土地家屋調査士の独占業務とは

土地家屋調査士は、不動産の表題部の登記を独占的に担う重要な資格です。

この独占業務は、他の資格者が代行できないため、土地家屋調査士にしか許されていません。また、AIの進化が進んでいる中でも、土地や建物の現地調査など、人が直接関与しなければならない業務が多く、完全にAIに取って代わられることはないと考えられています。

本記事では、土地家屋調査士の独占業務を具体的に解説すると共に、土地家屋調査士でいることのアドバンテージを紹介します。

土地家屋調査士の試験への挑戦を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

土地家屋調査士であることのアドバンテージ

  • 独占業務がある
  • 完全にAI化することは難しい
  • 土地家屋調査士は狭き門

この先、土地家屋調査士の資格があると有利と言われているのは以上3つの理由からです。

そもそも、土地家屋調査士の試験の難易度は高く、土地家屋調査士の有資格者はそれほど多いわけではありません。令和5年度の土地家屋調査士の合格率は約9.7%となっており、狭き門ということがわかります。(参照:令和5年度土地家屋調査士試験の最終結果について

また、不動産の表題部の登記は土地家屋調査士にしかできない独占業務です。最近ではAIの台頭で、将来的に多くの仕事はAIに置き換わると言われており、土地家屋調査士の業務でもAIが担う部分が出てくると予想されます。しかし、登記申請をおこなうには、土地や建物を詳しく調査しなければなりません。このような、土地家屋調査士が現地へ足を運ぶ、実地調査はAIには担えない業務です。

このような理由から、不動産業界で働くうえで土地家屋調査士の資格は、アドバンテージとなるでしょう。

宅建との違い

土地家屋調査士は同じ不動産関係の資格として、宅地建物取引士と比較されることが多いです。
どちらも国家資格ですが、主に次のような違いがあります。

  • 「土地家屋調査士」 不動産の調査や表題部の登記申請をおこなう専門家
  • 「宅地建物取引士」 不動産の取引に関する専門家

どちらも法的な知識が必要となり、公平性が求められますが、宅地建物取引士の資格取得後にステップアップとして土地家屋調査士の資格にチャレンジする方が多いようです。

こちらの記事では、土地家屋調査士と宅建の資格をダブルライセンスについて紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
土地家屋調査士と宅建のダブルライセンスはおすすめ?

土地家屋調査士の“独占業務”とは

土地家屋調査士であることのアドバンテージの一つ「独占業務」について、もう少し詳しく見ていきましょう。

土地家屋調査士は、有資格者のみに許された不動産の表題部の登記の代理申請という独占業務があります。不動産を取得した人は、必ず表題部の登記をしなければなりません。表題部というのは、土地や建物の所在地や形状、面積など不動産がどのような状況であるかを証明する部分です。
表題部の登記申請は不動産の持ち主でもできますが、土地や建物の現状を正確に記録する作業は専門性が高いため、土地家屋調査士に依頼して代理申請してもらうのが一般的です。

また、筆界確認という隣接地の境界を明確にする作業も土地家屋調査士の独占業務です。当事者同士の言い分を聞き、境界を特定することで境界紛争の解決をサポートします。

このように、土地家屋調査士の独占業務は、不動産の価値を測り、守るために重要な業務です。

土地家屋調査士が行う登記

不動産登記は正式名称を登記事項証明書といい、土地家屋調査士がおこなうのはこの中の「表題部」の登記です。この表題部の登記は不動産を取得した人に義務付けられています。登記には「権利部」の登記もありますが、土地家屋調査士の業務の範囲外なうえ、申請義務もありません。

土地家屋調査士がおこなう表題部の登記には、土地に関するものと建物に関するものの2つあります。それぞれどのような内容を記載するのか、具体的に説明します。

土地に関するもの

土地の登記事項証明書に記載するのは主に以下の内容です。

  • 所在地
  • 番地
  • 土地の使用目的
  • 面積
  • 登記日

土地の使用目的は、宅地、田、畑なのかなど23の用途から登記申請するにあたって何に使用するのかを記載します。

登記をおこなうのは新しく土地を取得したときだけでなく、土地の境界を特定したときや、分筆・合筆をおこなうときなど、状況はさまざまです。
そのため、土地の現状を正確に記載することが求められます。

建物に関するもの

続いて、建物に関する登記事項説明書に記載する内容です。

  • 所在
  • 家屋番号
  • 建物の使用目的
  • 造り
  • 床面積
  • 登録日

土地の内容に建物の構造の記載が加わります。木造、鉄筋造、鉄筋コンクリート造といった、いわゆる骨組みについてです。
また、面積は床面積を記載します。そのため、増改築などで床面積が増減した場合にも登記が必要になるケースもあります。

土地家屋調査士と司法書士の業務のすみわけ

土地家屋調査士と司法書士の業務は、きちんとすみわけができるよう法律が整備されています。
不動産の登記申請は主に土地家屋調査士と司法書士がおこないますが、それぞれが不動産の登記全般を扱えるわけではありません。土地家屋調査士と司法書士では同じ不動産登記でも担う部分が異なります。

土地家屋調査士は独占業務である不動産の「表題部」の登記をおこない、「権利部」は司法書士がおこないます。それぞれ有資格者のみがおこなえる行為で、お互いが干渉することはありません。これは土地家屋調査士法や司法書士法に定められています。

しかし、なかには依頼者の利便性を考え、登記申請をワンストップでできるよう、司法書士の資格も取得している土地家屋調査士もいるようです。

土地家屋調査士試験の難易度と傾向

土地家屋調査士の試験では毎年400人ほどの合格者が出ていますが、これは受験者全体の10%前後です。合格率がそれほど高くない理由は、土地家屋調査士の試験は相対評価で、おおよその合格者数が決まっているからです。

そのため、筆記試験で80点取れたからと言って必ず合格できる試験ではありません。
直近の10年の合格者数を見てみると、合格者はおおむね10%前後で推移しています。

受験者数 合格数 合格率
平成26年 4,617人 407人 8.82%
平成27年 4,568人 403人 8.82%
平成28年 4,506人 402人 8.92%
平成29年 4,600 人 400人 8.70%
平成30年 4,380人 418人 9.54%
令和元年 4,198人 406人 9.67%
令和2年 3,785人 392人 10.36%
令和3年 3,859人 404人 10.47%
令和4年 4,404人 424人 10.38%
令和5年 4,429人 428人 9.66%

(参照: 日本全国あなたの近くの 土地家屋調査士

土地家屋調査士の資格取得に向けた勉強時間は、一般的に1,000時間ほど必要と言われています。
ちなみに同じ不動産関係で人気のある宅地建物取引士は300~500時間の勉強時間が必要です。このような点からも、土地家屋調査士試験の難易度は比較的高いと言えるでしょう。

土地家屋調査士の試験を受けるなら

先ほどお伝えしたように、土地家屋調査士の資格取得には1,000時間ほどの勉強時間が必要です。土地家屋調査士を目指す多くの方は、働きながら勉強時間を確保しなければなりません。働きながらの勉強では、まとまった時間を取るのが難しく、思ったように試験勉強が進まないこともあるでしょう。
効率よく土地家屋調査士を目指す方法として、専門的な知識を持った講師が在籍する予備校を利用するのもおすすめです。
自分の理解度にあわせたテキストを使ったり、講師への質問ができたりするため、自分のつまずきやすいポイントにあわせて効率的に勉強を進められます。

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独占業務を有する土地家屋調査士は安定的な需要が見込まれる業界

この記事では、土地家屋調査士の独占業務について詳しく解説しました。

不動産の表題部の登記は土地家屋調査士の独占業務です。司法書士であっても、表題部の登記はおこなえないため、将来的にほかの士業と業務を奪い合うこともなく安定的な需要が見込まれるでしょう。

独占業務を擁する土地家屋調査士の試験の難易度は、比較的高い傾向にあります。
そのため、自宅学習だけでなく予備校の利用なども検討し効率的に資格取得を目指しましょう。

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