業務④建物に関する登記

「建物に関する登記」では、建物の所在や家屋番号のほか、構造や床面積などを現状に沿った内容で登記します。

建物が登記されていないと、相続時にトラブルになるおそれがあるので、土地家屋調査士に依頼しましょう。

不動産の相続に際して土地家屋調査士が必要になる4つのケース

土地や建物などの不動産は、現金のように分割するのが難しく、相続トラブルが発生する場合があります。

土地家屋調査士に手続きを依頼しなければならないケースを把握しておくと、トラブルの防止になるだけではなく、不動産の相続を滞りなく進めることができます。

そこでここからは、不動産の相続に際して、土地家屋調査士が必要になる4つのケースを具体的にみていきましょう。

ケース①相続した土地をいくつかに分割したい

相続した1つの土地を、複数の相続人で分ける際には、その土地を分割しなければなりません。

登記簿上の1つの土地を分割する手続きは「分筆登記」とよばれ、土地家屋調査士が専門的に行います。

分筆登記を行うには、前段階の作業として、境界確定測量が必要です。

境界確定測量が終わったら「確定測量図」を作成し、隣地所有者や行政などすべての利害関係者に署名捺印をもらい、登記を完了させます。

分筆登記と境界確定測量は、いずれも土地家屋調査士が専門的に行う業務です。

分筆登記の完了後、司法書士が相続の登記を行うと、1つの土地を複数の相続人で分割する手続きは終了です。

ケース②相続した土地を売却したい

相続した土地を売却する際も、土地家屋調査士への依頼が必要です。

土地を売却するには、売主の義務として隣地との境界を正確に明示しなければなりません。

境界確定測量を行うと、その土地の正確な面積を算出でき、確定測量図を作成できます。

境界確定測量を行わなければ、買主や隣地所有者と土地の境界を巡って揉めるおそれがあります。

ですから、土地の売却時に境界をはっきりとさせることは重要です。

相続した土地には、相続税の支払い義務が生じます。

相続税の申告では、確定測量図の提示が求められます。

なぜなら、農地や山林など場所によっては、登記簿の面積と現在の面積が、時間の経過により変動している可能性があるためです。

相続税は、正確な土地の面積から計算するので、土地家屋調査士による境界確定測量が欠かせません。

土地の評価を見直せば、節税対策にもつながります。

ケース③マンションを階層や部屋ごとに相続したい

マンションを階層や部屋ごとに相続したい場合も、土地家屋調査士が必要となります。

相続した1棟のマンションを、複数の相続人で分けたいのであれば、階層や部屋ごとに登記を分けなければなりません。

1つの建物を分けて登記するには「建物区分登記」を行う必要があり、これも土地家屋調査士が専門的に行える業務です。

建物区分登記の完了後、司法書士が相続の登記を行えば、マンションの階層や部屋ごとに相続できたことになります。

ケース④未登記の建物を登記したい

建物の相続登記を行う際に、そもそも建物自体の登記がされていないケースがあり、そのような場合も土地家屋調査士に依頼します。

未登記の建物は、相続の登記の手続きが行えないため、土地家屋調査士が「建物表題登記」を行います。

建物表題登記は、建物の所在や構造、床面積などを記載した「表題部」を作成する登記です。

建物の形状ならびに、土地のどの部分に配置されているのかを示す「建物図面・各階平面図」を作成します。

建物表題登記が完了し、司法書士が名義変更の登記を行うと相続完了です。

なお、未登記の建物の場合、これまで問題なかったのであれば、将来必要なときに登記すればよいのではないかとお考えの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、時間を空けるとかえって登記費用がかかったり、建物の売却ができなかったりするなどのリスクも予測されるので注意しましょう。

不動産の相続では状況によって土地家屋調査士に依頼する必要がある

いかがでしたでしょうか?

土地家屋調査士は不動産登記の専門家で、不動産がどのような大きさや構造をしているのかといった物理的な状況を表す登記手続きを代行します。

相続した土地を分割あるいは売却するには、土地家屋調査士が境界確定測量を行い、その土地の正確な面積を算出し、確定測量図を作成します。

また、マンションを階層や部屋ごとに相続したいならば、建物区分登記が必要です。

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