【土地家屋調査士試験】不動産登記法の勉強方法を徹底解説!

土地家屋調査士の試験で問題の多くを占めるのが不動産登記法です。不動産登記法への理解の進度が合格を左右しますが、不動産登記法だけを対策すればいいというわけではありません。不動産登記法の基礎となる民法などの学習も重要です。

この記事では、不動産登記法への知識を深めるための勉強方法について詳しく解説します。
また、土地家屋調査士試験が難しいと言われている理由や、具体的な業務内容もあわせてお伝えしています。

土地家屋調査士として活躍できるよう、効率よく不動産登記法を理解し合格を目指しましょう。

土地家屋調査士とは

土地家屋調査士とは、不動産の表題部の登記申請や、それに関する土地や建物の測量・調査を専門的におこなう資格です。
土地を均等に分けたり、複数の土地を一つにまとめたり、建物や土地の価値を第三者目線で正確に、また公平に測量・調査します。

これらの業務は土地家屋調査士の独占業務で、司法書士や弁護士が成り代わることはできません。専門知識を擁し国家試験を突破した、日本土地家屋調査士連合会に登録した人だけがおこなえる業務です。

近年の少子高齢化が進み、相続登記や空き家の活用の需要が増えると予想されています。
そのため、土地家屋調査士が活躍する場が広がり、将来性の高い資格としても注目されています。

土地家屋調査士試験における不動産登記法の占める割合

土地家屋調査士は不動産の表題部の登記申請をおこなう資格であるため、不動産登記法に関する問題の割合は多くなります。

択一式(50点) 民法 3問(7.5点)
不動産登記法 16問(40点)

 

土地家屋調査士法 1問(2.5点)
記述式(50点) 土地 1問(25点)
建物 1問(25点)

択一式は3つの法令科目から20問出題されますが、不動産登記法に関する問題が8割を占めます。
また、記述式は、不動産登記法に則り実際の登記申請で必要となる座標の計算や図面を作成する応用問題です。

土地家屋調査士の試験で出題される問題の多くは、不動産登記法に関するものということがわかります。
したがって、土地家屋調査士の資格取得に向けた勉強では、不動産登記法をしっかり対策する必要があるでしょう。

土地家屋調査士試験における不動産登記法の勉強方法とは

土地家屋調査士試験は主に不動産登記法に関する問題が多くを占めます。そのため、不動産登記法だけ対策しておけばいいと思うかもしれません。しかし、その礎となるところから理解しなければ、不動産登記法の本質まで理解したとは言い難く、合格は難しいでしょう。
ここからは土地家屋調査士試験の合格に向けて、効率の良い勉強方法についてお伝えしていきます。

民法の学習から始める

不動産登記法について理解を深めるためには、民法の学習から始めるのがおすすめです。そもそも不動産登記法は民法をベースに作られているからです。

不動産登記法第1条には、「不動産の登記制度を定めることにより、不動産取引の安全と円滑をはかる」と、不動産登記の義務について書かれています。なぜこのような義務が発生するのかは、民法第177条で次のようにあります。
「不動産に関する物権の得喪は、登記をしなければ第三者に対抗することができない。」

簡単に言うと、不動産登記の義務が不動産登記法で定められ、不動産登記が必要な理由が民法で定められているということです。

土地家屋調査士の試験に向けた学習は、不動産登記法と密接にかかわる民法からはじめると理解しやすいでしょう。

過去問を解いて理解を深める

過去に出題された問題を解くことは、一番の試験対策になります。
過去問を通して出題の傾向やボリューム感などを把握できるでしょう
また、テキストや講義から得た知識が定着しているのかを確認できます。自分が苦手とする問題や足りない知識が分かるので、重点的に対策すべきことが明確になるでしょう。

過去問を説き始めた当初は、解けなくて当然です。しかし、考えて出した答えが間違っていても、その都度知識を上書きすれば理解が深まっていきます。

法務局に行ってみる

登記事項証明書や公図がどんなものなのか実際に触れてみるのもおすすめです。
多少の手数料がかかりますが、管轄の法務局に出向き、自分が住んでいる住所の登記事項証明書や公図を取得してみるのもよいでしょう
実際の書類を手に取ってみると実感がわきますし、実際に住んでいる住所の登記事項を確認することで、不動産登記の重要性や内容への理解が深まります。

窓口での申請に抵抗がある場合は、タッチパネル式の証明書発行請求機やインターネットからも簡単に申請できます。
実際の記事項証明書や公図に触れる機会として活用し、土地家屋調査士の業務に対して実感が持てると、学習へのモチベーションアップにもつながるでしょう。

論点まできちんと理解する

過去問を繰り返し解く際は、正解の答えを覚えるのではなく、論点まできちんと理解することが重要です。
1問に設定された5つの選択肢の正誤の理由まで正確に説明できなければ、問題を理解したとは言えません。暗記するように過去問を解いても、違う問われ方をしたときに答えられない可能性もあります。
なぜ答えがその選択肢が正解なのかだけでなく、何を問われているのか論点まで理解し、自信をもって答えられるようにしておきましょう。

土地家屋調査士の試験は相対評価のため、択一式で確実に点数を稼いでおかなければ、足切りにされてしまいます。とくに配点の大きい不動産登記法の対策は不可欠です。

問題の論点を理解し、深いところまで知識を落とし込めれば、おのずと記述式への適応力も高まるため、効率のよい学習となるでしょう。

こちらの記事では、試験対策として勉強に取り組みたい方のため、不動産登記の種類や勉強方法などについて解説しています。あわせてご覧ください。
土地家屋調査士試験の不動産登記法詳細と勉強方法をチェック

土地家屋調査士試験の難易度

土地家屋調査士試験の合格率はここ数年9%~10%で推移しているため、簡単に合格できる資格ではないことがわかります。

また、合格を目指すのに必要な学習時間の目安は1,000時間と言われています。仕事と両立しながら1日3時間を学習に充てても、1年かかる計算です。
このように、土地家屋調査士試験の合格率や学習時間をみてみると、難易度は高めと言えるでしょう。

年度 受験者数 合格数 合格率
令和元年 4,198人 406人 9.67%
令和2年 3,785人 392人 10.36%
令和3年 3,859人 404人 10.47%
令和4年 4,404人 424人 10.38%
令和5年 4,429人 428人 9.66%

(参照: 日本全国あなたの近くの 土地家屋調査士

土地家屋調査士試験が難しいといわれる理由

土地家屋調査士試験の合格率や学習時間から、難易度が高いということがわかりましたが、なぜそれほどまでに合格率が低く、多くの学習時間が必要となるのでしょうか。
土地家屋調査士試験が難しいと言われる具体的な理由を見ていきましょう。

細かい計算や図面作成が必要

土地家屋調査士の試験は、事例をもとに自分で作図する問題も出題されます。
より実務に近い形式の問題であるために、土地家屋調査士試験は難しいと感じる方は多いでしょう。
作図には、三角関数や複素数など複雑な計算が必要です。計算機は使用できますが、計算をもとに作図をおこなうため、手早く計算しなければなりません。
また、時間が限られる中、正確さや丁寧さも求められます。作図のちょっとしたズレや記入漏れなど、細かい部分で減点されるため、非常に神経を使う作業になります。

過去問で図面作成をする際、作図だけでなく計算機の機能などをうまく使えるよう繰り返し練習しておきましょう。

試験時間が短い

まず、土地家屋調査士試験の時間と内容を見てみましょう。

午前の部 2時間

(午前9時30分~午前11時30分)

・択一式:平面測量10問

・記述式:作図1問

午後の部 2時間半

(午後1時00分~午後3時30分)

・択一式:不動産登記法・民法他から20問

・記述式:土地・建物から各1問(作図)

土地家屋調査士試験では、午前の部に比べて午後の部の出題ボリュームが大きく、1問にかけられる時間が短くペース配分が難しいと言われています。
時間が足りず、見直しができなかったり、作図問題を完成させられなかったりする受験者も多いようです。
土地家屋調査士試験では理解度はもちろんのこと、問題を解くスピードも重要です。

過去問を解く際は、全体の流れをつかみ、ペース配分を意識するようにしましょう。

“基準点”と“合格点”を超えなければならない

土地家屋調査士試験の合格は、「基準点」と「合格点」をクリアする必要があります。

土地家屋調査士の試験では択一式・記述式ともに基準点が設定されており、まずはその基準点をそれぞれ満たす必要があります。どちらか一方が基準点に満たなければ合格とはなりません。
また、土地家屋調査士試験の合格者は毎年上位400人程度で調整されているため、合格点は毎年異なります。というのも、土地家屋調査士試験は相対評価となっており、合格点が何点なのかは合格者が発表されるまでわかりません。昨年度の合格点を満たしているからと言って、その点数で今年も合格できるとは限らないということです。そのため合格者はできるだけ高得点を目指す必要があります。
このように、足切りがあることや合格点に確実性がないことも、土地家屋調査士試験が難しいと言われる要因となっています。

土地家屋調査士の主な仕事内容

本記事の冒頭で不動産の表示部の登記は土地家屋調査士の独占業務とお伝えしました。ここではさらに踏み込んで、実際にどういう仕事なのか具体的に解説していきます。

不動産の表示に関する登記に必要な調査および測量

不動産登記には「権利部」と「表示部」があり、土地家屋調査士は「表示部」の登記に関する業務をおこなえる専門的な資格です。
表示部とは土地や建物の所在地や構造、面積などの情報を示すもので、不動産を取得した際には必ず申請しなければなりません。このような登記に必要な土地や建物の現状を、調査・測量するのが、土地家屋調査士の主な仕事です。
また、相続などで生じる土地の分筆や、隣地との境界トラブルの際にも土地家屋調査士は必要不可欠な存在です。
正しい情報を登記に反映させるためにも、公図や登記情報を現状と照らし合わせ、測量をおこない筆界を特定します。

不動産の表示に関する登記の申請手続の代理

不動産登記は、不動産を所有するすべての人に義務づけられています。しかし、不動産登記の申請手続きは複雑で、必要書類を取り寄せたり、申請書の書式を理解したりするなど手間がかかります。
そのため、不動産の表示部の登記申請は、土地家屋調査士が代理申請するのが一般的です。

不動産登記法に基づき、依頼者に代わって土地や建物を調査・測量から登記申請までワンス
トップで手続きを完了させることができます。

不動産の表示に関する登記の審査請求の手続の代理

審査請求とは、登記に関する処分が不当だと感じた際、再審査を求める手続きのことを言います。

  • 申請書を間違いなく正しく記入したにもかかわらず、法務局に書類に不備があるとみなされ登記申請が通らなかった
  • 申請内容に間違いがあり修正の申請をしたのに、修正が認められなかった

土地家屋調査士は、このように登記内容に納得できない場合、その判断が正しいのか再度確認してもらうために依頼者に代わって管轄の法務局に申請します。

筆界特定の手続きの代理

筆界特定の手続とは、土地の所有者の申請によって、筆界特定登記官が筆界調査員に意見を求め筆界を特定する手続きのことです。これを筆界特定制度と言い、土地家屋調査士は筆界特定の手続を代理申請することができます。
また、多くの土地家屋調査士が、筆界調査員として活躍しています。

土地の筆界が明らかでないことに起因する民間紛争解決手続についての代理

土地家屋調査士特別研修・考査を通過し、法務大臣の認証を受けた「ADR認定土地家屋調査士」は、民間紛争解決手続の代理申請業務がおこなえます。
通常、土地家屋調査士は事実に基づき境界を特定することはできても、紛争といった法的な領域に立ち入ることができません。

しかし、ADR認定土地家屋調査士は弁護士と対等に協力し、直接的に境界紛争の解決に貢献できます。

土地家屋調査士と他資格者との違い

不動産登記では、司法書士や測量士もなじみの深い資格です。ここからは、不動産登記に関連する2つの資格との違いについて解説していきます。

司法書士

司法書士と土地家屋調査士はどちらも不動産登記の代理申請がおこなえる資格ですが、業務内容が異なります。
土地家屋調査士の業務は不動産登記において「表示部」の登記とそれに関する測量・調査です。
一方司法書士の業務は、不動産登記の「権利部」の登記です。また、司法書士は不動産だけでなく、会社の設立や相続などさまざまな分野の書類を作成したり、手続きの代理申請をおこなったりします。

土地家屋調査士は、土地や建物を正しく記録する専門家、司法書士は法的な手続きや書類を作成する専門家と言えるでしょう。

測量士

土地家屋調査士も測量士も「測量」をおこなう資格ですが、2つの資格には大きな違いがあります。
それは、測量をおこなう目的です。

土地家屋調査士が測量をおこなう目的は、不動産の登記を申請するためです。不動産登記は、主に不動産の持ち主や民間の企業からの依頼でおこないます。
一方測量士は、国や自治体から依頼を受け、公共事業に関する測量をおこないます。

この違いは、土地家屋調査士は法務省、測量士は国土交通省とそれぞれを管轄する省庁が異なることからも明確です。

また必要とされるスキルにも違いがみられます。測量士は、土地を正確に測る技術が必要です。土地家屋調査士にとっても測量技術は重要ですが、それに加え、民法や不動産登記法など法的な知識も必要です。

ちなみに、測量士・測量士補の有資格者は、土地家屋調査士試験の午後の部が免除されるという優遇措置があります。

土地家屋調査士試験では不動産登記法の理解が合格のカギ!

土地家屋調査士試験では、合格までにおよそ1,000時間の学習が必要と言われています。とくに、土地家屋調査士試験の問題で多くの割合を占める不動産登記法への理解が、合格のカギとなるでしょう。効率よく学習を進めるためには、不動産登記法の基礎となる民法からはじめることが重要です。

また、効率重視で合格を目指すのであれば、予備校の利用がおすすめです。予備校では学習の順序を踏まえたカリキュラムが組まれているため、解釈が難しい法律関係の学習もスムーズに進むでしょう。
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