土地家屋調査士試験は難しい?難易度や受験対策を解説

専門性が高く就職に強い土地家屋調査士になるためには、土地家屋調査士試験に合格する必要があります。
試験は、午前と午後の部に分かれており、とくに午後の部の民法や登記に関するマークシート問題と土地・建物に関する作図問題は試験の鬼門といわれています。

今回は、不動産業界の国家資格のなかでもトップレベルに難しいとされる土地家屋調査士試験の内容や難易度、受験対策について解説します。
試験を受けようか迷っている方は、ぜひご参考ください。

土地家屋調査士取得のメリット

難易度が高く狭き関門である土地家屋調査士になるためには、多くの勉強時間を要します。それでも毎年、たくさんの受験者が募る理由は何なのでしょうか?

ここでは、土地家屋調査士を取得するメリットをご紹介します。

活躍の幅が広い

国家資格である土地家屋調査士は、専門性の高さから民間だけでなく、役所などの公的機関からの依頼が舞い込むこともあります。
ほかにも、筆界特定制度を手続する調査委員としての活動や、裁判外紛争解決手続の代理業務など、マルチに活躍できる場が用意されています。

さらに、今後は高齢化社会が進むなかで、相続や分筆に関する売却依頼の案件が多くなることが予想されます。
独立したての経験が浅い方でも、土地家屋調査士としてスキルを高められるでしょう。

独占業務がある

不動産における「表記に関する登録」は、土地家屋調査士しか行えない独占業務です。
独占業務は法律によって義務付けられているということなので、不動産業がこの世にある限り、仕事は安定しているといえるでしょう。

表示に関する登記とは簡単に言うと、土地や建物の所有者や債権者の情報を記録し誰にでも確認できるよう工事する制度です。
土地、建物の価値が値上がりしている今の時代、不動産は大きく動き出すといわれているので、仕事の依頼は増加傾向にあります。将来性が高く、安定している業界と考えられます。

需要は安定

土地家屋調査士の仕事は需要が高いため、安定した職種といえます。

前述したように、土地や建物の価格は年々高まっており、都市部を中心に新築マンションや一戸建ての建設が行われています。土地家屋調査士の仕事は土地に関するものだけでなく、建物の依頼もあります。
建物の案件は、土地よりも経費がかからず短期間で完了することから収入面では大きく期待できるでしょう。

たとえ不動産業界が下火になったとしても、公的企業からの需要は安定しているため、土地家屋調査士は景気に左右されることなく安定して働くことができます。

土地家屋調査士試験とは

土地家屋調査士試験は、毎年10月に行われる筆記試験と翌年1月に行われる口述試験で構成されています。
一次試験である筆記試験は、午前の部と午後の部に分かれ、合格した人だけが二次試験の口述試験に進むことができます。

実施場所は、東京、大阪、名古屋、広島、福岡、那覇、仙台、札幌、高松の9拠点で行われます。
ここでは、試験内容について解説します。

一次試験午前の部

午前の部では、平面測量に関する問題が10問、作図に関する問題が1問です。

  • 試験時間:9:30~11:30(試験時間:2時間)
  • 試験内容:平面測量10問・作図1問

平面測量

午前の部の試験では、土地及び家屋の調査及び測量に関する知識及び技能として、測量に関する問題が10問出題されます。
解答はマークシート形式で、多肢択一式です。

1問6点、全部で10設問あり60点満点となります。

作図

午前の部の試験には、平面測量以外に作図の問題が1問出題されます。
作図は1問20点、2設問の40点満点です。

作図は試験内容に沿ったテキストがないため試験勉強が難しいといわれています。わずか2時間で解かなければならないため、土地家屋調査士試験の最大の難所です。

一次試験午後の部

午後の部では、不動産登記法・民法・土地家屋調査士法に関する問題が20問、土地・建物に関する作図問題が2問出題されます。

  • 試験時間:13:00~15:30(試験時間:2時間30分)
  • 試験内容:登記にまつわる20問/作図2問

「午前の部」は免除制度を使って試験をパスする受験者がほとんどであることから、合格を目指すなら「午後の部」の試験内容をしっかり押さえておく必要があります。

択一式

午後の部の試験では、民法、不動産登記法、土地家屋調査士法に関する問題が全20問出題されます。解答は、マークシート択一式で、1問2.5点の20設問です。

民法に関する設問では、総則・物権・相続の分野から各1問ずつ出題されます。学習範囲が広く、また法律に関わる難易度の高い問題なのでしっかり対策しなければなりません。
択一式には基準点が決まっており、基準点を下回ると不合格となります。

書式

土地や建物に関する書式問題が各1問ずつ出題されます。解答は、1問25点の2設問で50点が配点されます。
三角関数や複素数といった高校数学の知識を要するため、数字に苦手意識のある方は時間のかかる設問となるでしょう。

図面の作成作業は正確さが求められるため、あらかじめ時間配分に注意して取り掛かりたいです。
択一式の基準点を満たした場合のみ、記述式が採点されます。記述式にも基準点があるので、最終的に記述式の基準点を満たし、択一式と記述式の総合点数によって合格者が決まります。

二次試験は口述試験

二次試験は、一次試験に合格した人だけに受験資格が与えられます。試験官との面接による試験で、不動産登記法と土地家屋調査士法についての質問に対して自分の考えや意見を伝えます。

  • 試験時間:15分程度
  • 試験内容:不動産登記法、土地家屋調査士法など

決まった質問ではなく、受験者の土地家屋調査士として働く上での心構えを確認するような面接となります。そのため、そこまで緊張することはありません。例年、不合格者が出ることはないため、落ち着いて自分の考えを伝えることができれば大丈夫です。

土地家屋調査士の難易度

土地家屋調査士試験は、不動産業界の国家資格のなかでも難易度の高い試験です。
相対評価で毎年、上位400名程度が合格します。年々受験者数が減っていることもあり合格率は上昇傾向にはありますが、それでもトップレベルの難易度を誇ります。

ここでは、土地家屋調査士試験の難易度の高い理由、合格点や合格率について解説します。

土地家屋調査士が難易度の高い理由

土地家屋調査士試験が毎年ハイレベルの難易度であると言われている理由をまとめました。

計算や作図のスキルが必要

午後の部の試験である書式問題では、計算問題が必ず出題されます。
理系出身の人ならそこまで手こずることなく解けるかもしれませんが、土地家屋調査士を目指す多くは文系出身です。数字に苦手意識のある人にとっては、時間がかかってしまう難所であることは間違いありません。

作図や計算問題は、時間との勝負です。焦ってズレや記入漏れが生じやすいため、時間配分に注意しなければなりません。
電卓を使った移動計算や放射計算に関する問題を何度も解いて、電卓を使うことに慣れておくとよいでしょう。

短い試験時間

試験の鬼門である午後の部の試験時間は、2時間30分です。
一見、そこまで短く感じないかもしれません。しかし、2時間30分の時間内に民法や不動産登記法、土地家屋調査士法に関する択一式を20問解き、土地と建物に関する書式問題を2問解答するとなると時間はあっという間になくなってしまいます。

とくに作図問題は、定規を使って素早く正確に完成させる必要があるため、時間配分を間違えてしまわないように気を付けましょう。

あらかじめ時間配分を考えてから計画的に問題を解き始めることが大切です。
点数の高い図面作成でなるべく点数を稼ぐためにも、試験時間内に全ての問題に触れるようにしましょう。

民法対策に長い時間が必要

午後の部の試験内容にある択一式では、民法にまつわる問題が3問出題されます。
民法は、総則・物権・相続に関してそれぞれ1問ずつ出題されます。法律関連の専門性の高い問題となり出題範囲も広く、内容の理解に時間がかかる難所です。

民法の理解を深めることは、試験合格の最短ルートです。
まずは民法の概念を、時間をかけてでもしっかり理解し基礎を叩き込むことから始めましょう。

午後の部には足切り制度が存在

土地家屋調査士試験における午後の部の択一式と記述式問題には、それぞれ基準点と合格点があります。
基準点とは、いわゆる足切り点のことで、基準点を満たしていないと不合格になります。

土地家屋調査士試験は相対評価で合否が決まるため、毎年基準点と合格点は異なります。例年、合格点は70〜75点、基準点は30〜35点です。試験合格のためには、基準点だけでなく合格点も満たしている必要があります。

合格点と合格率

不動産に関する国家資格のなかでも難易度がトップレベルとされる土地家屋調査士試験。
合格率は、毎年8〜9%で推移しています。
相対評価のため合格点は毎年変化しますが、令和4年の合格点は79.5点と公式発表されています。

最近の合格率のデータをまとめました。

年度 受験者数 合格者数 合格率
令和1年 4,198人 406人 9.7%
令和2年 3,785人 392人 10.4%
令和3年 3,859人 404人 10.5%

午前の試験が免除される資格である「測量士」や「測量士補」と比べると難易度は高いとされています。そのため、効率的に試験に合格するために、測量士の試験に受かってから土地家屋調査士試験に挑戦するという人が多いです。

必要な勉強時間

土地家屋調査士の試験に合格するために必要な学習時間は、独学なら1,000〜1,500時間といわれています。年々受験者数が減少傾向にあるとはいえ、合格率は毎年8〜9%の難関試験のため、片手間程度の試験対策で合格を目指すのは厳しいでしょう。

確実に合格するためには、毎年の出題傾向をつかみ、効率的に学習する必要があります。
そのため仕事をしながら受験しようとお考えの場合は、独学で試験対策するよりも予備校で効率的に勉強する方法がおすすめです。

指導歴の長い講師陣が在籍し、テキストや問題集、過去問が取り揃えられた予備校なら、独学よりも短い勉強時間で合格を目指せるでしょう。

受験する年齢層

受験する年齢層は、40歳前後です。
土地家屋調査士として現役で働いている人の多くは、50代以上といわれており、最も多い年代は定年に近い60代です。

土地家屋調査士は独立しても仕事に困らない職種でもあるので、受験する年齢層は毎年高めです。また、会社員のように定年制度がないため、身体が元気なら何歳まででも働き続けられるメリットがあります。

土地家屋調査士になるためには、年齢や性別、学歴、職歴などの制限はありません。
誰でも自由に受けられる試験のため、挑戦しやすい資格でもあります。

独学の合格は困難

前述したように、土地家屋調査士試験の受験者の年齢層は40歳です。
記憶力もまだ衰えていない現役世代のため、働きながら独学で試験対策をする人も少なくありません。

しかし、試験の出題範囲は非常に幅広く、合格率は毎年8〜9%のハイレベルの国家資格。試験に合格するためには独学の知識と勉強量では難しいでしょう。
実際、土地家屋調査士特有の専門用語や概念を十分に理解していないと問題集をみてもチンプンカンプンです。わからないことをすぐに質問できる相手もいないので、不明点や疑問だけが溜まってしまうでしょう。

働きながら効率的に試験勉強をしたいなら、コストがかかったとしても予備校へ通うことをおすすめします。

合格率を上げる裏技

土地家屋調査士試験に合格するためには、午後の部の試験内容を押さえておく必要があります。

ここでは、土地家屋調査士試験の合格率を上げる裏技についてご紹介します。

午前の部には免除制度も

土地家屋調査士試験には、午前の部の試験が免除される制度が設けられています。免除となるためには、次の条件を満たしていなければなりません。

  • 「測量士」「測量士補」「一級設計士」「二級設計士」のいずれかの資格を持つ
  • 前年度の土地家屋調査士試験の筆記試験に合格している
  • 午前の部の試験合格者と同じレベルの知識や技能を有する者として、法務大臣に認定されている

午前の部の試験内容は、主題範囲が広いうえにテキストや問題集の数があまり出回っていません。午前の部の免除制度を適用するために上記の条件を満たして、午前の部を免除する人がほとんどです。

択一式は正答率が重要

午後の部の択一式は、民法や登記の申請手続き、審査請求の手続きに関する問題が出題されます。全20問で50点満点の配点となるため、確実にミスのないように解いていきましょう。

毎年、択一式の中には難問がいくつか含まれています。わからない問題があっても、その問題に時間をかけすぎないように注意してください。
わかる問題を的確に正解することを優先しましょう。

書式は内容理解が大切

午後の部の書式問題では、土地や建物に関する計算や作図問題が出題されます。

計算問題、申請書の記載、地積測量図・土地所在図の作図、そして読解の4つに分けて学習しましょう。4つの分野に分けて知識を吸収することで、内容が整理されやすく、過去問にもスムーズに対応できるでしょう。

何度も繰り返し問題集を解くことで、少しずつ試験問題に慣れていきます。書式は、問題数が少ない一方で配点が高いため、なるべく減点をなくしておきたいです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

今回は、国家資格のなかでもトップレベルに難しいとされる土地家屋調査士試験について解説しました。

午前の部は測量士などの資格を有する人は受験を免除されるため、合格率を確実に上げるためには午後の部の試験に力を入れましょう。
午後の部は試験時間が短く主題範囲が広いため、いかに効率的に解き進めていくかがポイントです。

土地家屋調査士試験は例年、合格率の低い難関試験ですが、需要が高く将来性のある職業のため、仕事には困らないでしょう。
気になる方は、この機会にぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

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