土地家屋調査士の資格取得にはメリットがある?業務内容と有用性について解説

土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記を専門に行える資格であり、8士業に数えられている専門職のひとつです。
土地家屋調査士とはどんな資格なのか、具体的な仕事内容や、取得後のメリットや実用性などを紹介していきます。

土地家屋調査士とは

土地家屋調査士は、所有者からの依頼を受けて不動産の表示に関する登記手続きを代行できる唯一の国家資格です。主な業務内容としては以下のようなものがあります

主な業務は法務局への登記の申請

土地家屋調査士は、「表示に関する登記」を担っており、土地や建物がどこにどれくらいの広さで、どのような形状をしているのか、どのような用途で使用されているのかなど、土地や家屋の調査や測量を行います。それらの情報を、所有者に代わって法務局に登記します。

土地家屋調査士は表題登記の専門家

注文住宅や、新築一戸建を購入した場合、完成後1カ月以内に表題登記することが法律で義務付けられています。
建物の表題登記を本人に代わって代理申請できるのは、土地家屋調査士に限られています。土地の外観や現状といった表示に関する登記は、土地家屋調査士にしか行えない独占業務です。土地家屋調査士は土地に関する法律のスペシャリストなのです。

地積測量図や各階平面図・建物図面の作成も

土地家屋調査士が必ず行う仕事に図面作成があります。
建物表題登記に必要な各階平面図や建物図面作成の専門家は土地家屋調査士で、正確に測量して図面を書くことが求められます。建物図面・各階平面図は、建物の敷地と建物の位置関係、各階ごとの形状、寸法、床面積の計算方法とその結果などを記載していきます。
地積測量図は土地の売買を行う際、土地を分ける際などに必要な図面です。地番や土地の所在、面積、面積の計算方法などを記載します。

土地家屋調査士を取得するメリットとは

土地家屋調査士は、所有者に義務付けられた「表示に関する登記」を独占的に行うことができるという強味を持った資格です。
土地家屋調査士として働くメリットを4つご紹介しましょう。

独占業務だから独立が可能で高収入が可能

土地家屋調査士は独立が可能で、自分の裁量で働くことができるのが魅力の一つです。
一般的に数年間は補助者として実務経験を積んでから独立するケースが多いですが、開業の条件として実務経験が設定されているわけではないので、試験合格後すぐに開業することも可能です。
但し、測量の技術を身につけるためには、最低でも3年位の実務経験が必要と言われています。実務経験を積まずに独立するのは、現実的に難しいということになります。
土地家屋調査士は専門性が高く、法律的な知識と測量技術を必要とする独占業務であり、参入へのハードルは高くなります。平均年収は600万円前後といわれ、サラリーマンの平均よりも高いと考えられます。

フィールドワークとデスクワークのバランスがいい

地家屋調査士の仕事は、CADを用いた製図作業や法務局への申請書類作成などのデスクワークだけではなく、不動産周辺の測量や物件調査といった屋外調査も行います。
現場での仕事は体力が必要となりますが、フィールドワークとデスクワークの仕事が半々くらいとバランスが良く、気分転換をはかりやすい点が魅力です。

転勤や異動がない

建設会社や測量会社等に就職しても、法務局の管轄エリアは限定されているため、全国展開している企業でない限り、遠方への出張や異動、転勤はほとんどありません。

人生の選択肢が増える

法律の知識を身に着けてスキルを高めることで、弁護士との協働による境界鑑定業務などを行うことができるようになります。ダブルライセンスを実現することで業務の幅を広げることができます。例えば、司法書士を取得すれば「権利に関する登記」も同時に可能になり、行政書士を取得すれば農地転用の手続きに携わることができます。
このように様々な業務を提供できるようになれば、選択肢は大きく広がります。また、独立したら定年はなく、長く働いたり早めにリタイアしたりといった人生の選択肢の幅が広がります。

土地家屋調査士の将来性

土地家屋調査士の将来性は、不動産市場や社会の動向によって変動しますが、一般的には安定した需要が期待される専門職です。
以下に、土地家屋調査士の将来性についての要素を挙げます。

世代交代時期が間近

「日本土地家屋調査士会連合会」によると、現在もっとも多い年齢層は60代で、定年といわれる年齢に近い層になります。地家屋調査士は独立開業できるため、定年退職制度はありませんが、体力勝負の側面が多く年齢とともに引退する人が多いのも事実です。今後は世代交代が大きく進むだろうということは想像に難くありません。

AIが代替できない仕事

これまでは人が目測していた測量やデータ入力といった作業は、AIがこなすようになる未来がやってきて、変化を強いられていくことが予想されています。しかし、土地家屋調査士の仕事はなくなってしまうことはありません。土地家屋調査士は測量と書類作成の他にも多くの仕事があります。
実際の業務には顧客とのコミュニケーションが不可欠です。隣地所有者への協力要請、交渉や説得はAIではできません。多くの場面で必ず人力が必要になります。
AI技術で業務の効率化を図れるようになれば、細かい仕事をAIが作業し、より専門性が高く報酬額も大きい仕事に集中できるようになります。AIとの協業をしていくことで、今後活躍の場も広がることでしょう。

相続をきっかけにした分筆や売却が今後増加する

団塊の世代が後期高齢者となった現在、今後多くの相続が発生し、土地の分筆や売却が増えることが予想されます。その手続きに土地家屋調査士は不可欠です。
また、空き家対策を含めた中古住宅流通の活性化などで発生する確定測量といった業務なども明るい材料といえます。

安定的かつ仕事の幅が広がっている

「表示に関する登記」は、土地家屋調査士にしか行えない独占業務のため需要は安定しています。民間だけでなく、役所からも定期的に公共事業の依頼があります。
また、関連資格を取得して、土地家屋調査士がカバーできない部分も扱えるようになれば、仕事の幅が広がりさらなる高収入も期待できます。

土地家屋調査士に向いている人の特徴

土地家屋調査士として活躍するためには、どういった資質や能力が求められているのでしょうか。
どのような人が向いている職業なのか、業務の特性を踏まえたうえで解説します。

コミュニケーション能力が高い

土地家屋調査士は、隣地所有者や役所の担当部署など多くの人と関わります。そのため、円滑なコミュニケーションは欠かせないものとなります。
また、依頼者の要望やニーズを正確に理解し、適切な解決策を提供する必要があります。

体力に自信がある

土地家屋調査士の仕事は意外と体力がいります。遅くまで書類を作成したり、データをまとめたりするデスクワークに加え、夏は炎天下、冬は極寒の中で測量・調査を行うので体力に自信がない人は苦労するかもしれません。

数字やデータに強い

土地家屋調査士は細かなデータや法的文書を取り扱うため、緻密で正確な作業が求められます。また建物や土地を調査する際、データ分析・処理するのも大切な業務です。数字に強くデータ分析が得意という人は、土地家屋調査士に向いています。

土地家屋調査士業界で長く働くコツ

測量実務経験が無くても、不動産取引実務を知らなくても資格は取れます。しかし、そのような状態で開業しても難しいのが現実です。
土地家屋調査士業界で長く活躍するために以下のアドバイスをお伝えします。

最新の測量の知識や技術を仕入れておく

最新の法律や規制、測量技術のトレンドを学び続けることで、業務の質を向上させ、競争力を保つことができます。近年ではドローン測量で、広範囲を早く正確に測量できるようになりました。
また3Dスキャナーを活用する事によって立入り困難や高低差がある測量困難な現場での測量が可能になりますし、作業のスピードアップを図れます。土地家屋調査士として長く活躍するためにも、常に専門知識と技術をアップデートさせることが大切です。

地域の特性を理解しておく

測量は所有者の土地と行政が管理する道路との境目を見極めることが大切です。その道路の扱いは行政によって違いがあるため、土地家屋調査士は地域の特徴を理解しておく必要があります。
備えられている書類や確定するまでの手順も地域で異なります。その地域特有の土地の歴史などから、特別な配慮が必要なケースもあります。地域に密着した土地家屋調査士が多いのはこういった背景があります。
地域の事情に精通していれば、スムーズに書類の準備ができるので需要が高くなるでしょう。

新しい制度に対応する

今後、少子化により相続件数が増え、土地の分割や売却の数も増えることで、不動産のトラブルの件数も増えると予想できます。これらの制度に対応できる能力と資格を身に付けておくことで、活躍の場が広がると考えられます。例えば「ADR認定土地家屋調査士」に認定されると、弁護士と共同の土地境界トラブルがあった場合、裁判になる前に解決することが可能です。

人脈を築き周りに負けない知識をつける

土地家屋調査士は、横のつながりが強い業界ですので、人脈を広げ深めておくことはとても重要な要素の一つです。人脈は、仕事の機会を増やすだけでなく、専門知識の共有や相互支援にも大きく影響を与えます。仕事を請け負うにあたっても人脈を広げる必要があります。他士業との繋がりを持つことで、新たなプロジェクトやクライアントを獲得するチャンスも増えるでしょう。他の土地家屋調査士や業界の専門家と交流することで、新しい情報やトレンドを知る機会が増えますので、セミナーや研修にも積極的に参加していきましょう。経験豊富な先輩や同僚からのアドバイスや知識共有は、自身のスキルアップに繋がります。

まとめ

土地家屋調査士は、国民の大切な財産を守ってくれている重要な仕事です。表舞台に出る機会は少ない縁の下の力持ちのような資格です。土地家屋調査士の業務は、依頼者だけでなく、隣接者や役所など多くの出会いによって成立しています。普段の生活では会うことがない人との出会いもあります。その出会いによって新たな発見があるかもしれません。
土地家屋調査士は社会的にも非常に重要な仕事です。ぜひ資格を取得して、より豊かなキャリアを築きましょう。

当サイトでは土地調査士の資格取得を考えている方のために、おすすめの土地調査士の予備校をランキング形式で紹介しています。
ぜひチェックしてみてください。