土地家屋調査士の仕事が楽しい理由と将来性を解説

土地家屋調査士という仕事に、みなさんはどのようなイメージをお持ちでしょうか。
「測量や図面作成など、地味な作業が多いのでは?」「法律の知識が必要で難しそう」といった印象を抱いている方もいるかもしれません。

しかし実は、土地家屋調査士の仕事には大きなやりがいや楽しさがあり、将来的にも需要の増加が期待されています。
不動産に関わる手続きや境界確定の場面で欠かせない専門家として、多方面から注目を集めているのです。

本記事では、土地家屋調査士として働くことの魅力や、実際に感じる楽しさの理由を深堀りしていきます。
さらに、土地家屋調査士として働く際に経験する苦労や、その職業の将来性、資格を目指すうえでのおすすめルートや働き方などについても解説。

土地家屋調査士をしていて楽しいと感じることは?

土地家屋調査士として働くうえで、「やりがい」や「楽しさ」を感じる場面は多岐にわたります。

ここでは、実際に土地家屋調査士の方々が口にする、代表的な“楽しい”理由をいくつかピックアップしてみましょう。

人に喜んでもらえること

土地の境界や登記に関する問題は、多くの方にとって非常に重要かつデリケートな課題です。
特に、不動産の売買や相続、分筆・合筆の手続きなどは、日常ではあまり馴染みがなく、どのように対処したらよいか分からない方も多いでしょう。
そこで登場するのが土地家屋調査士です。

土地家屋調査士が現地を測量したり、法務局への登記を手配したりすることで、クライアントの不安が解消されると、心から喜んでもらえる場面が多々あります。
「自分の仕事が、誰かの大きな問題解決につながっている」と実感できるのは、非常にやりがいを感じる瞬間です。

さまざまな場所に行けること

土地家屋調査士の仕事は、デスクワークだけではありません。
実際の現場に赴き、土地を測量し、境界標の設置や確認を行うなど、フィールドワーク的な要素が多いのも特徴です。
都市部だけでなく山間部や海辺、農地など、仕事の依頼次第で多種多様なロケーションに出向くことがあるため、「外出が多くて楽しい」という声も少なくありません。

移動や現地調査に慣れてくると、ちょっとした旅行気分で各地を巡れると感じる人もいます。
同じような職場にずっと居続けるデスクワークよりも、外の空気を吸いながら仕事ができるのは魅力と言えるでしょう。

独立後はライバルが少ないこと

行政書士や司法書士など、他の士業と比べて土地家屋調査士の数はそれほど多くありません。
そのため、地域や分野によっては、土地家屋調査士として独立開業した際に「ライバルが少ない」と感じる方が多いようです。

もちろん、まったく競争がないわけではありませんが、需要に対して供給が追いついていないエリアでは、仕事を獲得しやすい状況が生まれます。
「大変な受験勉強を乗り越えたら、独立後は比較的安定した顧客を得やすい」といった点が、楽しく仕事を続けられるモチベーションになるようです。

地図に残る仕事ができること

土地家屋調査士の仕事の結果は、国の公図や地籍図などに反映される場合があります。
これらは法務局に保管され、将来的にも多くの人が参照する公的な資料となるため、いわば「地図に名前こそ載らないが、自分の仕事の成果が残る」形になるわけです。

自分が手掛けた境界確定や測量結果が、後々まで地域の基盤として機能するのは、大きな達成感や誇りを感じるポイントです。
まさに“地図に刻まれる”仕事と言っても過言ではなく、その専門性を活かして社会に貢献できる喜びがあります。

高収入を目指せること

土地家屋調査士の仕事は、士業の中でも専門性が高い領域に分類されます。
独占業務(測量や登記に関する業務)を担う一方、案件ごとの報酬額が比較的高めに設定されるケースも多いため、軌道に乗せれば高収入を狙うことが可能です。

もちろん、最初から高額報酬が得られるわけではありませんが、開業時に顧客をしっかり獲得し、安定したリピーターや紹介先を持てば、収入面で大きなやりがいを得られるでしょう。
「しっかり稼げる」という点は、仕事の楽しさとも密接に結びついています。

現場仕事とデスクワークをバランスよくできること

前述のとおり、土地家屋調査士には「外での測量作業」と「事務所内での書類作成・登記申請」が両立するため、仕事が単調になりにくいという特徴があります。
ずっとパソコンと向き合っているわけでもなく、かといって外回りだけというわけでもありません。

外の空気を吸いながら肉体を動かして測量し、室内ではデータを整理して書類を作成するといった流れは、「体を動かすのが好きだけど、オフィスワークもしたい」という方にはピッタリ。
仕事内容が変化に富んでいるため、飽きがきにくく、仕事へのモチベーションを保ちやすいのです。

絶対的な答えがない仕事ができる面白さがあること

土地境界の確定や登記の問題は、法律や行政上のルールに基づいて進められる一方、実際の現場ではさまざまなグレーゾーンや想定外の事象が起こりえます。
例えば、昔の測量データと現状が合わない、境界標が動いているかもしれない、近隣住民との交渉が難航するといったケースです。

こうした状況下で、法律・測量・交渉といった複合的なスキルを駆使して問題解決の糸口を探ることは、簡単ではありませんが、同時に大きなやりがいと面白さがあります。
常に新しい知識や経験を積み重ねる必要があるからこそ、「毎日が同じことの繰り返しにならない」という楽しさを感じる土地家屋調査士は多いのです。

土地家屋調査士として働く苦労

土地家屋調査士の仕事には、多くの楽しさややりがいがある一方、当然ながら苦労も存在します。
しかし、これらの苦労をどう捉えて工夫し乗り越えるかによって、仕事の満足度は大きく変わるでしょう。
ここでは、代表的な苦労の事例をご紹介します。

現場仕事がある

測量や境界標の設置といった実務は、天候や季節、地形の影響を受けやすい仕事です。
夏の炎天下の中での測量は体力的に厳しく、雨天や冬の寒さも作業の支障となる場合があります。
また、山間部や崖地など危険なロケーションでの測量が必要になることもあるでしょう。

こうした肉体的・環境的な負担は、土地家屋調査士ならではの苦労です。
しかし、現場仕事があるからこそオフィスワークだけでは得られない達成感やリアルな経験を積むことができる、と考える人も少なくありません。

立ち合いが進まないケースがある

土地の境界問題は、近隣住民との協議が欠かせない局面も多いです。
特に、境界を画定するためには関係者全員の立ち合いを得て、同意を取り付けることが理想とされます。
ところが、スケジュール調整が難しかったり、相手が非協力的だったりするなど、立ち合いがなかなか進まないケースもゼロではありません。

こうした場合は、時間的・精神的なストレスがかかりますが、粘り強く調整や交渉を行うコミュニケーション力が試される場面でもあります。
苦労の中にも、トラブル解決を成し遂げたときの達成感は格別でしょう。

土日休みがない

特に独立開業している土地家屋調査士の場合、クライアントの都合に合わせて仕事を進める必要があるため、土日休みが取りにくいことがあります。
現場調査は平日に限らず、週末しか都合がつかない依頼主が多いエリアでは、必然的に週末に働く形になりがちです。

一方で、うまくスケジュールを組み立てれば平日に休みを取るなど、自由度が高い働き方ができるのも土地家屋調査士の強みです。
忙しい時期とそうでない時期のメリハリをつけ、自分なりの休暇スタイルを確立することで、ストレスを軽減できるでしょう。

土地家屋調査士に将来性がある理由

土地家屋調査士は、今後ますます需要が高まると予測されています。
ここでは、具体的な4つの理由と1つの背景を挙げながら、その将来性の根拠を解説していきます。

理由① 独占業務がある

土地家屋調査士は、不動産登記に関する測量や表示に関する登記を扱う「独占業務」を有しています。
つまり、これらの業務は無資格者が行うことが禁止されているため、必ず土地家屋調査士に依頼しなければならない場面があるのです。

独占業務は、その資格の社会的需要を下支えします。
たとえ他分野の景気が変動しても、土地や建物の登記にまつわるニーズが消えることはなく、一定の需要が見込まれるのが強みです。

理由② 土地相続関連の業務が増加している

高齢化の進展に伴い、親世代が所有する土地を相続するケースが今後ますます増えていきます。
相続時には、分筆や合筆、名義変更などの手続きが必要になることがあり、土地家屋調査士の出番が増える可能性が高いのです。

特に、相続登記は法改正により義務化の動きも進んでおり、今後は「放置されていた土地」を適正に登記する動きが加速すると考えられます。
こうした変化は、土地家屋調査士にとって大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。

理由③ 土地の境界をめぐるトラブルが増加している

都市部の再開発や地価の上昇、相続財産の分割などさまざまな背景から、土地の境界をめぐるトラブルはむしろ増加傾向にあります。
例えば、隣地との境界が不明確なまま売買が進んでしまったり、相続人同士で意見が合わなかったりといった事例が少なくありません。

こうしたトラブルを解決するためには、正確な測量と客観的な資料が必須です。
土地家屋調査士が公正な第三者として測量し、境界確定を行うことで円満解決を目指せるケースが多いため、紛争解決の需要は今後も途絶えないでしょう。

理由④ 土地の測量技術が進化している

近年は、GPS測量やドローン、3Dレーザースキャナーなど、測量技術が大幅に進化しています。
これらを使いこなせる土地家屋調査士は、効率的かつ正確な測量を行い、より複雑な案件にも対応できるため、市場において高い評価を得られるでしょう。

技術が進化しても、最終的に測量結果を法的に整理し、登記につなげるのは土地家屋調査士の役割です。
新技術を取り入れながら、自分のスキルをアップデートすることで、業務領域をさらに拡大できる可能性があるのです。

理由⑤ 仕事の取り合いが発生しにくい

既に述べたように、土地家屋調査士はライバルの数がさほど多くないうえ、案件自体が全国で常時発生しているため、仕事が集中しすぎて取り合いになるケースは比較的少ないと言われています。

今後も高齢化や都市再開発、相続登記の義務化などを背景に業務量は増加すると見込まれており、需要に対して供給が追いつかない地域も存在するでしょう。
一方で、自由競争の市場であることには変わりありませんが、柔軟な営業活動やネットワークづくりが得意な方は、独立後も比較的安定して案件を獲得できる可能性が高いと言えます。

土地家屋調査士を目指すなら「補助士」からがおすすめ

土地家屋調査士として将来性を感じつつも、「いきなり試験を受けるのはハードルが高い」と感じる方も少なくありません。
そんな方におすすめしたいのが、「補助士」として実務を経験しながら学ぶルートです。

補助士とは、既に開業している土地家屋調査士の事務所などに勤務し、業務をサポートするポジションのことです。
測量の補助や書類作成、法務局への提出など、実務を間近で学びながら働けるため、試験に必要な知識も効率よく身につけることが可能です。
また、現場の臨場感を知ることで「自分に合った仕事かどうか」を見極めることにもつながるでしょう。

特に、未経験から資格を目指す場合、実務と勉強を両立させるのは大変かもしれません。
しかし、補助士として働きながらだと、独学だけでは得られないリアルなノウハウや専門用語になじみやすくなり、合格後の即戦力として活躍しやすいメリットがあります。

土地家屋調査士の働き方

土地家屋調査士の働き方は、基本的に「独立開業」を選ぶ方が多いですが、他にも選択肢はあります。
ただし、他の士業と異なり一般企業での需要はそれほど高くないのが現状です。
ここでは、代表的な働き方を整理しておきましょう。

独立開業を目指す人が多い

土地家屋調査士試験に合格した後、実際に登録を行えば「自分の事務所を構える」ことが可能です。
他の士業と比べて、地元でのライバル数が少ないケースもあり、営業努力次第では早期に顧客を獲得できる可能性があります。
独立開業のメリットとしては、

  • 自分のペースで働ける
  • 収入を大きく伸ばすチャンスがある
  • 仕事の範囲やスタイルを自由に決められる

などが挙げられます。
一方で、安定した顧客基盤を築くまでは、時間と労力を要する点に注意が必要です。

一般企業では土地家屋調査士として働けない

行政書士や宅建士などは、不動産や建設会社に所属して活躍するケースもありますが、土地家屋調査士の場合は一般企業の正社員としてその資格を直接活かす場面は少ないのが現状です。
なぜなら、土地家屋調査士の業務はあくまで「法務局への登記」「境界の測量」に関する独占業務であり、多くの一般企業にとって“自社で雇用してまで必要とする機会”が少ないからです。

一部の大手測量会社や建設コンサルタント会社で、土地家屋調査士を有資格者として扱う場合もゼロではありません。
しかし、士業としての専門性をフルに発揮するなら、補助士を経験したのちに独立開業というルートが主流と言えます。

この先も求められる専門家として活躍しよう

土地家屋調査士の仕事には、多様な楽しみとやりがいが詰まっています。
人に喜ばれ、社会に貢献できる専門性を発揮できる点や、外での測量とデスクワークを行き来する変化に富んだ業務内容、そして自分の仕事が地図に残るという達成感は、仕事を「楽しい」と感じる大きな要因です。
一方で、現場作業や立ち合い調整、週末休暇が取りにくいなどの苦労もありますが、これらは工夫やチームワークによってカバーすることが可能です。

また、土地家屋調査士は法改正や高齢化に伴う相続関連の増加、土地境界トラブルの増加など、今後も必要とされ続ける独占業務を担っています。

資格取得を検討している方は、まず補助士として実務経験を積む方法も有効で、独立開業を視野に入れれば収入面でも大きな可能性が開けるでしょう。

専門技術の進化や社会ニーズの拡大に伴って、一生涯にわたり活躍できる職業としての魅力はますます高まっています。

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