
土地家屋調査士は、不動産に関連する法的手続きや測量業務を担う国家資格者で、不動産業界において重要な役割を果たしています。しかし、近年では「需要が減少している」「将来性が不透明」といった不安を抱く方も少なくありません。
そこで今回は土地家屋調査士は将来性が高いといわれるわけや、土地家屋調査士の具体的な仕事内容を詳しくご紹介します。
また、土地家屋調査士として働くメリットや適性、キャリアパス、年収の目安についても解説します。将来のキャリアを考える上で土地家屋調査士を視野に入れている方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
土地家屋調査士がオワコンといわれる理由
土地家屋調査士が一部の人から”オワコン”と揶揄されている理由を紹介します。
拘束時間が長い
土地家屋調査士の業務には、外部での測量作業や役所とのやりとり、書類作成など多岐にわたる作業が含まれます。
特に測量現場は天候の影響を受けやすく、予定した時間内に作業が終わらないことも少なくありません。
また、単に屋外作業だけではなく、役所への提出書類の準備や図面作成にも時間がかかります。
以下のような理由から拘束時間が長引くケースが多いといわれています。
- 測量現場の予期せぬトラブル:隣接地所有者の立ち合いが得られない、想定外の障害物があるなど、現場対応で時間を要する場合がある。
- 役所や法務局との調整作業:登記手続きに必要な書類や補正のやりとりなどで、書類の不備や追加確認が生じると、短期間で終わらないケースがある。
- 案件の多さや繁忙期:需要が集中する繁忙期(引っ越しシーズン前後、年度末など)は受注が増え、1件あたりの作業時間が十分に確保しにくくなる。
- 人手不足:資格者や補助者が少なく、一人あたりの負担が大きくなりがちで、長時間労働に陥る可能性が高い。
拘束時間の長さは体力的・精神的な負担を増やし、労働環境への不満や離職率の上昇につながる懸念があります。
労働環境がブラック
土地家屋調査士は「専門職であるにもかかわらず、ブラックな労働環境ではないか」との声があるのは、測量から書類作成・顧客対応までを限られた人員でこなすことが多いためです。
特に以下の点で「ブラック」という印象を受けることがあります。
- 残業が多い:測量や図面作成、登記申請業務は、期限が迫ると夜遅くまで作業が続くことがある。
- 休日出勤が発生しやすい:土地の所有者や利害関係者の都合に合わせて週末に立ち合いを求められたり、繁忙期には休日返上で作業する場合もある。
- 給与や待遇が見合わないケース:資格を持っていても新米時代は補助者扱いで給与が低く、下積み期間が長い事務所もある。
- 人材育成が不十分:小規模事務所では体系的な研修制度がなく、先輩の背中を見て覚える風潮により、教育負担が増す。
全ての事務所や業務がブラックと限らないものの、土地家屋調査士の現場には長時間労働や待遇面で改善の余地があると感じられる状況も残っています。
下積みが必要
土地家屋調査士試験に合格して資格を取得しても、すぐにすべての業務を一人でこなせるわけではありません。
現場測量のノウハウや登記申請の実務手順など、実務経験でしか身につかない知識が多く存在します。
そのため、多くの資格保有者は事務所や企業に就職して下積み期間を経て独立や主任業務を担うケースが一般的です。
下積み期間には以下のような苦労や課題が生じやすいです。
- 見習い的ポジションでの業務:独立心を持って資格取得したにもかかわらず、当初は補助者と大差ない役割を担うことがある。
- 給料が低い・待遇が不安定:事務所によっては補助的業務のために正規雇用以外の契約形態となる場合や、給与水準が低い場合がある。
- 覚えることが多い:測量技術や法務局への書類提出方法、顧客対応など、多岐にわたる実務を同時に学ばなければならない。
- 先輩調査士との人間関係:小規模事務所では、上司や先輩との距離が近くも遠くもなりうるため、人間関係がうまくいかないと退職リスクが高まる。
資格を取ってすぐに大きく稼げるわけではなく、一定の下積み期間を経てから安定した収入や実績を築ける点が「オワコン」と揶揄される一因ともいわれています。
土地家屋調査士のメリット
土地家屋調査士として働くメリットを紹介します。
独占業務がある
土地家屋調査士は、不動産登記法に基づき、登記申請の際に必要な測量や境界確定、各種図面作成を行う“独占業務”を持っています。
これは、他の資格者や一般の人が同様の業務を行うことが法的に制限されているため、一定のニーズが継続的に存在し続ける大きな利点といえます。
- 測量と登記の専門家:境界の確定や地積更正登記など、土地家屋調査士でなければ行えない業務があり、市場価値が高い。
- 違法行為のリスク回避:登記に関わる測量や図面作成を有資格者が行うことで、法律的なトラブルやクレームを防ぐ役割を担っている。
法律で保護された業務範囲を有しているため、需要が途絶えることは少なく、安定した業務を受注できる可能性が高いです。
AIに代替されにくい
近年、人工知能(AI)の進化によって多くの業務が自動化・効率化される流れがあります。
しかし、土地家屋調査士の業務は、現場測量や対人交渉、境界紛争対応など、人間の判断力やコミュニケーション力が不可欠な場面が多いです。
AIでは取り扱いが難しい主なポイントは以下の通りです。
- 境界確定に伴う交渉や合意:土地の隣接者との話し合いや調整は、機械的な判断だけでは円滑に進まない。
- 現場での柔軟な対応:測量現場では地形や障害物、天候など状況が常に変化し、AIやロボットの活用にも限界がある。
- 法的解釈と実務経験:法律や慣習のニュアンスを理解し、行政機関への申請手続きを正確に進めるには、経験と知識が求められる。
これらの要素が組み合わさることで、土地家屋調査士の職務はAIやロボットに容易に代替されることが少なく、将来的にも需要が見込まれるとされています。
ニーズの増加が見込まれる
少子高齢化や地価の変動、不動産市場の活性化などに伴い、土地や建物の境界確定や登記の重要性はますます高まるといわれています。
特に相続や空き家問題、新しい市街地開発などが増えることで、土地家屋調査士による測量と登記の需要は増大する可能性があります。
具体例は以下のようなものがあります。
- 相続時の土地分筆・境界確認:相続登記の義務化や相続人の複数化により、相続問題解決のための測量・登記手続きの依頼が増える。
- 空き家・空き地対策:地方自治体などが空き地や空き家を再利用する際、境界や地積更正が必要となり、調査士の業務が求められる。
- 大規模再開発やインフラ整備:都市再開発や公共事業での用地取得において、境界確定や分筆登記の需要が高まる。
こうした社会的ニーズが継続的に存在するため、土地家屋調査士は今後も活躍の場を広げていけると考えられます。
多くの人材が必要とされている
土地家屋調査士の業界では、ベテラン調査士の高齢化や後継者不足が課題となっています。
そのため、新規参入者や若い人材が不足しがちで、資格を取得した調査士には幅広い就職・開業の可能性が広がっているといえます。
具体的な背景としては以下のような要素が挙げられます。
- 資格保有者の高齢化:資格取得者の平均年齢が上昇しており、引退や廃業により後継者が不足。
- 地方地域ほど調査士が少ない:人口減少や地価安の地域では調査士が少なく、逆に需要は存在するため独立や就職でのチャンスが大きい。
- 多忙な事務所が多い:業務量に対して人手が足りていない事務所が多く、新人や補助者の受け入れニーズが高まっている。
狭き門であるため
土地家屋調査士試験は毎年の合格者数が限られており、合格率も10%前後といわれています。難関資格の一つとして認知されており、その稀少性が逆に資格の価値を高める要因となります。
少数の合格者しかいない分、需要と供給のバランスが保たれ、市場に参入後も安定した仕事を得やすい環境が形成されやすいです。
- 試験範囲が広い:測量、民法、不動産登記法など幅広い知識が必要であり、独学やスクールを利用しても一筋縄ではいかない試験といわれる。
- 独立後の希少性:難関を突破した調査士だからこそ「プロの仕事」として信頼され、他資格との競合も少ない。
土地家屋調査士が向いている方の特徴
一般的に土地家屋調査士が向いているとされている人の特徴を4つ紹介します。
コミュニケーション能力が高い
土地家屋調査士の仕事では、隣接地の所有者や行政機関、法務局など、さまざまな利害関係者とのやりとりが不可欠です。
測量や境界確認の際、相手を納得させる説明力や調整力が求められ、トラブルを円滑に解決するためのコミュニケーションスキルが大きな武器となります。
体力がある
測量作業では、高低差の激しい地形や広い敷地を移動したり、機材を運搬したりする場合があり、体力が必要です。
また、天候の変化や夏の猛暑・冬の寒冷地での作業に耐えうる健康管理能力も欠かせません。
基本的なパソコン操作ができる
幹部登記書類の電子申請やCADソフトを使った図面作成など、パソコンを使う業務が日常的に発生します。
最低限のITスキルがあることで、業務効率が上がり、最新のテクノロジーを導入しやすいという利点が生まれます。
数字の扱いに長けている
測量や座標計算、面積算出など、正確な数字を扱う作業が不可欠です。計算力や論理的思考力があり、細かい数値のチェックを厭わない人ほど、土地家屋調査士の仕事をスムーズにこなせる傾向があります。
土地家屋調査士の進路とキャリア展望
土地家屋調査士の年収の目安
土地家屋調査士が得られる年収の目安を紹介します。
正社員雇用の場合
不動産系企業や測量会社などに正社員として勤務する場合、初任給は月給20万〜30万円程度が一般的といわれています。
経験を積むにつれて昇給し、管理職ポジションになると年収500万〜700万円程度に達することもあります。
事務所によっては歩合制やインセンティブを設けている場合があり、成果次第で収入が増える可能性があります。
補助者の場合
土地家屋調査士の下で働く補助者は資格がない状態での勤務となり、未経験からスタートすると年収300万〜400万円程度が目安とされます。
資格取得後も、しばらくは補助業務を兼任することが多く、経験を積むことで給与アップが見込まれます。
なかには資格取得後に正社員登用されるケースも多いため、キャリアアップにつながる可能性があります。
独立した場合
独立開業した土地家屋調査士の場合、年収は大きく個人差があります。地域や取引先の数、営業力などにより、年収500万円〜1000万円超まで幅広いといわれています。
安定した顧客を確保できれば高収入が期待できますが、集客や経営面のリスクを一手に背負うため、開業時の資金繰りやネットワーク構築が重要です。
廃業しないために土地家屋調査士が気をつけておくべきこと
土地家屋調査士として仕事を始めたものの、廃業しては本末転倒です。
ここでは、廃業しないためのポイントを紹介します。
新技術の導入
測量技術は日進月歩で進化しており、ドローン測量や3Dスキャナー、GPS測量などが業務効率と精度向上をもたらしています。
最新の測量機器やソフトウェアを積極的に導入し、業務のスピード・精度・コスト競争力を高めることで、顧客からの信頼を維持・拡大できます。
ダブルライセンスの導入
土地家屋調査士の業務範囲は登記や測量だけでなく、不動産業務全般や法律知識が絡む場合があります。
行政書士や司法書士、不動産鑑定士などの資格を併せ持つ「ダブルライセンス」を取得することで、業務範囲を拡大し、依頼者にワンストップサービスを提供できる利点があります。
これにより差別化を図りやすく、リピート顧客を獲得しやすくなるでしょう。
公嘱協会への加入
土地家屋調査士には「日本土地家屋調査士会連合会」や各地域の公嘱協会があり、そこに加入すると、公嘱業務(公共事業の測量や境界確定など)を受託しやすくなります。
公共性の高い仕事は比較的安定報酬が見込めるため、経営の安定化に寄与する可能性が高まります。
土地家屋調査士になるまでのステップ
土地家屋調査士になるまでのステップは次のとおりです。
- 土地家屋調査士の資格試験に合格する
- 土地家屋調査士として登録する
- 事務所や測量会社に就職する
- 現場での実務経験を積む
- 経験を積んだ後、独立して開業
地家屋調査士になるためには、まず国家試験に合格し、その後登録手続きをおこなう必要があります。キャリアの選択肢としては、事務所や測量会社に就職するか、独立して開業する方法があります。事務所には個人経営のものと法人が運営するものがあり、個人事務所では多岐にわたる業務に携われる反面、仕事量が増えがちです。
一方で、法人事務所ではチームで効率的に働くことができ、専門知識を深める機会が豊富にあります。
また、測量会社に併設された事務所では、大規模なプロジェクトに携わることができ、法人事務所同様に良い待遇を受けることが多いです。
一般的なキャリアの進め方としては、試験に合格後、まずは就職して実務経験を積み、その後、最終的に独立開業を目指すのが主流となっています。
土地家屋調査士の資格取得に向けて一歩を踏み出そう
土地家屋調査士は、専門性の高い独占業務を持つため、安定した収入と社会貢献が期待できる魅力的な職業です。収入は働き方や経験によって変わりますが、独立して事務所を開業すれば、現在の収入以上を目指すことが可能です。
また、行政書士や司法書士などの資格を取得すれば業務の幅が広がり、さらなる収入アップも期待できます。
これから土地家屋調査士を目指す方は、自分がどのように働きたいか、そのビジョンを明確にすることが重要です。自分に合った働き方を考え、資格取得に向けて一歩を踏み出しましょう。
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