土地家屋調査士として活動したいとお考えの方のなかには「独学でも、資格を取得できるのだろうか?」と、疑問に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、土地家屋調査士試験は独学でも合格できるかの疑問にお答えするとともに、おすすめの勉強方法やテキストなどを紹介します。
土地家屋調査士になるために、効率よく勉強したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
土地家屋調査士の資格を取得するには?
土地家屋調査士の資格を取得するには、法務省が毎年実施している「土地家屋調査士試験」に合格しなければなりません。
試験は二部構成で、10月に筆記試験、翌年1月に口述試験が行われます。
なお、口述試験は“本人確認”のような意味合いが強く、落とされることはほとんどないため、合格するには筆記試験に重きをおいた受験対策が必要です。
こちらの記事では土地家屋調査士試験の口述試験について詳しく解説しています。気になる方はぜひご覧ください。
土地家屋調査士試験の口述試験とは?勉強方法や問題内容を詳しく解説
土地家屋調査士試験は独学でも合格できるのか?
土地家屋調査士試験は、独学でも合格できます。
ただし、試験の専門性や難易度が高く、例年の合格率が10%以下の難関資格であるため、独学で合格できる方はごくわずかです。
独学での合格が難しい理由の1つとして、市販されているテキストの選択肢が少ないことが挙げられます。
土地家屋調査士は知名度が低い資格であり、テキストの数も少ないため、参考にできる情報も限られているのが現状です。
また、テキストだけでは習得が難しい分野があることも、独学での資格取得が容易ではない理由の1つです。
たとえば、土地家屋調査士試験では、複雑な計算をともなう作図問題が出されますが、線の引き方や定規の使い方などは、動画などを確認しなければイメージがつきません。
このような理由から、土地家屋調査士試験の対策は独学ではなく、通信講座を受講する方や、予備校に通う方が多いのです。
土地家屋調査士試験の内容
土地家屋調査士試験は100点満点の試験で、総出題数は22問です。
採点方式は、毎年の受験者数に応じて合格点数が変化する「相対評価方式」で、合格ラインは70~80点です。
解答形式は択一と記述のどちらかで、試験問題は「不動産登記法」「土地家屋調査士法」「民法」「土地関連」「建物関連」の5つの分野から出題されます。
分野ごとの出題数と解答形式、配点は以下のとおりです。
【土地家屋調査士試験における分野ごとの出題数・解答形式・配点】
出題の分野 |
出題数 |
解答形式 |
配点 |
不動産登記法 |
16問 |
択一 |
40点 |
土地家屋調査士法 |
3問 |
択一 |
7.5点 |
民法 |
1問 |
択一 |
2.5点 |
土地関連 |
1問 |
記述 |
25点 |
建物関連 |
1問 |
記述 |
25点 |
筆記試験を有利に進める方法
筆記試験で出される問題は、平面測量の知識と作図の技術が問われる「午前の部」と、不動産登記法や土地家屋調査士法などの知識が問われる「午後の部」に分かれます。
試験時間は、午前の部が約2時間、午後の部は約2時間半と長丁場ですが、以下の条件を満たしていれば、午前の部の試験が免除されます。
【土地家屋調査士試験の筆記試験において午前の部の受験が免除される条件】
-
- 測量士・測量士補・一級建築士・二級建築士のいずれかの資格を取得している
-
- その他、筆記試験の合格者と同等以上の知識や技術があると法務大臣から認定されている
免除資格の1つである「測量士補」は、午前の部の筆記試験よりも難易度が低く、土地家屋調査士よりも合格しやすい資格です。
土地家屋調査士試験を有利に進めたいのであれば、測量士補をはじめとした資格を取得してから、試験に臨むことも視野に入れてみてください。
土地家屋調査士の試験勉強を独学するメリット
土地家屋調査士試験に独学で合格することは難しいので「独学してもメリットがないのでは?」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。
難易度こそ高いですが、土地家屋調査士の試験勉強を独学するメリットには、以下のようなものがあります。
メリット①自分のペースで勉強できる
独学であれば、勉強の計画を自分で立てられます。
決められた日時に授業を受けたり、スケジュールを調整したりする必要もないため、自由に使える時間が限られている方でも勉強を進められる点は大きな特長です。
メリット②費用を抑えられる
お財布に優しいという点も、独学ならではのメリットです。
通信講座や予備校では、
教材費や受講費として最低でも50万円ほどの費用がかかりますが、
独学ではテキストや問題集を購入するだけなので、費用を大幅に抑えられます。
土地家屋調査士試験の独学に向いている人の特徴
土地家屋調査士試験は難易度が高いため、受験者のほとんどは、通信講座や予備校で授業を受けます。
しかし、以下の特徴にあてはまる方は、独学でも合格できる可能性があります。
特徴①法律系や不動産業界の資格を所有している
土地家屋調査士試験では、不動産登記法や民法などの分野から問題が出されます。
これらは、
法律系や不動産業界に深く関連する分野なので、司法書士や宅地建物取引士などの資格を所有していれば、独学でも勉強をスムーズに進められます。
特徴②土地家屋調査士事務所での勤務経験がある
土地家屋調査士事務所で、土地家屋調査士のサポート、あるいは事務職として働いたことがある方であれば、試験対策が有利になります。
日常的に土地家屋調査士の業務に触れていれば、いくつか聞いたことのある専門用語もあるので、問題文をスムーズに読み進められます。
また、テキストや問題集に書かれている内容が理解できない場合でも、事務所で働いている土地家屋調査士とのつながりがあれば、質問や相談ができるという点も強みです。
特徴③暗記が得意である
土地家屋調査士試験で出される問題は範囲が広く、覚える内容も多いため、高い暗記力が求められます。
特に、法律系の分野は覚えることが膨大で、条文だけではなく法律が適用される具体例まで暗記しなければなりません。
したがって、記憶力がよい方は、独学でも試験に合格できる可能性があります。
特徴④計算が得意である
土地家屋調査士試験では、放射計算や面積計算、交点計算などの計算問題も出されるため、計算が得意な方は試験を有利に進められます。
これらの問題は、問題文や図を正しく読み取る能力が求められることはもちろんですが、なによりも正確な計算力が必須です。
計算が苦手で、勉強を挫折してしまう方も少なくないため、計算力の高い方は独学に向いているといえます。
独学で土地家屋調査士試験に合格するために必要とされる勉強時間
土地家屋調査士試験に合格するために必要とされる勉強時間は非常に長く、その目安は、1,000~1,200時間程度です。
平日に2時間、休日に3時間勉強した場合は、1週間で16時間、1か月でおよそ63時間ですので、最低でも1年半はかかります。
ただし、この時間はあくまでも目安なので、なかには勉強に2,000時間以上かける方もいれば、5年以上勉強を続ける方もいるので、あくまでも参考としてお考えください。
なお、法律系や不動産業界の資格を所有している方や、暗記や計算が得意な方のなかには、500時間程度の勉強で合格する方もいます。
こちらの記事では、合格率が約10%である土地家屋調査士のおすすめの勉強方法と、受験合格に必要な勉強時間を解説していますので合わせてご覧ください。
独学で土地家屋調査士試験の勉強を進める場合のスケジュール
独学で土地家屋調査士試験の勉強を進める場合は、以下で紹介するスケジュールで進めましょう。
本項では、法律系や不動産業界の資格を取得しておらず、土地家屋調査士事務所での勤務経験がないことを前提としたスケジュールを、初期、前期、中期、後期に分けて紹介します。
初期
土地家屋調査士の試験対策を独学する場合、まずは1~3か月程度を目安に、テキストや参考書を読み込んで、不動産取引や法律関連の基礎知識を学びます。
ただし、すべての分野を完璧に覚えようとすると、時間がかかるだけではなく、次第にモチベーションも落ちてしまいます。
したがって、初期の段階では、土地家屋調査士試験の概要や、出題の傾向などを把握することに専念しましょう。
また、基礎知識を学ぶ際は、各分野の全体像から把握し、概要を理解できたら部分像を勉強します。
それが終わったら、再度全体像を読みなおす……というサイクルを繰り返していくことで、知識を効率的にインプットできます。
前期
全体像や出題傾向を理解できたら、3か月で3~5周程度を目安に、テキストや問題集、過去問などを繰り返し解きます。
問題文が理解できなかったり、答えを間違ったりしても、ひたすら数をこなしてください。
失敗を繰り返しながら「なぜ答えが違うのか」「どのように答えればよかったのか」を意識しながら解くと、次第に知識が定着します。
なお、土地家屋調査士試験の問題には択一式と記述式がありますが、記述問題のほうが難易度は高いので、まずは択一式の問題から解くことをおすすめします。
中期
問題を解いて基礎知識を身につけたら、4~6か月程度で3周を目安に、計算や申請書例、図面の書き方などを覚えます。
あわせて、テキストや参考書を繰り返し読み、問題文の意味や出題傾向なども確認しましょう。
なお、記述式の問題は基本的に長文なので、問題文を素早く読み解く読解力も身につけなければなりません。
時間を測ったり、制限時間を設けたりして、文章の意図をスムーズに理解する練習もしてみてください。
後期
土地家屋調査士試験における知識や出題傾向などを習得したら、本試験予想問題である「答案練習(答練)」や、模擬試験を受けます。
自身が苦手とする分野を把握し、対策に役立てるためにも、可能であれば複数回受けたいところです。
もし、理解できない部分がある場合や、点数が目標よりも低い場合などは、再度参考書やテキストを読み解いて、苦手分野を克服していきましょう。
土地家屋調査士試験の対策におすすめのテキスト
数は限られているとはいえ、土地家屋調査士試験の対策として販売されているテキストの種類はさまざまです。
せっかくであれば、解説がわかりやすいものや、内容が充実しているものを選びたいですよね。
テキスト選びにお悩みの方は、以下で挙げる書籍を選んでみてください。
【土地家屋調査士試験の対策におすすめのテキスト】
書籍名 |
出版社 |
土地家屋調査士六法 |
東京法経学院 |
土地家屋調査士 記述式合格演習テキストⅠ・Ⅱ |
東京法経学院 |
土地家屋調査士受験100講 理論編 |
早稲田法科専門学院 |
土地家屋調査士受験100講 書式編 |
早稲田法科専門学院 |
土地家屋調査士試験 最速!書式作図テクニック |
さいたま登記測量 |
土地家屋調査士分野別択一過去問題集 |
LEC東京リーガルマインド |
土地家屋調査士測量計算と面積計算 |
土地家屋調査士受験研究会 |
また、以下で紹介するものは、土地家屋調査士に特化したテキストではないものの、不動産取引や民法をはじめとした法律系の知識を習得できます。
【法律系】土地家屋調査士試験の対策におすすめのテキスト
書籍名 |
出版社 |
パーフェクト宅建士基本書 |
住宅新報出版 |
らくらく宅建塾 |
宅建学院 |
パーフェクト宅建士基本書 |
住宅新報出版 |
面白いほど理解できる民法 |
民法研究会 |
コア・テキスト 民法[エッセンシャル版] |
新世社 |
上記で紹介したテキストを使って勉強すれば、土地家屋調査士試験で出題されるすべての分野を学べるでしょう。
なお、不動産登記法や土地家屋調査士法、民法の分野は、法令の改正にともない出題範囲が変わる可能性もあるので、必ず最新版の書籍を購入してください。
独学が続かない場合の対策方法
土地家屋調査士試験に限らず、独学は自身との闘いであり、勉強の途中で挫折することも少なくありません。
テキストの内容が理解できないことや、スムーズに勉強が進められないことなどがストレスにつながり、モチベーションを下げてしまうことも起こりえます。
独学が続かない場合は、以下で挙げる対策を講じましょう。
対策方法①達成できる目標を設定する
土地家屋調査士試験の独学では、適切な目標の設定が重要です。
ただし、「1日10時間勉強する」「3か月以内に試験に合格する」といった、難易度が高い目標を設定すると、達成できなかった際にモチベーションが維持できなくなります。
そのため、「1日に3時間勉強する」「週に6日は勉強する」など、現実的に達成可能だと思える目標を設定してみてください。
対策方法③立てた目標や進捗を周囲に共有する
適度な緊張は勉強の効率を高めるとされていますが、独学では監視の目がないことから、気が緩んでしまいがちです。
勉強に緊張感を持たせる方法はさまざまですが、簡単にできる方法として、勉強の目標や進捗を周囲の人に共有する「パブリックコミットメント」が挙げられます。
この方法は、心理効果にもとづくもので「周囲に公言した以上、気を抜けない」という緊張感を持てます。
対策方法③勉強した日数や時間を記録する
独学では、必ず「今日で勉強が何日目であるか」「今日はどのくらい勉強したか」などを記録して、常に見返せる状態にしましょう。
振り返ることで、勉強の進捗が確認できることはもちろんですが「立てた目標を達成できた」「サボらずに勉強できている」という成功体験が、モチベーションの向上にもつながります。
対策方法④通信講座を受講する・予備校に通う
土地家屋調査士試験で出題される問題のなかには、独学での習得が難しい分野もあるので、モチベーションが続かずに、途中で勉強をやめてしまう方も少なくありません。
そのため、勉強法に不安を感じる方や、要点を押さえて勉強したいとお考えの方は、独学を諦めて、通信講座を受講することや、予備校に通うことも検討してみてください。
通信講座や予備校の授業では、講師がわかりやすく解説してくれるので、知識が高まることはもちろんですが、モチベーションの維持にも効果が期待できます。
土地家屋調査士試験は独学でも合格できるが難易度は非常に高い
いかがでしたでしょうか。
土地家屋調査士試験は、合格率が10%以下の難関資格であり、独学で合格できる方はごく少数です。
独学での合格が難しい主な理由として、試験自体の難易度が高いことや、販売されているテキストの数が限られていること、必要とされる勉強時間が長いことなどが挙げられます。
また、試験で出される問題のなかには、独学だけでは習得が難しい分野もあるので、可能であれば通信講座を受講する、あるいは予備校に通うことが望ましいです。
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