土地家屋調査士とは?主な業務内容を徹底解説

土地家屋調査士とは?主な業務内容を徹底解説

土地家屋調査士は、国が定める資格を取得した者のみが就ける、不動産登記に関わる職業です。しかし、「実際にどのような仕事をしているのか知らない」という方も多いでしょう。

今回は、土地家屋調査士について、業務内容や待遇などを解説します。

14士業の一つ土地家屋調査士とは

土地家屋調査士とは、不動産の所有者に代わり、不動産登記の申請を行う職業です。土地家屋調査士試験に合格し資格が得られると、仕事を始められます。

土地家屋調査士が不動産の所有者の代わりに行う「不動産登記」とは、土地や建物の所在・面積、所有者の住所・氏名といった情報を記して申請するものです。土地や建物の権利を公にし、「土地や建物の所有者が誰なのか?」をはっきりさせるという役割があります。不動産を所持した場合は、権利の所在を明らかにするために不動産登記が義務づけられており、所有者が必ず行わなければいけません。

しかし、不動産登記の申請には、法律の専門的な知識や土地・建物を正確に測量する技術などが必要です。そのため、国が定めた資格を持った土地家屋調査士が、所有者に代わり担当しています。

司法書士との違い

土地家屋調査士と司法書士は、どちらも不動産登記と関わる職業です。しかし、仕事の内容は異なります。

土地家屋調査士が行う業務は、不動産登記の「表示に関する登記」に記録するための測定・調査や事務です。表示に関する登記には、土地や建物の正確な面積・形状・用途などの結果を記さなければいけないため、実際に土地家屋調査士が現地に赴いて計測を行います。

一方で司法書士は、不動産登記を中心に法律的な手続きを幅広く担当する業務です。会社の登記を担当したり、財産の管理や分け方についての書類作成をサポートしたりなどの業務も行います。

土地家屋調査士の業務内容

土地家屋調査士の業務内容は、主に以下の5つです。

  • 不動産の調査と測量
  • 「表示に関する登記」の申請の代理
  • 「表示に関する登記」の審査請求手続の代理
  • 筆界(ひっかい)特定の手続代理
  • 土地の境界についての争いに関するADR

不動産の調査と測量

土地家屋調査士の重要な仕事は、不動産の調査と測量です。実際に不動産のある現場へ向かい、不動産登記へ正確な数値を記録できるよう調査と測量を行います。

また、登記されている記録と実際の数値が一致しているかの確認も行います。登記情報と実際の物件に共通点やずれがないか、ミリ単位までの正確な測量が必須です。

「表示に関する登記」の申請の代理

表示に関する登記の申請の代理は、土地家屋調査士の資格を持つ者のみが可能です。土地家屋調査士と同様に不動産登記に関わっている司法書士でも、表示に関する登記は申請を代理で行えません。
表示に関する登記は、以下のような場合に行います。

  • 土地の用途や面積が変わった場合(変更登記)
  • 記録の情報が誤っていた場合(更正登記)
  • 土地を切り分ける場合(分筆登記)
  • 土地を合わせる場合(合筆登記)

登記にはさまざまな種類があり、登記の申請方法も決められています。土地家屋調査士は、こうした表示に関する登記の種類や申請方法、申請に必要な書類などについても理解し、代理を務めています。
また、文字情報だけでは説明が不十分な場合に図面の作成を行うのも、土地家屋調査士の仕事です。土地家屋調査士が作成する図面には、土地の測量結果を図を用いて説明した「地積測量図」や、建物の各階ごとの形を示した「各階平面図」などがあります。

「表示に関する登記」の審査請求手続の代理

表示に関する登記の審査請求手続も、不動産所有者の代理で行えます。

審査請求手続とは、登記の申請後に登記所が適切な対応をしてくれなかった場合に、不服申し立てができるというものです。不動産の所有者は、すぐに登記が行われなかったり不当な処分を言い渡されたりした際に、登記所に対して審査請求ができます。

この審査請求手続は本来、不動産の所有者本人が行うものです。しかし土地家屋調査士であれば、所有者の代理を務めることが認められています。

筆界(ひっかい)特定の手続代理

筆界特定の手続きも、不動産所有者の代理で行えます。

筆界特定とは、隣接する土地の範囲が曖昧な場合に、筆界と呼ばれる公的な境界を引いて土地の範囲を特定することです。土地の所有者は、筆界特定が必要だと判断した場合、筆界特定登記官へ筆界を特定するための調査を依頼できます。土地家屋調査士であれば、この筆界特定の手続も代理で行えます。

土地の境界についての争いに関するADR

土地の境界が曖昧な場合、筆界特定の手続きの他に、裁判で筆界を特定する「筆界確定訴訟」という方法もあります。しかし、裁判には時間と費用がかかります。そこで代わりに取れる方法が、裁判外紛争解決手続(ADR)です。

裁判外紛争解決手続とは、土地の所有者同士が裁判をする前に話し合い、訴訟を起こさずに解決を図ることです。土地家屋調査士は、裁判外紛争解決手続を行う際にも、所有者の代理を務められます。

実際に裁判外紛争解決手続を行う際は、認定を受けた土地家屋調査士が弁護士と共同で話し合いに応じます。

土地家屋調査士の気になる待遇は

土地家屋調査士は独立が前提の職業であるため、資格を取得した後は主に以下の3つのケースに分かれます。

  • 個人事務所を開く
  • 法人を設立する
  • 他の土地家屋調査士と合同事務所を開く

土地家屋調査士として働き始めてすぐの頃は、多くの場合、補助者として働きます。補助者として実務経験を積み、行える業務の種類を増やしてキャリアアップしていくのが一般的です。10年近く働くと、さらなるキャリアアップのために独立を考える人が多くなります。
土地家屋調査士が企業に属して従業員として働くことは、基本的にありません。なぜなら土地家屋調査士は、公正な調査や測定を行わなければいけない立場だからです。
土地家屋調査士が営利を目的とした企業に属して働いてしまうと、利益のために企業に有利な判断をしてしまう恐れがあります。
また、土地家屋調査士が企業に属して働き、その企業が報酬を得ると、企業は罰則を受けることになります。土地家屋調査士として働く場合は企業に就職できないため、独立の道しかありません。
ただし土地家屋調査士は、他のフリーランスの職業とは違い、独立して仕事が全くなくなる可能性は低いです。不動産を所有する人がいる以上、不動産登記は必ず行わなければならず、土地家屋調査士の仕事も発生し続けます。そのため、土地家屋調査士は長く働ける将来性のある職業です。

こちらの記事では、土地家屋調査士の補助者の重要性、業務範囲を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
土地家屋調査士の補助者とは?業務内容やメリットを紹介

平均年収は500万~600万円

土地家屋調査士の平均年収は、500万~600万円と言われています。勤務地や勤続年数によって差はありますが、おおむねこの範囲です。しかし、あくまで平均の数値であり、年収の幅は300万円〜1000万円と広いので注意しましょう。

実務経験が少ないうちは年収も低いですが、3年ほど働いて確定測量という業務が行えるようになると、年収は500万円程度に上がります。さらに経験を積み、役職に就いて教育やマネジメントを担当するようになると、年収700〜1000万円以上稼ぐことも可能です。

土地家屋調査士になるまでのSTEP

土地家屋調査士になるまでのSTEPは、以下の通りです。

  1. 調査士試験の受験
  2. 土地家屋調査士に登録

調査士試験の受験

土地家屋調査士になるには、まず土地家屋調査士資格の取得が必要です。資格を取得するために、調査士試験に合格しなければいけません。
調査士試験は、受験するために特別な資格や条件は必要なく、誰でも受験できます。平均1~3年ほど勉強して合格する人が多いです。

土地家屋調査士に登録

調査士試験に合格した後は、各都道府県の土地家屋調査士に登録をします。登録が完了すると、土地家屋調査士として働けるようになります。

登録の際は、登録手数料2万5,000円が必要です。

土地家屋調査士に向いている人

土地家屋調査士に向いているのは、以下のような人です。

  • コミュニケーション能力の高い人
  • 体力に自信がある人
  • 数字やデータに強い人

コミュニケーション能力の高い人

コミュニケーション能力はどのような仕事でも重視されますが、土地家屋調査士はとくに重要です。土地家屋調査士は、主に以下のような場面で高いコミュニケーション能力が求められます。

  • 不動産の所有者から代理を依頼される時
  • 確定測量やADRを行う時
  • 登記を行う時

土地家屋調査士にとってのお客様である不動産の所有者とは、やり取りする機会がやはり多いです。また、確定測量やADRを行う際も、隣接する土地の所有者や弁護士など、多くの関係者とのやり取りが発生します。登記を行う際には、個人ではなく不動産会社から依頼されるケースもあり、企業を相手としたコミュニケーション能力も必要です。

体力に自信がある人

土地家屋調査士は、現地に行って測量を行うフィールドワークが多い仕事です。1日に多数の依頼をこなす場合もあり、体力を使います。

また、確定測量の際には「確定杭」というコンクリートの杭を地面に押し入れる作業があり、かなりの力が必要です。1人で行う作業ではありませんが、体力はあった方がよいでしょう。

数字やデータに強い人

土地や建物の測量・調査では、正確な数字を出さなくてはいけません。記録する際にも、正確かつ細かなデータの処理が必要です。そのため、土地家屋調査士は数字やデータに強い人が向いています。

また、土地や建物の測量にはミリ単位でのデータが必要です。少しでも数値が間違っていると、大問題となる可能性もあります。

測量・調査やデータの処理は、何度も経験するうちに慣れるものです。しかし、もともと強い方が適性はあると言えます。

「土地家屋調査士はやめておけ」という声も

「土地家屋調査士はやめておけ」という声もあります。主な理由は、以下の4つです。

  • 柔軟な勤務時間への対応が必要
  • 屋外の作業が多い
  • 市場の変動への柔軟な対応が必要
  • 繁忙期とそうでない時期の仕事量の差が大きい

土地家屋調査士は個人からの依頼が多く、土日など休日の出勤や、仕事終わりの夜の時間に立ち会いを求められるケースが多いです。そのため柔軟な勤務時間への対応が必要ですが、勤務時間を自由に調整しやすいというメリットもあります。
また、土地家屋調査士は現地での作業がメインのため、屋外の作業が多いです。しかし、見知らぬ土地へ行く楽しさもあり、体も鍛えられます。
市場の変動や繁忙期による仕事量の変化への、柔軟な対応力も必要です。土地家屋調査士の仕事は、景気が良い時や特定の時期に集中することがあります。しかし、仕事が集中するのは一時的であるため、人員を増やさずに乗り越えなくてはいけません。このような場合、仕事量の変化への柔軟な対応が求められます。ただ、さまざまな仕事に柔軟に対応することで、自分の能力やスキルの成長に繋がります。多くの経験を積めることもメリットです。
土地家屋調査士は大変な部分も多いですが、そのぶん成長する機会も多くあります。

土地家屋調査士とは将来性のある職業

土地家屋調査士とはどのような職業で、どのような仕事をするのかについて解説しました。

土地家屋調査士の仕事は大変な面もありますが、成長する機会も多く長く働ける職業です。独立も目指せるので、将来的に独立したい方にも向いています。

手に職をつけ、やりがいのある仕事をしたい方は、ぜひこの記事を参考に、土地家屋調査士という職業を検討してみてはいかがでしょうか。

当サイトでは土地調査士の資格取得を考えている方のために、おすすめの土地調査士の予備校をランキング形式で紹介しています。
ぜひチェックしてみてください。