
不動産の表示に関する登記の専門家である、土地家屋調査士。その社会的意義の高さと、独立開業による高収入の可能性から、多くの社会人がキャリアアップを目指して挑戦する、非常に人気の高い国家資格です。
しかし、その魅力の裏側で、土地家屋調査士試験が、法律系の国家資格の中でも屈指の難関試験であることも、また事実です。毎年、多くの受験者が涙を飲み、その合格率の低さに、挑戦すること自体をためらってしまう方も少なくありません。
この記事では、そんな土地家屋調査士という高い壁に、これから挑もうとしている皆様のために、その「難易度」の真実を、客観的なデータと、具体的な試験内容の分析を通じて、徹底的に解き明かしていきます
Contents
土地家屋調査士の受験者数と合格率
まず、土地家屋調査士試験が、どれほどの難関であるのかを、客観的なデータで見てみましょう。 法務省が発表している、近年の土地家屋調査士試験の結果は、以下のようになっています。
| 年度 | 受験者数 | 最終合格者数 | 最終合格率 |
| 令和5年度 | 4,429人 | 428人 | 9.66% |
| 令和4年度 | 4,404人 | 424人 | 9.62% |
| 令和3年度 | 3,859人 | 404人 | 10.47% |
| 令和2年度 | 3,785人 | 392人 | 10.36% |
| 令和元年度 | 4,198人 | 406人 | 9.68% |
この表から明らかなように、土地家屋調査士試験の最終合格率は、例年8%~10%弱で推移しています。これは、受験者10人のうち、合格できるのは1人いるかいないか、という非常に厳しい数字です。
受験者数も、毎年4,000人以上と安定しており、多くの人が挑戦し、そしてそのほとんどが涙をのむ、まさに「難関国家資格」の名にふさわしい試験であることが、お分かりいただけるかと思います。
土地家屋調査士試験の難易度が高い理由
では、なぜ、土地家屋調査士試験の合格率は、これほどまでに低いのでしょうか。その背景には、この試験が持つ、特有の難しさがあります。
理由①試験の対策が難しいため
土地家屋調査士試験は、単なる暗記だけでは、決して太刀打ちできない試験です。 午後の部の筆記試験では、民法や不動産登記法といった、膨大な法律の知識が問われますが、それは条文を丸暗記するだけでなく、具体的な事例に対して、その条文をどう適用するか、という深い理解と応用力が求められます。
さらに、午前の部では、三角関数などを用いる複雑な測量計算と、高い精度が要求される作図の能力が必要となります。このように、法律知識(文系)と、数学・測量技術(理系)という、全く異なる分野の能力が、高いレベルで同時に要求されること。これが、試験対策を非常に難しくしている最大の要因です。
理由②計算や作図を必要とするため
この試験の最大の特徴が、午前の部の筆記試験で課される、関数電卓を用いた複雑な「計算問題」と、三角定規やコンパスを使って、ミリ単位の精度で図面を仕上げる「作図問題」です。 特に作図は、独学での対策が非常に難しく、図面を正確に、そして迅速に描き上げるための、専門的な訓練が必要となります。机上の学習だけでなく、実際に手を動かす、実践的なスキルが求められる点が、他の法律系資格試験にはない、特有の難しさといえるでしょう。
理由③合格の基準点が高めに設定されているため
土地家屋調査士試験は、相対評価ではなく、明確な合格基準点が設けられている「絶対評価」の試験です。 筆記試験は、「午前の部」「午後の部」に分かれており、それぞれに「基準点(足切り点)」が設定されています。
そして、この両方の基準点をクリアした上で、さらに総合的な「合格点」を上回らなければ、合格とはなりません。 つまり、どちらか一方の科目が得意でも、もう一方が基準点に達していなければ、その時点で不合格となってしまうのです。全ての科目で、穴のない、高いレベルの得点力が求められる、非常に厳しい試験設計になっています。
理由④試験時間が短いため
土地家屋調査士試験は、その膨大な問題量に対して、試験時間が非常に短いことでも知られています。 午前の部、午後の部ともに、試験時間は2時間30分ですが、この時間内に、複雑な計算、正確な作図、そして難解な法律問題を、全て解ききらなければなりません。多くの受験者が、時間内に全ての問題を解き終えることができず、実力がありながらも、時間切れで涙をのんでいます。
そのため、日頃の学習から、一問あたりにかける時間を常に意識し、問題を解く「スピード」と「正確性」を、極限まで高める訓練が不可欠となります。
ほかの資格試験との比較
土地家屋調査士試験の難易度を、より客観的に把握するために、他の有名な国家資格と比較してみましょう。
合格率の比較
まず、合格率で比較してみます。
- 土地家屋調査士: 約8%~10%
- 司法書士: 約4%~5%
- 行政書士: 約10%~13%
- 社会保険労務士: 約6%~7%
- 宅地建物取引士: 約15%~17%
このように見ると、土地家屋調査士の合格率は、最難関といわれる司法書士よりは高いものの、行政書士や社会保険労務士と同等レベルの、非常に低い水準であることが分かります。人気の宅地建物取引士と比較すると、その難易度の高さは、より一層際立ちます。
勉強時間の比較
次に、合格までに必要とされる、一般的な勉強時間で比較してみましょう。
- 土地家屋調査士: 約1,000時間~1,500時間
- 司法書士: 約3,000時間以上
- 行政書士: 約600時間~1,000時間
- 社会保険労務士: 約800時間~1,000時間
- 宅地建物取引士: 約300時間~400時間
勉強時間においても、司法書士には及びませんが、行政書士や社会保険労務士を上回る、長時間の集中的な学習が必要とされることが分かります。働きながら合格を目指す場合、1年半から2年程度の学習期間を要するのが一般的です。
土地家屋調査士試験の内容
では、具体的に試験ではどのような内容が問われるのでしょうか。その全体像を把握しておきましょう。
土地家屋調査士の試験科目
試験科目は、筆記試験と口述試験に分かれており、筆記試験はさらに午前の部と午後の部に分かれています。
【筆記試験(午前の部)】
- 平面測量(測量計算、測量法令)
- 作図(土地・建物の図面作成)
【筆記試験(午後の部)】
- 民法に関する知識
- 不動産登記法、土地家屋調査士法など、登記に関する法令
- 書式(土地・建物の登記申請書の作成)
【口述試験】
筆記試験合格者のみが受験。不動産登記法や土地家屋調査士法に関する、面接形式の試験です。
試験の出題形式
次に、試験の出題形式について紹介します。
大きく、「筆記試験」と「口述試験」に分かれます。
筆記試験
筆記試験は、マークシートで解答する「多肢択一式」の問題と、実際に計算や作図、申請書の作成を行う「記述式」の問題で構成されています。 午前の部は、多肢択一式10問と、記述式1問(作図)。
午後の部は、多肢択一式20問と、記述式2問(土地・建物の書式)が出題されます。
口述試験
口述試験は、試験官2名と受験者1名で行われる、約15分程度の面接形式の試験です。筆記試験で問われた、不動産登記法や土地家屋調査士法に関する知識について、口頭で質問されます。
筆記試験の基準点と合格点
筆記試験では、午前の部、午後の部それぞれに「基準点」が設定されます。この基準点をどちらか一方でも下回ると、その時点で不合格となります。 そして、両方の基準点をクリアした上で、総合得点が、その年の「合格点」を上回っている必要があります。
多肢択一式
午後の部の多肢択一式問題(20問、50点満点)には、基準点が設けられています。例年、50点満点中、30点~37.5点あたりが基準点となることが多いです。まずは、この択一式で、確実に7割以上の得点を確保することが、合格への絶対条件となります。
記述式
午後の部の記述式問題(2問、50点満点)にも、基準点が設けられています。例年、50点満点中、30点~35点あたりが基準点となります。択一式で高得点を取っても、記述式で基準点を下回れば不合格となるため、両方をバランス良く対策する必要があります。
口述試験の合格率
筆記試験という高い壁を乗り越えた先に、最後の関門である口述試験が待っています。しかし、その合格率は、例年ほぼ100%です。
不合格になるのは、試験会場に行かなかったり、面接中に全く答えられなかったり、といった、よほど特殊なケースに限られます。筆記試験に合格するほどの知識があれば、まず落ちることはない、人物評価や最終確認のための、形式的な試験と考えて良いでしょう。
したがって、実質的には、筆記試験の合格が、資格取得の全てを決めるといえます。
土地家屋調査士試験の対策におけるポイント
この難関試験を突破するためには、やみくもに勉強するのではなく、戦略的な対策が不可欠です。合格を掴むための、5つの重要なポイントをご紹介します。
ポイント①一部試験の免除を受ける
合格への最も有効な戦略が、この「試験免除制度」の活用です。 測量士、測量士補、または一級・二級建築士の資格をすでに持っている方は、申請によって、筆記試験の「午前の部」が全科目免除されます。 これにより、対策が困難な測量計算や作図問題を回避し、法律科目が中心となる「午後の部」の学習に、全ての時間を集中させることができます。
多くの合格者が、この免除制度を利用しています。まだ資格を持っていない方は、まずは比較的取得しやすい「測量士補」の資格を先に取得してから、調査士試験に臨むのが、王道のルートといえるでしょう。
ポイント②多肢択一式の問題に注力する
午後の筆記試験は、択一式と記述式で構成されていますが、まずは択一式で、満点に近い高得点を取ることを目標に学習を進めるべきです。 なぜなら、択一式で安定して高得点を取れるだけの、正確で深い法律知識がなければ、その知識を応用して解答する記述式の問題で、高得点を望むことはできないからです。択一式の学習は、記述式対策の土台となります。過去問を繰り返し解き、全ての選択肢について、なぜそれが正しく、なぜ他が誤りなのかを、条文レベルで説明できるようになるまで、徹底的に理解を深めましょう。
ポイント③記述式では論点の理解を重視する
記述式の問題、特に申請書を作成する書式問題は、一見すると複雑で難解に思えます。しかし、問われている論点や、解答のパターンはある程度決まっています。 重要なのは、問題文の中から、登記の目的や、申請人を特定するための「論点」を、正確に読み解く力です。過去問の演習を通じて、どのような事実関係から、どのような登記申請が必要になるのか、その思考プロセスを体に染み込ませましょう。論点さえ正しく把握できれば、あとは基本的な書式の型に当てはめていくだけです。
ポイント④電卓や定規を使用するのに慣れておく
午前の部を受験する場合、関数電卓や、三角定規、コンパス、分度器といった、普段あまり使わない道具を、使いこなす必要があります。特に、関数電卓の操作は、慣れていないと時間を大幅にロスしてしまいます。日頃から、自分の手に馴染んだ道具を決め、素早く、そして正確に操作できるよう、繰り返し練習することが重要です。
ポイント⑤問題を解くスピードを意識する
前述の通り、この試験は時間との戦いです。日々の学習から、常にストップウォッチを使い、一問あたりにかける時間を計測する習慣をつけましょう。 「択一式は1問〇分で解く」「記述式の土地の問題は〇分、建物は〇分」というように、自分なりの時間配分をあらかじめ決めておき、本番で焦らないためのシミュレーションを繰り返すことが、合格への最後の鍵を握ります。
土地家屋調査士の合格は高い壁なので入念な準備を
今回は、難関国家資格である土地家屋調査士試験について、その合格率の低さの理由から、具体的な試験内容、そして合格を勝ち取るための対策のポイントまで、詳しく解説しました。
土地家屋調査士への道は、決して平坦なものではありません。長期間にわたる、地道で、孤独な努力の積み重ねが求められます。しかし、その高い壁を乗り越えた先には、不動産の専門家として、人々の大切な財産を守るという、大きなやりがいと、そして独立開業という、無限の可能性に満ちた未来が待っています。
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