
土地家屋調査士試験は、不動産登記や土地測量の専門知識が問われる難関試験です。
合格率が低いことでも知られ、対策には戦略的なアプローチが求められます。
本記事では、試験の免除制度を活用する方法から、多肢択一式と記述式の効果的な対策、スピードを意識した問題解法のポイントまで、合格に向けた具体的な方法を解説します。
Contents
土地家屋調査士試験の受験者数と合格率
土地家屋調査士試験は、不動産登記の専門家としての役割を果たすために必要な資格試験であり、その難易度から「難関試験」として知られています。
ここ数年の試験の受験者数と合格率を見てみると、その傾向が一層はっきりと見えてきます。
令和5年度(2023年)の試験では、受験者数は4,429人で、そのうち合格者は428人、合格率は9.66%でした。
この合格率は、令和4年度(2022年)の9.62%からわずかに上昇しています。
さらに遡ると、令和3年度(2021年)の合格率は10.47%、令和2年度(2020年)も10.36%と、合格率が10%を超える年もありましたが、例年の合格率はおおむね9%前後で推移しています。
受験者数と合格率の推移を以下の表にまとめました。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
令和5年度 | 4,429人 | 428人 | 9.66% |
令和4年度 | 4,404人 | 424人 | 9.62% |
令和3年度 | 3,859人 | 404人 | 10.47% |
令和2年度 | 3,785人 | 392人 | 10.36% |
令和元年度 | 4,198人 | 406人 | 9.68% |
平成30年度 | 4,380人 | 418人 | 9.54% |
平成29年度 | 4,600人 | 400人 | 8.69% |
平成28年度 | 4,506人 | 402人 | 8.92% |
平成27年度 | 4,568人 | 403人 | 8.82% |
平成26年度 | 4,617人 | 407人 | 8.82% |
このように、土地家屋調査士試験の合格率は、年によって若干の変動はあるものの、全体的には10%前後で安定しています。
特に近年では、受験者数の減少が合格率の変動に影響を与えていることが分かります。
合格者数は毎年約400名前後で維持されている一方で、受験者数が減少しているため、その分合格率が上昇する傾向が見られます。
合格率の変動要因には、試験の難易度や問題内容の変更、または受験者の学習対策や準備状況など、さまざまな要因が影響していると考えられます。
しかし、いずれにせよ、土地家屋調査士試験は例年9%前後の合格率を維持しており、その高いハードルを越えるためにはしっかりとした準備が求められます。
こちらの記事では、土地家屋調査士試験の合格率を紹介しています。ぜひ参考にしてみてください。
土地家屋調査士試験の合格率は?試験の内容や対策も紹介
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由
土地家屋調査士試験は、その合格率が毎年10%前後で推移していることからも分かる通り、非常に難易度の高い試験です。
その難しさの背景には、いくつかの要因が存在します。以下に、主な3つの理由を詳しく解説します。
試験の対策が難しいから
土地家屋調査士試験の対策が難しい理由の一つは、その出題範囲の広さにあります。
試験は、土地や建物の調査および測量に関する知識を問う「択一式問題」と、実務的な応用力が求められる「記述式問題」の2種類に分かれています。
特に記述式問題は、不動産登記法や測量法などの法律知識に加え、実際の現場での対応力も試されるため、単なる暗記ではなく、深い理解と実務的な知識が必要とされます。
さらに、問題の傾向が毎年変わるため、特定の過去問に依存した学習では不十分です。
最新の法律改正や判例の変化にも対応しなければならず、受験者は広範囲にわたる知識を効率的に習得するための高度な学習計画を立てる必要があります。
これが、受験勉強の難しさを増す大きな要因となっています。
足切りの点数が高めに設定されているから
土地家屋調査士試験には、「基準点」と呼ばれる足切り点が設定されており、これを超えないと合格者として認められません。
基準点は、択一式および記述式それぞれに設けられており、特に択一式の基準点は平均点よりも高めに設定される傾向があります。
具体的には、択一式では受験者の約半数が基準点に達せずに脱落してしまうため、この段階で試験の難易度がかなり高いことが伺えます。
基準点は受験者全体の成績分布や問題の難易度を考慮して設定されるため、特に受験者の成績が低調な年や問題が難解な年には、相対的に高くなることもあります。
したがって、足切り点を超えるためには、少なくとも受験者の平均以上の成績を収める必要があり、それだけでもかなりの準備が求められます。
制限時間に余裕が無いから
土地家屋調査士試験のもう一つの難しさは、制限時間の厳しさです。
択一式問題では限られた時間内に50問以上を解く必要があり、正確さだけでなくスピードも重要です。
各問題は専門的な知識を要するものが多く、慎重に考慮しながら迅速に回答を出すスキルが求められます。
これにより、時間管理の能力が試験合格の大きな鍵となります。
さらに、記述式問題では、与えられた課題を図面の作成や詳細な記述を通じて解決する必要があります。
これには法的知識だけでなく、実務経験に基づいた迅速な判断力と正確さが求められます。
特に、課題に対して適切なアプローチを短時間で決定し、ミスなく仕上げることができなければ、時間切れになってしまうリスクが高まります。
このように、制限時間の厳しさが試験全体の難易度をさらに押し上げていると言えるでしょう。
土地家屋調査士試験の勉強時間
土地家屋調査士試験に合格するためには、1,000〜1,500時間の学習時間が目安とされています。
特に初めて受験する場合や関連知識が少ない場合は、1,500時間程度の学習が必要となり、週に約30時間、毎日4〜5時間の勉強が求められます。効率的な学習計画を立てることが重要です。
学習時間の内訳として、択一式対策には500〜700時間、法令の知識を深めることが求められます。
記述式対策には600〜800時間が必要で、実務的な応用力を養うための演習や過去問題の分析が重要です。
さらに、試験直前には200〜300時間をかけて模擬試験や総復習を行い、弱点を補強することが推奨されます。
勉強時間を効率よく使うためには、毎日の学習時間を確保し、進捗を確認しながら学習計画を柔軟に調整することが必要です。
継続的な学習と質の高い学習法が、合格への鍵となります。
土地家屋調査士試験の内容
土地家屋調査士試験は、法律や実務に関する知識を問う筆記試験と、知識の応用力やコミュニケーション能力を評価する口述試験で構成されています。
以下に、各試験の詳細な内容を説明します。
試験の科目
土地家屋調査士試験の主な科目は、民法、不動産登記法、測量法、土地家屋調査士法、行政法規などです。
特に民法と不動産登記法は出題数が多く、これらの知識は合否に直結します。
測量法では実務に直結した測量の知識が求められ、土地家屋調査士法や行政法規は職務に関する基本的な理解を問われます。
出題の形式
筆記試験
筆記試験は、択一式と記述式の2部構成です。
まず午前の部では、択一式の問題が出題され、全体で35〜40問程度が課されます。
出題範囲は民法、不動産登記法、測量法などで、基礎的な知識とその応用が求められます。
午後の部では、記述式の問題が2〜3問出題され、主に不動産登記法に関する問題や、実務に即した測量や図面作成などの問題が出題されます。
記述式では、単なる知識の有無だけでなく、状況に応じた判断力や正確性が重要視されます。
口述試験
筆記試験に合格すると、次に口述試験があります。
口述試験は、面接形式で実施され、主に土地家屋調査士法や不動産登記法に関する基礎的な理解、実務上の判断力、コミュニケーション能力が評価されます。
質問は、筆記試験で出題された内容に関連したものや、日常の業務に必要な法的な問題について答えることが求められます。
合格者の多くが、ここでの対応力を高く評価されています。
なお、土地家屋調査士の試験では、実務経験を持つ受験者などは午前の部の筆記試験が免除される場合もあります。
そのため、免除を受けるための資格要件を事前に確認し、試験対策を効率的に行うことが重要です。
筆記試験の基準点と合格点
土地家屋調査士試験の筆記試験では、多肢択一式と記述式の2つの形式で実施され、それぞれに基準点が設定されています。
基準点は、受験者が試験を突破するために最低限必要な得点ラインであり、これを超えなければ合格とはなりません。
基準点の上に「合格点」が存在し、筆記試験全体の得点が合格点に達した場合に初めて筆記試験を通過できます。
以下、各形式の詳細について解説します。
多肢択一式
多肢択一式は、土地家屋調査士試験の午前の部で行われる形式です。
試験問題は、不動産登記法、民法、測量法、土地家屋調査士法、行政法規などの分野から出題されます。
基準点は、多肢択一式の問題の難易度や受験者の平均得点に基づいて決まりますが、近年の基準点は30〜35点程度で推移しています。
例えば、令和5年度の多肢択一式の基準点は35.0点でした。
一方、令和4年度は37.5点、令和3年度は32.5点と変動しています。
この基準点は、全体の受験者の約半数が通過できるよう設定されています。
記述式
記述式は、土地家屋調査士試験の午後の部で行われる形式で、より実務に近い問題が出題されます。
記述式では、不動産登記に関する問題や図面作成など、具体的なケースを想定した問題が出されます。
基準点はその年の試験の難易度によって異なり、一般的には30点以上が求められます。
例えば、令和5年度の記述式基準点は29.0点、令和4年度は34.0点、令和3年度は30.5点でした。
基準点を超えても、合格点に到達しなければ試験を突破することはできません。
近年のデータを見ると、合格点は基準点より10点以上高く設定されることが多く、基準点を超えただけではなく、さらに得点を重ねる必要があります。
以下の表に、ここ数年の多肢択一式と記述式の基準点および合格点をまとめました。
年度 | 多肢択一式基準点 | 記述式基準点 | 合格点 |
令和5年度 | 35.0点 | 29.0点 | 72.0点 |
令和4年度 | 37.5点 | 34.0点 | 79.5点 |
令和3年度 | 32.5点 | 30.5点 | 73.5点 |
令和2年度 | 32.5点 | 30.0点 | 71.0点 |
令和元年度 | 32.5点 | 33.0点 | 76.5点 |
これらのデータからわかるように、合格点を達成するためには、基準点を超えた上で、さらに高得点を目指す必要があります。
土地家屋調査士試験の合格には、正確な知識と緻密な対策が不可欠です。
土地家屋調査士試験の対策
土地家屋調査士試験は、その難易度の高さから十分な対策が必要です。
特に、試験の内容を理解し、効果的に準備を進めるためには、計画的な勉強と戦略が欠かせません。
ここでは、試験対策のポイントとして、
「一部試験の免除を受ける」
「多肢択一式の問題に注力する」
「記述式では理解を重視する」
「問題を解くスピードを意識する」
の4つの観点から具体的な対策方法を解説します。
一部試験の免除を受ける
土地家屋調査士試験には、一部試験の免除制度があります。
これをうまく活用することで、試験準備の負担を大幅に軽減できます。
免除対象となるのは、過去に関連する試験や資格を取得している場合です。
たとえば、測量士補の資格を持っていると、多肢択一式の試験部分が免除されることがあります。
この制度を利用することで、試験の範囲を狭めることができ、その分、残りの科目により集中して取り組むことが可能になります。
免除を受けるためには、申請手続きや必要書類の提出が求められるため、事前に制度について詳細に調べ、自分が該当する条件を確認することが重要です。
また、免除を受けられるかどうかだけでなく、受験する際の科目の構成についても理解し、効率的な学習計画を立てましょう。
多肢択一式の問題に注力する
多肢択一式の試験は、土地家屋調査士試験の中でも特に重要な部分です。
この形式の問題は、法律や登記に関する知識を広く浅く問うものであり、全体の合格率に大きく影響します。
試験対策としては、まずはこの形式の問題に重点を置くことが必要です。
効果的な対策には、過去問の徹底的な演習が含まれます。
過去問を解くことで、出題傾向や自分の弱点を把握しやすくなります。
また、多肢択一式では選択肢の中から正解を選ぶため、類似問題を多く解くことが重要です。
選択肢の中で、最も適切なものを見極める力を養うために、問題の解答に関する知識だけでなく、選択肢の中から不正解を選び取る力も身につける必要があります。
さらに、多肢択一式の問題は時間との戦いでもあります。
制限時間内に全ての問題を解き切るためには、効率的な解答方法を確立することが大切です。
試験対策としては、タイムトライアル形式で模擬試験を行い、実際の試験に近い環境での練習を繰り返すことが効果的です。
記述式では理解を重視する
記述式の試験は、多肢択一式と比較して深い理解が求められます。
記述式の問題は、実務に即した具体的なケースや詳細な解答を求められるため、単なる暗記では対応できません。
理解を重視することで、問題に対する適切な解答を導き出すことが可能になります。
記述式試験の対策には、まず基本的な知識の確実な習得が不可欠です。
法律や規則、登記手続きについての詳細な理解を深めるためには、教科書や参考書を利用し、基本からしっかりと学習しましょう。
さらに、具体的な問題形式に慣れるために、過去問を解いたり、解答例を参考にしたりすることが有効です。
また、記述式の問題には具体的な回答を求められるため、答え方のコツや解答の書き方をマスターすることも重要です。
模擬試験を通じて、自分の解答がどのように評価されるのかを確認し、必要な改善点を見つけていくことがポイントです。
正確かつ論理的な回答を心がけ、実務に即した問題解決能力を養いましょう。
問題を解くスピードを意識する
土地家屋調査士試験では、試験時間内に全ての問題を解答するためのスピードも重要な要素です。
特に、多肢択一式の問題は数が多いため、時間内に全て解答するためには迅速な判断力が求められます。
問題を解くスピードを向上させるためには、普段からの訓練が必要です。
模擬試験やタイムトライアルを行い、限られた時間内でどれだけ正確に問題を解けるかを実践的に練習します。
時間配分を意識し、各問題にかける時間を決めて取り組むことが効果的です。
例えば、難しい問題に時間をかけすぎないようにし、まずは簡単な問題から確実に解答していく方法を採ると良いでしょう。
また、問題を解くスピードを上げるためには、問題に対する慣れも重要です。
過去問や模擬試験を繰り返すことで、問題形式に対する理解が深まり、効率的に解答できるようになります。
試験本番では、冷静に問題を読み、解答のスピードを意識しながら進めることが合格への近道です。
これらの対策を実施することで、土地家屋調査士試験の難易度の高い部分にも対応しやすくなります。
しっかりとした準備と戦略を立てることで、試験合格への道を切り開いていきましょう。
土地家屋調査士の試験に合格するための対策
土地家屋調査士試験は、多肢択一式と記述式という異なる形式の試験に対する対策が重要です。
試験免除の可能性を確認し、多肢択一式では基礎的な法律知識を網羅し、記述式では実務的な理解を深めることが求められます。
また、時間管理能力も試験合格に向けて重要な要素となります。
徹底的な準備と計画的な学習が、合格への道を切り開くでしょう。
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