土地家屋調査士試験において、試験範囲の1つである民法は鬼門と言われています。対策が難しく、初学者には難易度の高い分野だからです。

しかし、適切な攻略法を身につけ学習を進めれば、初めて法律を学ぶ方でも合格を狙えます。

今回は、土地家屋調査士試験の民法について、効果的な勉強法とおすすめの参考書・テキストを解説します。

土地家屋調査士試験は民法の攻略がカギ?

土地家屋調査士試験に合格するためには、民法の攻略が重要です。
民法が出題範囲となるのは、午後の部の択一式問題です。択一式問題は全部で20問出題されますが、そのうちの3問が民法の分野から出題されます。配点は7.5点です。
20問のうちたったの3問、配点は択一式問題50点満点中の7.5点でしかないと聞くと、「どうして民法が重要なのか?」と思う方も多いでしょう。実は、択一式問題で最もボリュームが多い出題分野である不動産登記法を理解するためにも、民法は頭に入れておく必要があるのです。
不動産登記法は、択一式問題20問のうち16問出題されます。そのため、択一式問題で点を取るには不動産登記法の勉強が必須です。そして、不動産登記法を理解するためには、不動産登記法のベースとなっている民法についても理解する必要があります。
つまり、土地家屋調査士試験において民法は、択一式問題20問のうち計19問の点数に関わる重要な分野だということです。

民法で点を取るのが難しい理由

択一式問題において大きく関わる分野である民法は、対策が必須です。しかし、民法で点を取るのは難しいと言われています。理由は以下の3つです。

  • 出題範囲が広い
  • 深い理解が必要
  • 問題を解くのに時間がかかる

民法は出題範囲が広いです。そのためピンポイントに絞って対策するのも難しく、点を取りにくいと言われています。
また、民法は単語や意味を暗記するだけではいけません。「存在している法律や権利が、何のため、誰のために必要なのか?」などといった部分まで、深く理解する必要があります。
さらに、試験では問題文で提示されている情報を整理しながら解かなくてはならず、1問を解くのに時間がかかるのも難しい理由です。あらかじめ解く練習をして慣れておかないと、試験時間内に解き終わりません。
以上のように、民法は勉強しにくく、試験でも簡単に解けない分野です。そのため、試験で点を取るのが難しいと言われています。

土地家屋調査士試験の民法の勉強法

勉強方法が難しい民法ですが、効率の良い勉強法を知っていれば問題ありません。具体的には、以下の3つのポイントをおさえて勉強するのがおすすめです。

  • 条文暗記より理解が大切
  • 総則から入り物権へ
  • テキストの目次を使う

条文暗記より理解が大切

民法は、ただ条文や言葉の意味を暗記するだけではなく、内容を理解していくことが大切です。
内容の理解は、「その制度や条文が、誰のために、何のためにあるのか?」ということまで考えることで深まります。
たとえば「代理」という制度について覚える場合、言葉の意味を暗記するだけであれば「本人の代わりに、他の人(代理人)が法律行為をすること」を覚えるだけで十分です。しかし民法の学習では、代理制度が「どういった場合に、誰にとって必要なのか?」という理解まで求められます。民法の理解をここまで深めると、土地家屋調査士が代理で行える手続などを覚える際にも頭に入りやすいです。

総則から入り物権へ

民法は、最初に共通ルールが規定された総則があり、次に物権・債権・親族・相続のような個別の規定が定められているという順番になっています。そのため学習の際も、条文の順番通りに総則から物権へ進めるのがおすすめです。
大事なのは、1回で全てを理解しようとせず、何度も繰り返すことです。1回目から理解しようとすると、時間がかかってしまって挫折しやすくなります。総則で理解できなかった部分も、個別の規定を読むと理解できる場合があるので、わからないところは時間をかけず、いったん飛ばして読み進めていきましょう。
また、土地家屋調査士の試験では、債権と家族法については出題されません。土地家屋調査士の試験のみの対策を行うのであれば、債権と家族法についても読み飛ばして大丈夫です。

テキストの目次を使う

民法の勉強をする際は、テキストの目次を活用して「自分が何を勉強しているのか」を把握しておくと便利です。
テキストの多くは、物権などの個別の規定ごとに単元が分けられ、目次がついています。目次を見ておくと「今は物権の単元内の、所有権について勉強をしているのだ」などと把握でき、何を学んでいるのか明確にできます。
テキストの目次で学んだことを把握しておくと、「所有権の意味について復習しておこう」といった見直しや、「所有権が関わる法律・制度には、何があったか?」といった他の単元と繋げた学習が可能です。より効率よく勉強ができるようになります。

試験問題の解き方

試験問題は、素早く正確に解くことが求められます。そのため、問題文を読みながら、自分で理解しやすいように要点や関係図をメモしておくのがおすすめです。
問題文だけで理解しようとすると、何度も読み直しが発生して時間がかかる可能性があります。
あらかじめ要点と関係図を抜き出しておけば、自分の頭で整理しやすくなり、見直しの時間も短縮可能です。

過去問の活用法

民法の勉強には、過去問の活用が不可欠です。テキストで民法の知識を学んだら、過去問を解いてアウトプットし、より知識を定着させていきましょう。
おすすめは、テキストで1つの単元を読んだら、すぐにその単元の問題や過去問を解く方法です。学んだ単元の知識がどのように出題されているのか確認でき、テキストを読み返す際に出題形式に合わせて要点をまとめやすくなります。
ただし、土地家屋調査士試験の民法についての過去問は数が少ないので、注意が必要です。民法が試験範囲に組み込まれたのは平成17年度からのため、土地家屋調査士試験の過去問のみでは数がこなせません。そのため、土地家屋調査士試験の過去問を全て解き終わったら、宅建(宅地建物取引士)や行政書士の過去問も勉強しておくと安心です。

こちらの記事では、土地家屋調査士試験を受けるにあたっての過去問の重要性や活用方法を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
土地家屋調査士試験は過去問攻略が鍵!おすすめ過去問集も紹介

おすすめの基本テキスト

民法の勉強をする際、おすすめの基本テキストは以下の4つです。

  • 民法が分かった(法学書院)
  • 根本正次のリアル実況中継 司法書士 合格ゾーンテキスト
  • 司法書士 山本浩司のautoma system (1) 民法(1) (基本編・総則編)
  • 森山和正の 司法書士Vマジック1 第2版 民法I

民法が分かった(法学書院)

『民法が分かった(法学書院)』は、民法を初めて学習する方向けのテキストです。民法の重要な部分を抜き出してわかりやすく解説されており、初心者がまず大まかに民法を学ぶには適しています。
土地家屋調査士試験の民法を細かく学ぶ前に読んでおくと、理解がより深まるはずです。

根本正次のリアル実況中継 司法書士 合格ゾーンテキスト

『根本正次のリアル実況中継 司法書士 合格ゾーンテキスト』は、司法書士試験用のテキストですが、土地家屋調査士試験の本試験にも活用できます。初心者でも理解しやすいよう詳細な解説が載っているため、おすすめです。
土地家屋調査士の民法に適したテキストは、2023年11月時点では市販されていないため、こうした司法書士試験用のテキストを使うと良いでしょう。

司法書士 山本浩司のautoma system (1) 民法(1) (基本編・総則編)

『司法書士 山本浩司のautoma system (1) 民法(1) (基本編・総則編) 』も、司法書士試験用のテキストです。初心者向けのテキストより踏み込んだ内容のため、ある程度知識がついてきた方に適しています。
民法の知識をさらに深めたい方、他の資格試験のための勉強をしたい方にもおすすめです。

森山和正の 司法書士Vマジック1 第2版 民法I

『森山和正の 司法書士Vマジック1 第2版 民法I』も、司法書士試験用のテキストです。司法書士試験の実践向きのテキストのため、民法についてより深く勉強したい方に適しています。土地家屋調査士の試験対策においては、余裕があれば目を通しておくと、より安心です。

おすすめの過去問

民法の勉強をする際、おすすめの過去問は以下の3つです。

  • 土地家屋調査士 択一過去問マスターⅠ(東京法経学院)
  • 土地家屋調査士 択一式過去問(日建学院)
  • 宅建 過去問 (スマホアプリ)

土地家屋調査士 択一過去問マスターⅠ(東京法経学院)

『土地家屋調査士 択一過去問マスターⅠ』は、東京法経学院から直販されている択一問題集です。科目ごとにⅠとⅡに分かれており、民法の過去問はⅠに収録されています。
2023年11月時点での最新版では、平成元年度から令和4年度まで載っています。2023年11月時点で販売されている過去問の中では、最も収録年数の多い過去問です。
民法だけでなく他の分野の試験対策にも使えるため、ⅠとⅡをセットで持っておくことをおすすめします。書店では販売していないので、東京法経学院のサイトから直接購入しましょう。

土地家屋調査士 択一式過去問(日建学院)

『土地家屋調査士 択一式過去問』は、書店でも購入できる、日建学院から出版されている択一問題集です。初心者にもわかりやすい解説が載っており、さらに民法の理解度を高められます。
ただし、ボリュームが少ないことが難点です。外出時などに使う補助的な教材として使用し、他の過去問集も活用して演習する問題数を増やすことをおすすめします。

宅建 過去問 (スマホアプリ)

『宅建 過去問』は、宅建の過去問を演習できるスマホアプリです。分野ごとに出題されるため、必要な分野だけ選んで学習できます。
土地家屋調査士試験で必要な分野を、外出時のちょっとした時間で学びたい時に最適です。

土地家屋調査士試験の民法は勉強法の工夫で攻略できる

土地家屋調査士試験の民法について、必要な対策と勉強法、おすすめのテキストや過去問などを解説しました。
民法は、土地家屋調査士試験において比重が高いうえ、対策がしづらく点も取りにくい分野です。しかし、適切な勉強法の工夫とテキスト・過去問を使えば攻略できます。
さらに、スクールや通信講座では土地家屋調査士試験の民法のみに特化した授業やテキストも用意されているため、これを利用するのも効果的です。
民法の勉強に不安を感じている方は、この記事を参考に勉強法を工夫してみてはいかがでしょうか。

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